デザインの花を咲かせる – ジャンルを超えてアーティストをインスパイアする、フラワーアートのルネッサンス #AdobeStock

春は、アーティストの創作意欲をかきたてる季節です。みずみずしさ、野生味、ミニマリズム、構造の妙。Adobe Stockでは、花が持つ様々な側面の「美」をとらえた画像を公開しています。これらの作品の中には、フラワーデザインのルネッサンスとでも言うべき大きなトレンドの影響を見て取ることができます。

近年では、壮麗なフラワーディスプレイが大規模なイベント(今年のゴールデングローブ賞授賞式の1万本の金色の花は記憶に新しいでしょう)やソーシャルメディア、デザインの世界で注目を集めています。Adobe Stockではこの春、より自然で明るい色合いが好まれる季節的な需要に応え、花を題材とした、見る者の関心を惹く写真やイラストを追加する予定です。

アーティストたちは、花をはじめとする自然の要素をどのようにデザインに落とし込んでいるのでしょうか。鮮明な春の色美しく咲く花を集めたAdobe Stockのギャラリーをぜひのぞいてみてください。この記事では、Adobe Stockアーティストや一流フラワーデザイナーによる創造的な花の活かし方を紹介します。

Rein Janssen / Adobe Stock

植物のディテールを楽しむ

イタリア人フォトグラファーでAdobe StockコントリビューターでもあるAlice Angelini氏に、作中での花や植物の扱い方について伺いました。Aliceのスタイルは、見過ごされがちな日常の美しさに焦点を当てるミニマリズムです。旅行に出ると、彼女がまず注目するのは、建築物と花の組み合わせです。

「初めての町に行くと、必ず植物園を訪れて、植物と温室の建物が織りなす美しい構図を観賞します」とAliceは語ります。「植物や花は、景観の一部ではありますが、その形状や明るい色彩を通して私に語りかけてきてくれるのです」

Alice Angelini / Adobe Stock

花たちの持つ色調も同氏の作品に大きなインスピレーションを与えています。「様々な色の組み合わせを試して、変化を観察するのが好きです。例えば、赤い花に、緑や青など寒色系の背景を組み合わせると、色の対比がわかりやすく際立ちます」

Aliceの作品で最も人気が高いのは、アムステルダム植物園のサボテンの作品です。自然光と落ち着いた緑がとても魅力的ですが、彼女はその細かい質感も見る人を惹きつけていると考えます。「トゲを守るように周りに生えているかわいい産毛、これが魅力的なコントラストを生んでいるのです」

既成のジャンルにとらわれない新しいフラワーデザイン

花や植物は元々インスピレーションを呼び起こすものですが、新世代のフラワーデザイナーは、花への愛を新たな形で表現しようと、ジャンルの垣根を取り払い、オートクチュールから彫刻、建築、さらにはSFまで、ありとあらゆるデザインの要素を取り入れています。


https://stock.adobe.com/jp/images/beautiful-skull-with-flowers-and-plant-foliage/292210146

Archan Nair / Adobe Stock

ファッション界を彩る豪華な花

オートクチュールでは頻繁に花が取り入れられるようになり、最近では豪華で派手な花々がファッションショーや雑誌の表紙を飾るようになりました。Nick Knight氏が撮った英国Vogue誌の表紙を見ると、モデルを務めるリアーナの顔は、東信氏(後述)がアレンジを手掛けた豪華な花にびっしり囲まれています。

このトレンドのきっかけを作った一人は、ビヨンセでしょう。暖かな色調のポピーやボタン、バラに囲まれた妊娠中の彼女の写真は、目もくらむ美しさでした。Awol Erizku氏が撮影したこの写真は、これまでの芸術における花の表現を踏襲しながらも、受胎という要素を結び付け、表現を昇華させています。「artnet」のMaria Brito氏の記事に書かれているように、ビヨンセの画像は、フリーダ・カーロの花冠や、ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」のような古典的作品をヒントにしています。

色に対する多様なアプローチも、花の新しいトレンドです。花を使って多彩な色を演出するアーティストもいれば、Aliceのように、形や影に目が行くようにシンプルなコントラストや単色の作品にこだわるアーティストもいます。

Wakana Yamaguchi / Adobe Stock

ボタニカルミニマリズム

花をミニマルに表現するスタイルも紹介しておきましょう。このトレンドの起源は日本古来の生け花にあると思われます。生け花では、構図とシンボリズムの厳格なルールに従って個々の花や枝や葉を慎重に配置し、各要素を際立たせます。

今日の花のミニマリストは、建築や彫刻のテーマにも取り組んでいます。例えば、ブルックリンのボタニカルスタジオ、WIFEのデザイナーは、非有機的な形を採り入れて、花のフォルムを極限までシンプルにします。葉を奇抜な色で塗ったり、花以外の要素を付け加えたりすることもあります。このスタジオのクリエイティブディレクターを務めるSophie Parker氏は、次のように説明します。「私にとって重要なのは美しいものを作ることではないのかもしれません。花はそもそも美しいものです。従来の美しさのイメージにとらわれることなく、珍しさや激しさ、おもしろさ、なまめかしさなど、自然をさらに追求することを第一に考えています」

Metaphoraも一流のフラワーデザインスタジオですが、ここは無駄を削ぎ落とす建築デザインの手法を用いて花を表現しています。形状を強調し色を絞ることで、アレンジの構造を浮かび上がらせるのです。

Yaroslav Danylchenko/Stocksy / Adobe Stock

「自然」、その野生の力

体系的な手法をとるアーティストがいる一方で、花の野生的な面を表現しようとするアーティストもいます。ロンドンを拠点とするデザインスタジオのJamJar Flowersは、ファッションと芸術の世界から離れ、地方の森や牧草地からインスピレーションを得て、季節に合った自然で「飾り気のない」花のデザインを作成しています。

環境志向が進む中、フラワーデザイナーは、プラントウォール(自作する場合、Google検索でたくさんのDIYチュートリアルがすぐに見つかります)、挿し木の観葉植物などをはじめとする持続可能性に目を向けると同時に、無駄を省き、作品から有毒物質を排除することにも取り組んでいます。

Adobe StockコントリビューターのLauren Allen氏は、旅、食べ物、自然などの要素にフォーカスしたフォトグラファーとしてノースカロライナ州を拠点に活動しており、クリエイティブの世界全体に広がりつつある自然志向のトレンドを実感しています。

「インテリアデザイン、芸術、写真、グラフィックデザイン、建築など、多くの分野で自然そのもののシンプルさを改めて見直そうとする動きがあるようです」とLaurenは言います。「それは人々の気持ちを落ち着かせると同時に、人間の制御を超えたこの世界を崇めることでもあります。こうした要素を芸術に取り入れることで、私たちは地球の危うさと美しさを潜在的に訴えようとしているのです」

Lauren Allen / Adobe Stock

観賞対象としての花

花は食卓に控えめに生けられることもあれば、思いもよらない場所でそれ自体がすばらしい観賞対象となることもあります。Lewis Miller Designは、何の変哲もない街の一角に、ある日突然大胆に花を飾る「フラワーフラッシュ」という手法の先駆けです。Lewis Millerのチームは、公共のゴミ箱や建設現場、消火栓、電話ボックスなどに見事なフラワーアレンジメントを施します。その目的は、優しさや思いやりを人々に再認識させることです。

東信氏の花の展示は、さらに考えられないような場所が舞台となります。SFからヒントを得るというこの日本のフラワーアーティストは、盆栽を宇宙に打ち上げたり、巨大な花束を海中に生けたりしたほか、複雑なフラワーアートのスカイダイビングや、花が朽ちる様子のドキュメンタリーの作成、作品を冷凍して解凍するプロジェクトなどを手掛けました。

ここで紹介した新しい花のデザインはすべて自然の簡素な美しさを私たちに気付かせるものですが、東氏の作品は花が意味することを私たちに深く問いかけます。彼はThe Green Galleryにこう説明しています。「花はつぼみで始まり、咲き、やがて枯れて、種を地面に落とし、土を肥やします。その限られた期間に、多くの変化を遂げながら、何も言わずに短い命を全うするのです。この存在の純粋な美しさは、人々の心に深く響きます」

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いかがでしたか?更にインスピレーション溢れる花たちをご覧になりたい方は、季節の美しい花々を集めたAdobe Stockのギャラリーにアクセスしてください。Adobe Blogでは、今後も最新のデザイントレンドを考察していきます。どうぞご期待ください。

ヘッダー画像:Anna Jones Photo / Adobe Stock