ヘリー ハンセン、143年のストーリーを顧客に直接届ける #AdobeSummit
1877年、当時船長だったヘリー ジュエルハンセン(Helly Juell Hansen)は、自分の部下たちのためにより良い服を探していました。北欧の海の厳しい気候の下では暖かく乾燥した状態を維持することは難しく、船員たちは健康への危険にさらされていたのです。ハンセンはキャンバス地に亜麻仁油を染みこませるというアイデアを思いつき、これが長いイノベーションの歴史を拓く始まりとなりました。厳しい気候に耐えるしなやかな防水生地はこうして生まれました。当時「オイルスキン製ジャケット」と呼ばれたこの服は、またたく間に消費者の間でも人気の商品となりました。
1878年のパリ万国博で初めての製品賞を受賞した後も、ヘリーハンセンはアパレル分野でのイノベーション レガシーを維持し続けました。1949年には薄い透明なポリ塩化ビニールの層を生地に縫い込んだ防水生地のHelox が登場し、これは1952年オリンピックのノルウェー代表団によって着用されました。次の20年の間には初めてのフリース、および身体からの湿気は逃すが温かさと快適さを保つ、新しい技術であるテクニカルベースレイヤーが登場しました。また、2018年には市場の標準より20%軽く温かい新しい断熱素材を発表しました。
ヘリーハンセンはいまや55,000人を超えるスキー、登山、セーリングなどのプロフェッショナルから選ばれるブランドとなっています。しかしこのコミュニティだけに留まることなく、プロフェッショナルグレードの衣服をそれ以外の人々にも届けるためにはブランドの進化が必要でした。ヘリーハンセンはその歴史の大半において卸売と小売会社を通じてビジネスを行っており、消費者との直接の関わりはなく、またイノベーションの歴史を示す手段も限られていました。しかし2016年に、ヘリーハンセンは自社史上最大の変革を実施し、自らのストーリーを伝えると共に、デジタルな世界でのアイデンティティを構築する手段を手に入れました。Adobe Experience Cloudをテクノロジーパートナーとして、ヘリーハンセンはわずか1年のうちにeコマースにおいて知られる存在となり、オンラインショッピングをよりビジュアルで魅力あるものに変えました。
基盤の整備
アウターウェア分野でのイノベーションの長い歴史を持つ企業にとって、eコマースは心躍る冒険でした。消費者に直接働きかけるためには、19か国でのサイト開設と、ストアあたり35,000を超える品目を掲載したカタログが必要でした。また、小売業の長い歴史の中でeコマースはまだ最近の分野であり、モバイルショッピングと決済処理の管理に伴う複雑さも存在します。しかし、この展開が最終的に成功したことで、小売テクノロジーが達成した進歩と、小規模な店舗と巨大企業との間のハンディを解消できる能力を示すことになりました。導入開始からわずか10か月後、7か国語への対応、支払手段、および出荷のルールを定めた55のサイトがグローバルに展開されるに至りました。
また一部の老舗小売企業とは異なり、ヘリーハンセンでのショッピングはモバイルファーストで構築されています。これはモバイルを実店舗やデスクトップPC向けWebサイトに追加しようと苦労することの多かった、他のブランドによる取り組みとは大きく異なります。ヘリーハンセンは消費者の行動パターンが変化していることを把握しているのです。Adobe Analyticsのデータによると、2019年のホリデーシーズンには過去最高となる500億ドルの購入がスマートフォン経由で行われたことが明らかとなっています。デザインからユーザーインターフェイスまで、モバイルを出発点とすることにより、小売分野で長年に渡り悩ませてきた、使いづらい後付けのモバイル体験を回避することができました。製品は直感的にレイアウトされ、チェックアウトはシームレスに行われ、ユーザーのプロフィールもコネクテッドな状態が維持されます。この新しいモバイル体験の提供を開始以来、トラフィックは48%増加しました。
ヘリーハンセンでチーフデジタルオフィサーを務めるクリス ハモンド(Chris Hammond)は次のように述べています。「2016年はヘリーハンセンにとって大きなターニングポイントでした。ヘリーハンセンには長年にわたるイノベーションの歴史、魅力あるストーリー、および本物のプロフェッショナルによるニッチなコミュニティでの強力なポジションを確立しています。しかし、デジタルがその伝統を人々に伝えるための新たな手段となりました。カジュアルなアウトドア愛好家の間での認知を拡大すると共に、プロフェッショナルグレードの衣服に興味を抱く人々に働きかけることができるようになりました。アドビは、Hellyhansen.comを単なるeコマースからグローバルな消費者向けメディアへと変え、変革の最初のフェーズから重要なパートナーであり続けてきました。この取り組みから素晴らしい成果が得られ、トラフィックが40%拡大すると共に、全体としての売上高は3倍と大きな伸びを見せました。デジタル分野での成長率は2016年のマイナスから2019年には40%に伸びています。アドビと共に進める次のフェーズでは、コンテンツとコマースとの連携をさらに深めて魅力あるショッピング体験の提供を推進し、同時によりデータ活用を進めて消費者主体の企業となることを目指します。」
今後の展開
従来の店頭でのショッピング体験と同様、eコマースにも人々の感情に訴え、興奮を呼び起こす手段が必要です。製品に触れたり試着したりすることができない状況では、ビジュアル体験がコマース機能と同等に重要です。ヘリーハンセンはアウトドアの可能性をショッピング客に伝え、インスタントグラティフィケーション(欲しいと思ったときに直ちにそれを得られる喜び)を提供する手段を必要としています。これが語るべきストーリーを持つブランドのもうひとつの側面です。新シーズンや製品発表時には、大海原や高い峰々などあらゆる背景を掲載した、野心的なWebページが表れます。このようなビジュアル体験に映るすべてが購買可能なため、人々は目にしたり読んだものを簡単に購入することができ、また、こうした体験は各自の好みに合わせてパーソナライズされた形で提供されます。Adobe Experience ManagerとMagento Commerceの組み合わせにより、このようなユースケースを実現する形でコンテンツとコマースが一体化されます。ヘリーハンセンはこの組み合わせを活用し、より魅力あるショッピング体験を作り出すと共に、冒険好きな人々の心を捉える新たな手段を見つけ出しています。
※本記事は、2020年3月31日にアドビのストラテジーおよびプロダクトマーケティングのシニアディレクターであるロニー スターク(Loni Stark)が投稿したブログの抄訳版です。