次世代の顧客体験を決定づけるカスタマージャーニー管理 #AdobeSummit

オンラインイベントとして開催されたAdobe Summit 2020の基調講演において、アドビのAdobe Experience Cloud担当バイスプレジデントであるスレシュ ヴィタルは、「常時オンラインで、文脈に沿い、パーソナライズされた顧客体験の提供こそが、カスタマージャーニー管理における『新しいフロンティア』だ」と述べました。

また、他のブランドから消費者に送られてくる、一見パーソナライズされたかのようなメッセージの洪水のなかで、「ひときわ注意を引くこと」が課題だと指摘し、朝コーヒーを淹れている間に携帯電話の通知を流し読みしているときの自身の体験を例に挙げて説明しました。

「私の携帯電話のホーム画面には、メッセージやオファーなど、私のお気に入りのブランドやアプリからの数百の通知が表示されていました。それらのメッセージをさっと流し読みしながら気を引くものを探しましたが、多くはあまり特徴のないものでした。いくつかはパーソナライズされているようにも思えましたが、私のことを理解し、その時点での私のニーズを予測して送られてきたものはほとんどありませんでした。」

結果、ヴィタルはメッセージのほとんどを読まずに削除します。そして彼の経験は、「最初から自分のことをずっと知っているかのように扱ってくれることをブランドに期待する」典型的な消費者の反応を示すものだと指摘します。

ヴィタルは続けて、旧来の4段階(発見、探索、購買、関与)の顧客ライフサイクルを、デジタル環境特有の最新のライフサイクルと対比させて説明します。それは、顧客が購買決定に至るまでに様々な要因が作用しあうもので、例えば、デスクトップおよびモバイル環境で製品ビデオを視聴したり、製品レビュー記事や広告を閲覧することなどが含まれます。

ヴィタルはこの新しいプロセスついて、「ブランドが自分たちの条件で縛ることができるものではなく、個々のインタラクションがロイヤルティの向上も低下も招くものである」と述べ、「ブランドはこのようなマイクロモーメントを受け入れ、最も関連性の高い方法を探して消費者に関与しなければなりません」と指摘します。

言うは易し、行うは難し。「まるで動く標的を狙うようなものです」と彼は言い、多くの場合、単純にパーソナライゼーションを導入するだけで十分な効果を得ることはできず、「消費者とブランドとのさまざまなインタラクションを結びつけたうえで、次に提供する顧客体験を決定しなければなりません」と語ります。

それには、単に複数のタッチポイントを結びつけること以上のなにかが必要です。顧客が個人の消費者であれ、大組織の購買部門であれ、「デジタルな情報を人間という存在と結びつけることにより、最も関連性の高い顧客体験を提供することが重要だ」と彼は述べます。

そこでヴィタルは、ブランドのカスタマージャーニー管理プレイブックにおいて最初に検討すべき重要事項として、消費者とブランドの関係性の真の把握に不可欠な、一元化され、常に最新の状態に保たれる顧客プロファイルについて説明しました。

その中で、従来型のスケジュールに従って一斉に実施するキャンペーンが無くなるわけではないと明言したうえで、「リアルタイムのシグナルに耳を傾けて反応し、顧客にとって何が重要なのかを予測し、その瞬間ごとに個別化されたジャーニーを編成する能力が必要」と述べました。

彼はまた、コンテンツと行動データを結びつけることも重要だと指摘します。「それは、最高のコンテンツやオファーの提供を可能にするインテリジェントな意思決定の仕組みの基盤であり、常にマーケティング担当者や機械学習アルゴリズムのために利用できる状態であるべきです。」

これは、理屈としては単純に聞こえても、現実には非常に複雑で、「1時間ごとに何百万回もの」大規模な実行はさらに複雑であるとヴィタルは述べます。そこで彼は先進的なテクノロジーの導入による解決を提案します。

「唯一の方法は、機械学習と人工知能(AI)を活用した、意思決定の自動化の推進です。」

AIや機械学習が提示するインサイトは、メッセージ送信の最適なタイミングを示したり、顧客の解約を予測したり、メッセージに含める最適なコンテンツを選択するのに役立ちます。それは、作業を担当する者にとっても価値のあるものです。

「この方法で顧客対応を業務とする従業員の意思決定を支援することで、すべての顧客に特別な体験を提供することが可能になるのです」とヴィタルは締めくくりました。

※本記事は、2020年3月31日にゲイル ケステン(Gayle Kesten)氏が寄稿したブログの抄訳版です。