広がり続けるデザインのダークパターンとの戦い方 | アドビUX道場 #UXDojo

連載

エクスペリエンスデザインの基礎知識

ダークパターンはインターネットと同じくらい古くから存在します。30年以上の間、Webは人を操るデザインを育てる温床でした。そして、それを止めさせようと長期にわたり組んできた人たちもいます。

先見の明に満ちた行動として、Nielsen Norman Group のロルフ・モリックとヤコブ・ニールセンは、1990年にユーザインターフェースデザインのためのユーザビリティ10原則のリストをつくり始めました。その中には、ダークパターンには欠けている主要な特性「ユーザーにコントロールの主導権と自由度を与える」が含まれています。

(彼らは予期してなかったでしょうが)その後の数十年間、リストの3番目に書かれた「コントロールの欠如」は、デザイン系ブログやカンファレンスのステージで議論され続けることになります。2010年にはユーザー体験の専門家ハリー・ブリヌルが「ダークパターン」という造語をつくり出し、2020年には、Googleの新しいホームページが、実際の検索結果と殆ど見分けのつかないデザインの広告を掲載したことで、世界中のメディアから批判を浴び、ダークパターンのコンセプトが広く知られるようになりました。

しかし、これほど注目されているにもかかわらず、ダークパターンはさらに増え続けています。邪魔なポップアップを閉じるためだけにボタンをクリックする状況は常に発生し、そもそもつくるつもりもなかったアカウントをキャンセルするために、迷路のような手順を進むことさえあります。

なぜ私たちは反発するのではなく、適応するのか?

デザインの役割

こうした議論の多くが目を向ける先は、当然のようにデザイナーです。デザイナーはユーザーとビジネスのニーズの間で働いており、両者のバランスを保つことができる力を持っています。いくつもの記事が、デザイナーはビジネス部門の目標や指標に背を向けて、ユーザーの価値観に合わない機能に反対を表明し、綱引きゲームの審判として振舞うことを奨励しています。

「10年前、私はデザイナーが自分自身を律することについてだけ考えていましたが、例外なく、どのデザイナーもそれを実行し続けるのには、明らかに苦労しています」とユーザー体験の専門家であるハリー・ブリヌルは語ります。

ダークパターンに関する状況は改善されるどころか悪化しています。その理由が問われなければなりません。

UXデザイナー ハリー・ブリヌル

キャット・チョウのDesign Ethicallyから、実際に使われている顔認識ソフトウェア。

実際に使用されている顔認識ソフトウェア 出典:キャット・チョウのDesign Ethically

Design Ethicallyの創設者であるキャット・チョウは、IBM在籍中にも同じようなニーズを発見しました。「私がDesign Ethicallyを立ち上げた理由は、テクノロジー業界はもっと倫理的になるべきだとデザイナー同士で常に話していたからです。『それが本当に意味していることは何だろう?口先で言うことはできたとして、それをどのように実践できるのだろう?』と私は常に考えていました」

最初の彼女の答えはワークショップの形をとった、デザインプロセスをつくり替える活動でした。それから10年以上の間に、ダークパターンと戦うためのリソースと注目は増加しました。しかし、彼女は「デザイナーだけで対応するにはあまりに多くの新しい技術が登場しています」と述べています。

ブラック・ミラーのエピソードを見たことがある人は、こうした状況を(かなり極端ですが)目にしたことでしょう。「顔認識と拡張現実は、テクノロジーをスクリーンを超えて利用可能にしました」と、ブリヌルは指摘します。自分自身の顔が、次世代のダークパターンのプラットフォームになるのです。

同様に、人工知能はデザインのレベルでコントロールすることが困難です。システムがどんなデータを取り込んでいて、アルゴリズムがデータをどのように処理しているのかわからなければ、それは実質的にブラックボックスです。「それこそが、企業が偏見を生んでいることから逃れている方法です」とチョウは言います。

トップからの議論に持ち込む

当然のように、ダークパターンについての議論はたいてい暗転することになります。しかし、増大する脅威に見合った方法での戦いも始まっています。

「特に大きな組織では、官僚主義をあちこちで目にします。いわゆるお役所仕事が横行しています。意思決定は役員レベルで行われ、個人が発言するのは困難です。一方で、企業トップから変化が生まれる保証はありません」とチャオは言います。その代わりの手段として彼女が提唱するのは、草の根レベルから始めて、同盟を探し、申し立てを開始し、国会まで巻き込む多面的なアプローチです。

「会社を俯瞰して見れば。対抗する力をいくつも見つけることができます」と彼女は言います。もし誤解を招くようなインタラクションを懸念しているのであれば、デザイナー以外にも、プロダクトマネージャー、エンジニア、リサーチャー、サポート担当者、マーケティング担当者も同様である可能性があります。集団として立場を表明するだけで、方向性を覆すのに十分な合図になることもあるでしょう。あるいは上層部に到達するために、請願書が必要になるかもしれません。しかしある時点まできたら、企業内だけでなく、業界全体か変わらなければなりません。「銀行口座を開設するとき、その手順は規制されています。スーパーで肉を買うとき、そこにも規制があります。悪用されやすい業界には、単純に規制が必要なのです。テクノロジー業界のような強力なパワーを持つ場合は特にそうです」とブリヌルは言います。

「ネットワークに追加 」または「この手順をスキップ」のどちらかのオプションをユーザーに選ばせるリンクの図。

クリックすべきか?しないべきか? 出典: darkpatterns.org

すでに、この方向への動きは見え始めています。GDPR (General Data Protection Regulation) は、多くの人が聞いたことがあるでしょう。これは企業のプライバシーポリシーやホームページを、世界規模で更新するきっかけとなりました。その後、さらに多くの法律が制定されています。昨年は、DETOUR (Deceptive Experiences To Online Users Reduction Act) として知られる超党派の法案が米上院に提出されました。この法案は、インターネット上での詐欺行為やA/Bテストなどに対処するもので、倫理的なデザインを支持する人々の間で一歩前進だと広く支持されました。

今日、多くのテクノロジー大手企業が生み出している収益は、各国の経済を見劣りさせるほどです。それは、政府機関を最良のパートナーにする助けになるかもしれません。企業が管理されてバランスが保たれていれば、デザイナーの役割を、そもそもクッキーを収集すべきかを議論する行為から、ユーザーフレンドリーな方法で同意を求めるスキマ広告をデザインするという至難の業に再び戻すことができるでしょう。

これからの道

もちろん、規制にはまだ長い道のりが待っています。米国では、議員の多くがいまでもFacebookのような企業がどのように収益を上げているのか理解していないようです。そして、保護のための法案が形になると、言語は法律用語であふれかえり、周囲の反応は滑稽なほどに支離滅裂です。「どちらの政党も努力しているのを見ると希望が持てます」とチャオは言います。「しかし、誰もが知っているように、完璧な政府は存在しません」

官僚がテクノロジー企業のメンタリティーを捉えつつある状況で、ブリヌルは「今こそ規制を先取りすべき時です」と言います。彼は、慎重に設計する時間があるうちに、デザインチームに独自の原則に基づくプラクティスを導入するよう推奨します。 法的な期限や高額な罰金に直面するまで待つ理由はありません。「法律は、優れたデザインプロセスとは正反対に見えがちですが、常に異なる解釈が可能なものです。将来を見据えた規制に従うことを妨げるものは何もありません」

たとえばブリヌルは、審議中のDETOURに「社内ユーザー支援グループに関する提案」が含まれていることを知ると、自身の会社に独自にグループを設立しました。そのグループにはデザインチーム内外の代表者が含まれており、新機能や新製品だけでなく、提案されたA/Bテストの承認も行います。このようにすれば、テスト結果に関係なく、ユーザーの最大の利益が意識された結論にたどり着けるようになります。

もちろん、デザイナーがユーザーを守ろうとするのと同じくらい、ユーザーもこの戦いの一翼を間違いなく担っています。無数のソーシャルプラットフォームがすぐ手の届くところにある(意図されてない)メリットは、倫理的でないデザインを実践している企業をこれまでにないほど簡単に非難できる、場合によってはキャンセルできることではないでしょうか。急速に、デジタルリテラシーは生き延びるための、少なくとも健全な生活のための必需品になっています。

「私たちにとっての現実は、いまやGoogleやFacebookのような企業が公開しようと決めた情報に頼ったものになっています」とチョウは指摘します。「彼らはある意味、真実の裁定者になりました。したがって、オーガニックな検索の結果と有料広告の違いがあまりにも微妙だと、現実が最も多くお金を払った人に都合よく決定されることになります。影響は大きく、宿題の答え方や、次の選挙で誰に投票するのかを決める際の、人々の世界についての考え方を形作る上で大きな役割を果たしています」

この戦いのリスクは高く、範囲は拡大しています。戦いを選択するデザイナーはおそらく誰より、ダークパターンをへこませることの難しさ、インタラクションの微妙さ、洗練させるためのスキル、戦うことの重要性について知っています。草の根の取り組みをトップまで広げ、個人だけでなく、企業、業界、立法機関全体の力に身を委ねることで、デザインをコントロールする力をデザイナーの手に取り戻すことが、最終的には達成できるのかもしれません。

この記事はWho’s Responsible for Preventing Dark Patterns?(著者:Sophie Tahran)の抄訳です