ユーザーをもっと理解するために。UXデザインにおけるストーリーボードの役割 | アドビUX道場 #UXDojo
エクスペリエンスデザインの基礎知識
デザイナーとして明確に理解すべきことのひとつは、「デザインしている製品やサイトを人々がどのように使うことになるか」です。視覚的コミュニケーションツールであるUXストーリーボードを使うと、ユーザのニーズを把握して、望ましいユーザー体験についてより深い洞察を得ることができます。
ストーリーボードがあれば、チームでシナリオを視覚的に検討してユーザーの体験を議論することができます。また、製品に対する期待を表現する方法としても有効です。ストーリーボードを手にしたチームは、ペルソナや、解決しようとしている問題についてより多くを学び、ステークホルダーがデザインプロセス初期に持つ可能性がある疑問を浮き彫りにすることもできます。
これから、ストーリーボードの詳細、その重要性、および使用するタイミングについて紹介します。
ストーリーボードとは何か?
ストーリーボードは、ストーリーをグラフィカルに構成し、一連のイベントの流れを視覚的に表示します。その目的は、全体のプロセスと、その中で起きる個々のイベントにおける体験を提示して、あるストーリーを伝えることです。ストーリーボードのコンセプトは、1930年代にウォルト・ディズニーのスタジオがプロットの順序を視覚化する目的で使用したことで知られています。UXの世界においては、ユーザージャーニーをたどることを可能にするためにストーリーボードが使われます。これは、ユーザーがデザインや製品に触れる種々のシナリオを評価するためのエクスペリエンスマッピングと似ています。
下の図は、ディズニーの『モアナと伝説の海』の絵コンテの例です。ストーリーボードのこのセクションは、映画の中で、カカモラがモアナとマウイからテ・フィティの心を盗もうとするアクションシーンを説明しています。これらのスケッチには、シーンの開始点、キャラクタが直面する課題、キャラクターがそれをどのように乗り切ろうとしているかが描かれています。いくつか色を使用した大まかなスケッチスタイルは、シーンを使用してシナリオを説明する良い例です。フレームのサイズはすべて同じで、一貫した方法でシーンを辿れます。そして、キャラクターが解決しようとしている問題、つまり 「テ・フィティの心への到達」 を提示しています。
このストーリーボードは、カカモラがモアナとマウイからテ・フィティの心iを盗もうとしているアクションシーケンスを描いている 作者:ソンミ・チョ、ストーリーアーティスト 出典:Disney Fandom
UXデザインにおけるストーリーボードの作成用に、ペルソナ、シナリオ、キャプションを含んだテンプレートが提供されています。Nielsen Norman Group による説明は次の通りです。
「シナリオに登場するペルソナまたは役割を、ストーリーボードの最上部に明確に指定します。各ステップは、スケッチ、イラスト、写真のどれを使用しても構いません。ラフスケッチにするか詳細な描画にするかは、ストーリーボードの目的、それを見せる相手に応じて変わります。キャプションには、ユーザーのアクション、環境、感情の状態、デバイスなどを記述します。ストーリーボードのメインコンテンツはイメージであるため、キャプションは簡潔にし、通常は箇条書きの2点以内です」
ストーリーボードテンプレート 提供:Nielsen Norman Group
ストーリーボードは、最小限のスケッチでも十分有用で、描き方も決まりはありません。消したり、上書きしたり、修正するのも自由です。
UXデザインのストーリーボードはコミュニケーションの手段であり、イラストレーションのスキルは重要ではありません。ユーザーにとって何が優先事項なのかに焦点を当てることが目的です。また、チームの目標を念頭においてつくられるべきでです。
ストーリーボードを使用する理由は何か?
ストーリーを伝える方法はたくさんあります。ユーザーのペルソナを見せて体験を伝えると、より多くのコンテキストを理解することができます。例えば、私たちのペルソナのひとりが、生徒のために新しい記事を見つける必要があるトレイシーという名前の教師だとします。ストーリーボードは彼女の体験がどのようなものかを構築するのに役立ちます。それは教室での状況を描き出したものになるかもしれません。トレーシーが一日の始まりに、生徒のために記事を探してイライラしていることを示すものかもしれません。トレーシーはこの仕事を成し遂げることができるでしょうか?トレーシーにとってその経験はどう感じられるでしょう?
UXデザインにおいて、ストーリーボードは必要のない質問を排除し、フローに欠けているものは何かを考えることに集中させてくれます。チームでストーリーボードをレビューすれば、チーム全体がユーザーの目標を共有することができます。ストーリーボードは、チームが短いスプリントで作業しているときや、さまざまな人がコラボレーションしながら構築しているときに、明確さをもたらします。
ストーリーボード作成の際に重要な点は以下のとおりです。
- 環境と場面の設定: 例えば、トレイシーは教室にいて、午前中で、何人かの生徒も一緒
- ユーザーペルソナ: 誰が何に困っているのか?プロセス内での感情も含める
- 目標: 解決しようとしている問題は何か?どのような経緯でそうした状況になったのか?
- ナラティブ: 起点、展開、および結末を持つストーリーにする
ストーリーボードをいつ作成するべきか?
デザインプロセスの早い段階でストーリーボードを作成する行為は、ユーザーのニーズが考慮されているかを確認するのに良い方法です。インクルーシブなデザインを目指している場合に、アクセシブルな体験を構築するための手段としても使えます。早期に作成することで、チームの意見をまとめ、全員が同じ目標に向かって努力していることを確認できます。
チーム間のコラボレーションの手段としても利用可能で、ステークホルダーからのより深い理解とフィードバックの機会を得ることもできるでしょう。チームがユーザーのための新しいアイデアを見つけていくときにも、ストーリーボードは全員のビジョンを一致させ、チームがユーザー体験を念頭に作業するための助けになります。
コンテンツを作成する担当者にとっては、ビジュアルを提供するストーリーボードが、ユーザーの体験を明確化するツールになります。インタラクションをデザインする際には、ナラティブを提供して人間の体験らしさを少し追加するのに役立ちます。誰が製品を使っているのか、誰のためにつくられるべきなのかを理解する際の助けになるすべての要素が、より良いユーザー体験につながるでしょう。
この記事はThe What, Why, & When of Storyboarding in UX Design(著者:Sabrina Hall)の抄訳です