UXが「大流行」の理由 ~米国ファッション工科大学~
ニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT)は、デザイン、ファッション、アート、コミュニケーション、ビジネスの大学として国際的に認知されています。学生が作品のユーザーエクスペリエンス(UX)を総合的に考えられるようになることを目指して、デジタルテクノロジーに関わるカリキュラムを強化してきました。
FITでは、消費者とは商品から受けるフィーリングを重視するものであると捉えています。 初めて商品を見た瞬間(大抵の場合はオンライン)に始まり、購入検討のためにSNSや販売サイトを訪問し、購入する、使ってみる、共有するまでが一連の流れとしてつながっているのです。
この全方位型カスタマージャーニー分析(customer journey )は、総合的なユーザーエクスペリエンスのひとつの例にすぎません。しかし、デザインやビジネスの専攻で、今後数年間で増加すると予想されているUX関連の求人に対応できる十分な知識を持っている学生は多くはありません。事実、Cognizan社の「Job of the Futre Index」によると、2019年第2四半期には、1500件近いUI(ユーザーインターフェイス)とUXデザイン・開発の求人が埋まっていませんでした。
FITでは、就職したその日から即戦力になるために必要な最先端の技術を教えていることに定評があり、このような求人にまさに応えることができます。
2011年にFITのC.J. Yeh氏と Christie Shin氏の2人の教授が世界で初めて大学レベルのUXデザインコースを開講しました。教授たちによれば、当時はUXデザインはあまり知られている分野ではなかったため、UXデザインとは、動的タイポグラフィ、インタラクションデザインなど、いくつかの関連コースのみで小さくスタートを切りました。
2018年になるころには、この分野は大変人気となり、FITでは「未来を創るクリエイティブな即戦力」という理念も受けて、満を持してクリエイティブテクノロジーとデザインのカリキュラムを開設しました。今では、アプリケーションデザイン、デジタルプロダクトデザイン、UIシステムデザイン応用などの科目が含まれ、FITの8つの専攻で開講されています。1学期あたりの受講生はおよそ600名で、 科目の数は増え続けています。このカリキュラムでは、生涯学習センターを通じていくつかの認定プログラム(UXデザイン、UIデザイン、AR/VRコンテンツデザイン、ダイナミックブランディングなど)も提供されています。
「急激に変化する現代社会は、クリエイティブ業界にかなりの影響を与えてきました」と、Yeh氏は話します。「今実社会で求められていることと、従来からのデザインの授業で教えられていることには大きな隔たりがあります。従来型のプログラムを卒業した後に、UX/UIデザインのような現代的なスキルに十分触れてこなかったことに気づき、私達のプログラムを受けにくる学生たちをたくさん見てきました。」
教授たちによると、FITのUX/UIデザイン教育重視の姿勢を支えているのは、最新のツールや技術です。当初、学生の多くはSkethcやInVisionなどの一般的なデジタルデザインツールを使っていました。 しかし次第に、こうしたツールでは、世界中の取引先とオンラインでデザイン案件を共有しながら仕事を進める現代のビジネスのニーズに応えられないことに学生自身が気づき始めました。
Shin氏もYeh氏も、学生には多様な技術を学ぶ機会を提供するようにしていますが、共同デザイン作業についてはAdobe XDを勧めています。
FITにおけるAdobe XDのワークショップ
Adobe XDはAdobe Creative Cloudに含まれるソフトウエアで、webサイト、モバイルアプリ、 音声インターフェイスやゲームなどのデザインを共同作業で行うことができるツールです。何よりも、リアルタイムのポータルやハブとしての機能が秀逸で、学生でもプロでも、リアルタイムでプロジェクト関係者に制作物を共有したり、関係者のフィードバックを求めたりすることができます。
「学生たちには、一生懸命作業するだけでなく賢く作業することも大切であると指導しています。つまり、時間と労力を節約できるツールを選択し、クリエイティブな作業により多くのエネルギーを使注げるように、ということです。」とShin氏は話します。「Adobe XDは作業効率をとても高めてくれるツールなのです」
Shin氏とYeh氏によると、多くの学生はPhotoshopやIllustratorなどのアドビのソフトウェアを使い慣れているので、Adobe XDはすぐに使いこなせるといいます。非常に直感的で、使いやすく、機能も豊富で、すぐにキャンパス中で使われるようになったとのことです。
「私がAdobe XDを使った理由には、ユーザーエクスペリエンスが優れているということに加えて、すでの他のコースプログラムでも使っていた点があげられます。FITの文化人類学博士課程の卒業生で、UXデザイン認定プログラムを受講したAnders Wallace氏は言います。「XDは制作物の同期が簡単なので、複数のコースの制作物を行き来できるのです。シンプルで非常に直感的、すっきりわかりやすいインターフェイスだと思います。」
FIT4年生で広告とデジタルデザインを専攻しているTan Brown氏も同意見です。「私はチュートリアルから始めるタイプではなくて、まずは使ってみるのが好きです」彼女は言います。「アドビツールの中でコンセプトから最終形まで作り上げることができるようになりました。Creative Cloudの中ですべてがよく連携していてシームレスに使えます。Adobe XDはとても感覚的に使えて、だまされているのかと思うほど簡単でした。」
FITはUX/UIデザインをカリキュラムだけでなく、FIT/Infor DTechラボにも展開しました。このラボは、約3年前、学生、教職員、業界パートナーが共同で新しいアイデアを深めたり、実社会の問題を解決するために共同作業を行うことや、学際的な研究を推奨するために設立されました。
このラボはエグゼクティブディレクターMichael Ferraro氏を責任者として、ニューヨークのビジネスクラウドソフトウェアの会社であるInfor社とのパートナーシップで運営されています。学生、教職員と有名なハイテク企業やアパレルブランドが集い、イノベーションやデザインを通して業界課題の解決に取り組んでいます。
例えば、あるプロジェクトでは、大学院生がある企業と組んで脳性麻痺の方々のためのアクセサリーを開発しました。また別の例では、自転車に乗る人向けの新型バックパックをデザインしました。ウェストポーチ部分にウィンカーやブレーキライトがついたものです。また、3DデジタルドレーピングソフトウエアのBrowzwear社と共同で、次世代のファッションデザイナーをひきつけるにはどうすべきかをリサーチするプロジェクトも行いました。学生たちはAdobe XDを使ってリサーチ結果やジャーニーマップを共有し、プロトタイプを制作しました。
影響力のあるデジタルプロダクトデザインチャレンジ
「私達は全学横断でのコラボレーションを意図して、高い学修効果がある環境を作ってきました。新しい技術を活用してみる数々のプロジェクトで、私達はビジネスとクリエイティブの未来を描くアイデアを中心としてつながっているのです。業界とのパートナーシップによって、学生は卒業後の実践力を身に付けることができます。」 とFerraro氏は言います。「まだ歴史が浅いラボですが、すでに30のプロジェクトを実現し、教職員35人、学生115人が参加しました。」
FITは他にも「チャレンジウィーク」を実施して学生のUX/UIについての知識や関心を高める取り組みをしています。期間中には、講演やブートキャンプセッション、学生が自由にプロジェクトに取り組むオープンアワーなどが行われます。学生たちはこの機会に人間中心設計(human-centered design) の実践例に触れ、イベント期間中は自身の作品のプレゼンテーションを行います。さらに完成作品はオープンキャンパスの来場者向けにギャラリーに展示されるのです。
影響力のあるデジタルプロダクトデザインチャレンジ
これまでこうした数々のプロジェクトを教職員と学生の協力なサポートのもとに進めてきたShin氏とYeh 氏ですが、今後はアドビの適切なツールを一層活用することでデジタル社会での学生の活躍のために貢献できると考えています。
「教育者として、通常は特定のブランドにこだわることはしません」Yeh氏は言います。「しかし、私たちは学生たちのためにベストなツールを提供したいと強く思っているからこそ、Adobe XDを勧めるのです。XDを取り入れてから、多くの学生たちから、機能が豊富でUXデザインにおいてよりクリエイティブな制作ができる、XDのファンになったという声をよく聞くようになりました。」