これからの10年とこれからの世界:クリエイティブトレンドの未来を語る #Adobe Stock
Adobe Stock ビジュアルトレンド
このブログ記事では、電通イージス・ネットワークのデジタルマーケティング担当グローバル責任者が紹介する、トップブランドとインフルエンサーにみる新しいクリエイティブトレンドの取り入れ方をご紹介いたします。
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アドビの方々のお招きにより、2月に開催されたThe Drum主催の最新オンラインセミナーに参加させていただきました。大変刺激的な内容で、個人的に最近参加した中でも一、二を争うパネルディスカッションになったと思います。「2020年度の主なクリエイティブトレンドについて」をテーマに、ほかの参加者の皆さんと意見を交えてきました。
ディスカッション用の資料には、クリエイティブトレンドに関するアドビの主要レポートを参照しました。Adobe Stockチームが毎年取りまとめているレポートで、アドビの豊富なユーザーデータを中心に、インフルエンサー、検索ボリューム、研究およびニュースに関する情報、そして美術業界およびファッション業界の動向も盛り込まれています。今年のトレンドは、ビジュアル、モーション、デザインという3つの大きなカテゴリーに分類されていました。
周知のとおり、今年3月に発生したCOVID-19のパンデミックにより私たちの生活様式は一変しました。社会と経済の一刻も早い復旧を願う一方で、自己隔離とソーシャルディスタンスの確保を徹底し、各自が心と身体の健康に気を付けながら生活する必要に迫られています。これをきっかけにパンデミック発生前のトレンドがすべてなくなるわけではないと思いますが、私たちの行動パターンの劇的な変化が2020年度主要なビジュアルトレンド全体に影響を及ぼすことは間違いのないところでしょう。
今後上位を占めるトレンドの中には、ブランドやインフルエンサーが主導するトレンドを反映するものが出てくるのではないかとみています。この記事をとおして、コロナ影響下で考えた私自身の考察を皆さんと共有できれば幸いです。
1.健康とウェルネス
COVID-19の影響により、心と身体の健康状態に対する懸念がかつてないほどに高まっています。全国的な自粛生活を余儀なくされる中で、個人の衛生管理についての意識も向上しました。世界中の人々にとって健康とウェルネスこそが最優先事項であることに、疑いの余地はないと思います。
興味深いのは、アドビが2020年初旬のビジュアルトレンドレポートで「Express Yourself – ありのままの感情表現」というトレンドを先んじて発表していることです。このトレンドは、嘘偽りのない自分を表現したいという新時代の感性や、自分の心に気づき積極的に思いやろうという傾向の高まりを反映しています。うつ病、いら立ち、孤独、ネットいじめへの対応件数は増加の一途をたどり、いまや大きな社会問題となっています。
個人用保護具に対する需要もかつてないほど過熱し、都市封鎖の実施が解除された地域では、政府がマスク着用を義務化しているところも増えているようです。マスク姿はもはや普通になり、「新しい日常」として受け入れられてきています。今年はそんな状況を反映した画像が増えることでしょう。
Vogue誌インスタグラム
毎日の通勤が急になくなったり、いつも通っていたジムを利用できなくなったりして、身体の健康管理に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。最近では、インフルエンサーが様々な方法で健康を維持するための方法をフォロワーに発信しているのをよく見かけるようになりました。Joe Wicks氏が毎日配信しているエクササイズ動画はその代表で、収益はすべてNHSに寄付しているとのこと。私たちも見習わなくてはいけませんね。
Alp Pecker / Adobe Stock
クリエイティブなインスピレーションの画像は、Adobe Stock ギャラリーの「健康」と「ウェルネス」をご覧ください。
The Body Coachインスタグラム
2.コミュニティとつながり
新しいマーケティングトレンドとして最近特に目にするのは、地域主義、コミュニティ、他者への思いやり、という3つの要素です。先日私がホストを担当したポッドキャスト番組では、Carat社のメディア先物担当グローバル責任者であるDan Calladine氏をお招きし、なぜこのようなトレンドが伸びているのかについて話し合いました。本質的な価値をお客様と社会にどう還元するか、共感を得るにはどうすればよいか、地域レベルとグローバルレベルでどのように貢献していくか。ブランドは今後これらの問題について検討する必要に迫られるのではないかと考えています。
「危機的な状況によって、助け合いの精神が促されたのかもしれませんね。ここ数年で最大の危機に遭遇して、他人に対し親切で寛容でありたいと願う気持ちが芽生えているのではないでしょうか」とDanは述べています。「このトレンドでは、「caremongering(助け合いの輪)」という言葉も新たに生まれました。一人ひとりが寛容な心を持ち、支援の輪を広げて恐怖に打ち克とうというムーブメントです」。
また、「From Me to We(「私」から「私たち」へ)」というトレンドにおいては、「原点回帰」という重要な社会的メッセージが込められているのも見逃せないポイントです。地域コミュニティ、デジタルデトックス、環境への配慮、これらを重視して生きることによる癒しの力に注目が集まっています。最近ではこのような動きが加速していて、複数のコップがソーシャルディスタンスを保っている動画から、自己隔離で外に出られない隣人のために食料品の確保を請け負ったりする献身的活動まで、コミュニティの新しいつながりの形を示唆する動きが見え始めてきました。
Jesse Morrow/Stocksy / Adobe Stock
在宅で働く人々が増え、学校は閉鎖され、娯楽は基本的に自宅でできることに限られています。家族のつながりが物理的にも仮想的にも深まっている様子は、アドビの新しい「ハブとしての自宅」コレクションで窺い知ることができます。家族や友人同士でのバーチャルな集いから、仕事と自宅教育の両立まで、つながりの新時代では家を重んじ、地域への帰属意識が高まっているのです。
3.世代を超えたつながり
小売業界と美容業界をはじめとする消費者ブランドで成長が著しいトレンドは、購買年齢層の多様化です。Adobe Stockギャラリー「All Ages Welcome – 世代を超えたつながり」をご覧ください。面白いのは、Aussie、Dove、Trinny London、TENA、L’Orealなどのブランドが、このアプローチをひっそり採用していることです。ただ最近で最もインパクトがあった動きでいうと、Panteneの#PowerofGreyキャンペーンは外せません。このシリーズではあらゆる世代の女性にインタビューを実施して、老い、自信、美容についてどう受け止めているかを聞いています。
一方で、90年代に活躍した著名人が現役で活躍を続けていることが、このトレンドの推進力となり、人気を高めている要因にもなっているようです。最近51歳の誕生日を迎えたJennifer Anistonは、『The Morning Show』で2つのゴールデングローブ賞にノミネートされ称賛を集めています。またGwyneth PaltrowはNetflixで公開された刺激的なドキュメンタリー『Goop Lab』で話題を独占。Jennifer Lopezは最近賞を獲得した映画『ハスラーズ』で主役を務めました。
#InstaGranniesムーブメントと「Germaine Greer世代」は、60過ぎの女性に対する既成概念を覆しました。Iris Apfel、Lyn Slater(Accidental Icon)、Jenny Kee、Jan Correll(Silver is the new Blonde)、Sarah Jane Adams、Maye Muskなどシニア世代の著名人が活躍し、「老人」の既成概念を軽々と打ち破り、健康、ファッション、スタイルに対するそのこだわりによって人々の認識の変化を少しずつ促しています。#LifeGoals(人生のゴール)、良い年の取り方の一つの答えがここにあるといえるかもしれません。
Icon Accidentalインスタグラム
4.セミ・シューリアル/サティスファイング動画
変わったところでは、「セミ・シューリアル」、#oddlysatisfying(サティスファイング動画)など、ASMRと呼ばれるジャンルのコンテンツが近年人気を博しています。複数の研究で多くの治療効果が報告されており、気分の改善、痛みの緩和、瞑想やマインドフルネスと同様の効果があるとされています。
COVID-19の影響により世界中のストレスレベルは高まる一方ですが、セミ・シューリアルとサティスファイング動画は脳に不思議な心地よさをもたらします。
A post shared by Andreas Wannerstedt (@wannerstedt) on Jan 6, 2020 at 7:16am PST
ファッションブランドはここ数年のマーケティングでシュールな要素を盛り込む傾向にあり(Kenzo、Moschino、Gucciのキャンペーンを参照)、ほかのブランドもこの新しいトレンドに追従し始めています。Van Cleef & Arpelsはその一例で、Andreas WannerstedtとOliver LattaによるInstagramの人気動画を巧みに模倣しています。
A post shared by Van Cleef & Arpels (@vancleefarpels) on Jun 8, 2019 at 12:54am PDT
5.ハンドメイドヒューマニズム
アドビのトレンドレポートで興味深いトレンドをもう一つ。それは古きよきモダニズム風スタイルのリバイバル、特に「ハンドメイドヒューマニズム」です。オーガニックなデザインを手がけるクリエイターの数は確実に増えているように思います。 Adobe Fresco、iPad Proなど、ハンドメイドなテイストを加えやすいツールの登場も影響しているのかもしれません。
デジタルスケッチは以前に比べ、はるかに普及してきました。Mailchimp、WeTransfer、Slack、Intercom、Notion、Coca-Colaのブランドホームページには、デジタルスケッチで描いたアート作品がたくさん使用されています。このクリエイティブメディアの人気の高さがうかがえますね。
オーガニックなデザインと素材が生み出すリアルな新鮮味もまた、デザイナーに好まれる要素です。ここ数年流行している幾何学的なアールデコはその一例といえるでしょう。塗装と素材に自然な質感を感じさせるヘルシーなデザインも最近よく見かけるようになり、紙、木、コラージュ技法などが好んで使用されています。made.com、Glossier、Zendeskなどのホームページで実例をご覧ください。
Zendesk
6.環境ドキュメンタリー
最後のトレンドは、アドビが発表した2020年の最初のモーショントレンド「環境ドキュメンタリー」です。オーストラリアで起きた恐るべき大火災や英国の洪水、そして「プラネットアースII」、Greta Thunbergさん、エクスティンクション・リベリオンが発する非常に強力な警告メッセージにいたるまで、二酸化炭素排出量および気候変動への影響に対する意識と積極的行動がかつてない高まりを見せています。
封鎖の継続によって自然が回復の兆しを見せ、静かな空、澄んだ水、新鮮な空気が少しずつ戻ってきました。私たちは2020年以降も引き続き、環境問題を考えていかなければなりません。そのためには動画を活用して環境への配慮を促し、人類が地球に与えているマイナスの影響とプラスの影響の両面を訴える必要があるのではないでしょうか。
Redbred / Adobe Stock
複数の国が封鎖されている現在、ドローンを使用して人通りのない都市や道路を撮影した映像も着実に増えてきました。市民は自宅での自己隔離を義務付けられているため、街には人影がなくがらんとしています。強制隔離が施行されたサンフランシスコの街は不気味なほど閑散としており、強いインパクトを感じさせます。今後ほかの地域でもこれに追従し、人のいない都市や街、路上の動画がアップされていくことは間違いないでしょう。
Adobe Stockの「空撮ビデオコレクション」と「 COVID-19関連の空撮ビデオコレクション」をご覧ください。
Adobe Stock
このインサイトをぜひ、あなたの制作のインスピレーションに
2020年のクリエイティブトレンドには様々な方向性がありますが、一つ確かなのは、トレンドはインスピレーション源として制作に活用できるということです。マーケティング担当者やブランドの代表者にとって、世界中で起きていることを常に把握しておくことは欠かせません。キャンペーンを企画したり、クリエイティブなビジュアル作品を活用して優れたインスピレーションを生み出すにしても、現状の把握は重要です。表現に嘘はないか、エクスペリエンスは適切か、時間をかけて問い直す価値はあります。
どんなコンテンツが視聴者の心に響くかを知るのは、マーケティングにおいて最も重要なポイントの1つなのですから。
Sabrina Rodriguez氏は、電通イージスネットワークのデジタルマーケティング担当グローバル責任者です。今後もアドビの2020年度のクリエイティブトレンド情報にぜひご注目ください。アドビでは年間を通じ、デザイントレンドおよびモーショントレンドについて綿密に分析しています。更新情報はこちらでご覧いただけます。
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この記事は2020年5月1日にSabrina Rodriguezより作成&公開されたThe Creative Trends of a New Decade — and of a New Worldの抄訳です。
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