いまこそ取り組もう!PDFを活用した建設業界のデジタル化

2020年、新型コロナウイルスの脅威は瞬く間に世界に広がり、私たちの日常を大きく変えてしまいました。今後もウイルスに備え、感染対策を考慮したNew Normalな働き方や新しいライフスタイルが求められています。

建設業界も例外ではありません。現場業務が多く、デジタル化が遅れていると言われている建設業界ですが、これからの時代、デジタルを活用したリモートワークや事業継続対策は、最重要経営課題となるでしょう。

この新しい経営課題に、建設業界はいかに取り組むべきでしょうか。2020年5月26日にアドビが開催した「デジタル×建設業 オンラインセミナー」にて、その導入ステップが示されました。

デジタルとクラウドで進める建設業界のリモートワーク

基調講演に登壇した建設ITジャーナリストの家入龍太氏がまず語ったのは、建設業界を取り巻く二重三重の課題です。

オンライン講演中の建設ITジャーナリスト/株式会社イエイリ・ラボ 代表取締役 家入龍太氏

「建設業界では、長らく業界共通の問題として『人材不足』が叫ばれており、それをカバーするための『生産性向上』が大きな経営課題となっていました。そしてこれからは『人との接触機会を減らす』という観点で、現場の人員を極力減らしつつ、生産性を上げなくてはなりません。」

難しい事態に直面している建設業界ですが、「実はこれまでの取り組みを通じ、この新しい問題に対処できます」と家入氏は説明します。たとえば肉体作業ならロボット、頭脳労働ならAIというように、人間の仕事の代替手段はすでに存在していますし、国土交通省も、ICTを活用した建設・建築の新施策

「i-Construction」を提唱し、技術活用による生産性向上を後押ししてきました。

家入氏はこうした状況を踏まえ、接触機会7割削減を実現するための新たな施策として、「デジタルツイン」という考え方と、「クラウドの活用」の2点を挙げます。

デジタルツインとは、現場や構造物などの実物の姿をデジタル化して“双子(ツイン)”とし、リモート環境で確認や工程管理などを行うやり方です。そしてそのデジタルコンテンツを、現場や工場、在宅の作業員が共有するために、クラウドを使います。デジタル化とクラウド活用により、建設業でもテレワークが可能になるわけです。

そこで問題となるのが、現場・在宅・工場の情報共有を円滑に行うためのドキュメントです。

建設業務では、それぞれの立場のスタッフが、テキストや写真・図形、図面、3DのBIM(Building Information Modeling)/CIM(Construction Information Modeling)モデル、現場の音声や動画など、さまざまな情報を必要としています。裏を返せば、仕様が統一されていないため、情報共有が難しいという問題があるのです。

家入氏は「その問題を解決するのがPDFです」といいます。「PDFは、Office文書はもちろん、BIM/CIMモデルや図面、指示項目も取り込むことができますし、リンクを使って動画や音声も1つのファイル内に収められます」と続け、「Adobe Acrobatという誰もが持っているソフトで、仕様が異なるさまざまな情報に一元的にアクセスできることも大きなメリットです」と説明します。またPDFのタグ機能を活用すれば、ロボットやAIとの情報共有も可能になり、より業務の自動化・効率化が実現できます。

家入氏は、「案件がペンディングになっている事業者の方も多いと思いますが、そんな時こそチャンスと捉え、日ごろ使っているPDFの作り方や使い方、新機能を習得し、自社ならではのNew Normal(新しい様式)を確立しましょう」と訴え、講演を終えました。

図面や画像、書類を1つに統合し、共有・承認・活用できるPDFの使い方

続いて始まったのは、アドビによる『建設会社にアンケート!建築・建設業界の「あるある」文書業務の課題』と題したデジタルメディア事業統括本部 第三営業本部 アカウントマネージャー 加地 はるなとエンタープライズ製品戦略部 スペシャリスト名久井 舞子による講演&デモンストレーションです。

建築業界へ向けたプレゼンテーションを披露するアドビの加地 はるな(左)と名久井 舞子(右)

アドビの元には、これまで紙ベースで業務を進めてきた建設業界から、

・CADやExcel、Word、アドビのデザインソフトなど、ツールが複数あるため文書の制作が煩雑

・1つの文書を作成するのに、社内の複数部門や協力会社との確認・調整に時間がかかる

・紙文書ベースの承認や契約締結にかかる工数・コストが膨大

・長期的な文書の保管が難しい

・文書セキュリティの確保の問題

などの業務課題が寄せられてきました。実はPDFを使えば、こうした紙業務にまつわる課題を解決し、業務のデジタル化を進めることができます。

PDFは、どんな形式の文書も再現し、また画像や3Dデータなどのリッチな情報を格納できる情報コンテナであり、クラウドを通じてあらゆる業種・業界で利用できる共通プラットフォームです。

出典:家入氏プレゼンテーション資料より抜粋

ところが普段からPDFを使っているはずのユーザーでも、「AcrobatはPDFを閲覧するだけ」「PDFの閲覧や結合はできるけど、それ以外の使い方は知らない」という人が多いのです。そこでデモでは、PDFを作成・編集し、そのドキュメントをAdobe Document Cloudで共有してレビューや承認フローを構築できる「Adobe Acrobat DC」を使い、以下のようなPDFによるドキュメント活用を実演しました。

PDFは、さまざまなツールで制作されたドキュメントを1つのパッケージとしてまとめられるほか、元の制作ツールを使ってパッケージ化されたドキュメントに修正や変更を加えられます。またAdobe Document Cloudにドキュメントをアップして共有することで、複数の人がスマートフォンやタブレットからアクセスし、レビューを書き込むことも可能。紙の回覧よりも工数がかからないため、法人向け間接資材通販「モノタロウ」を運営するMonotaRo社では、カタログ制作にPDFを活用し、確認業務を3割効率化したそうです。

またAdobe Document Cloudでは、建設業法施行規則に対応した電子サインソリューション「Adobe Sign」が搭載されているので、デジタル上で設計や施工契約を結ぶこともできます。取引先がAdobe Sign未導入でも、契約書を送付する側のAdobe Document Cloudでドキュメントをやり取りすれば、相手側はWebブラウザから電子署名を行えます。

Adobe Signデモ:契約書をAdobe Document Cloudのクラウドにアップし、取引先に電子署名を依頼

Adobe Signデモ:電子署名依頼メールのURLをクリックし、タイムリーにiPadから電子印鑑を捺印

PDFなので、長期の管理保存はもちろん、検索しやすくなるのでその後の活用も進みます。セキュリティ設定も要件に応じて細かく設定できるうえ、アドビの強固なデータセンター上でドキュメントを管理・活用・保管ができるので、むしろ安全性は向上します。これまでの膨大な紙書類も、OCR機能が搭載された「Adobe Scan」というアプリを使ってPDF化することで、こうしたPDFのメリットを享受できます。

PDFの機能や、Adobe Document Cloudの組み合わせによるテレワークの可能性は広がっています。「建設業界は現場作業が必要だから、テレワークは無理」とあきらめず、「新しい生活様式に合わせ、テレワークはできないか」と気軽にご相談ください。アドビはいつでもその声に応え、建設業界のデジタル化を支援いたします。