オンライン化していくセミナーをより伝わりやすく。エバンジェリストが取り組んだこと
今、様々な学びがオンライン化しています。アドビでも自社製品への理解を深める取り組みとして、社員向けの「Creative Cloud道場」を週2回、オンラインで開催しています。これはテレワークでできた空き時間を使って、製品について学びたいという社内の声を受けてスタートしたもの。講師は毎週木曜日に生配信中の番組「Creative Cloud道場」でもおなじみの、Adobe Creative Cloudエバンジェリスト、仲尾毅らが務めています。テレワーク下で実施することになったオンラインセミナーに加えて、「Creative Cloud道場」の生配信も自宅から行うことになった仲尾には、この間、様々な気づきがあったようです。ここではオンラインで伝えること、届けることに取り組む多くの人に、その気づきを共有したいと思います。
テレワーク以前にも年に数回、有志を集めて開催されてきた社内向けの「Creative Cloud製品勉強会」ですが、コロナ禍で全面テレワークとなったことをきっかけに、4月以降はオンライン会議システムを使って「Creative Cloud道場ONLINE」という形で定期開催されるようになりました。仲尾は「リアルの会議室からオンライン会議へと場所を移しただけといえばそうなのですが、実際にはそう単純ではなかった」と振り返ります。PhotoshopやIllustratorからPremiere Proまで、Creative Cloudで利用できるツールの使い方を、画面を見せながらデモンストレーションするのですが、これをオンライン会議システムの画面共有機能でやろうとすると、画面が不鮮明になったり、カクカクした動きになってしまい伝わらないといった課題があったからです。
「どのような環境を整えれば、より鮮明な画面で伝わるデモンストレーションができるのか。社内向けのセミナーだけでなく番組配信のためにも、クオリティを上げるためにできることをまず考えました」と仲尾。自宅のネットワーク環境をチェックして速度的に問題がないか確認したほか、より良く伝えるために必要な機材も導入しました。以下に紹介するのはその一部です。
・照明
前から照明を当てることで、顔の表情が相手から鮮明に見えるようになります。
・WEBカメラ
専用のカメラを用意。カメラによっても鮮明さや明るさはまったく違ってきます。
・スイッチャー
オンライン会議システムの画面共有機能を使ってデモを行うよりも、デモ用のPCの映像をウェブカメラから出力した方が、スムーズなデモが実現できます。そのため、出力元を切り替える機材やアプリも用意しました。
・マイク
周囲の音が入らないように、指向性の強いマイクを導入しています。
「たとえばリアルな会議では動画で見せた方が伝わる内容でも、オンラインでその動画自体が途切れ途切れになってしまうと、まったく伝わらないといったことが起こります。環境を整えることもそうですが、相手にどう見えているかということを常に意識して、見せ方、伝え方を工夫する必要があります」(仲尾)
とはいえ相手にどう見えているか、オンラインでそれを確認するのは簡単ではありません。たとえばリアルではたとえ100人を超える大規模なセミナーでも、参加者の反応を感じ取ることができます。ワークショップではさらに、参加者のリアクションや質問を受けながら進行するのが常ですが、オンラインで大人数になると、このような双方向でのやりとりが難しくなるからです。
「僕自身、今もまだ試行錯誤の段階ですが、できる限り参加者に呼びかけてチャットで反応してもらうようにしています。ただ『質問があったら書いてください』と言ってもなかなか書き込んでくれないので、まずは『聞こえてますか?』のように、イエスかノーで反応できる質問を問いかけるということをやっています」(仲尾)
自身の体験だけでなく、オンラインでの授業に取り組む先生方や、オンラインセミナーに取り組む仲間と情報交換をする中で、わかってきたオンラインでの伝え方のコツもあると話します。
その1つが、ホストはひとりでやらない方がいいということ。ひとりで話しているときにもうひとりがサブとしてチャットを確認したり、「聞こえなかったので、もう1度お願いします」といったフォローをするだけで、進行がぐっとスムーズになります。
また会話が被らないように意識して話すことも大切。オンラインではどうしても会話にタイムラグが生じるので、ホスト同士が話す場合や質問を受ける際に、相手の発言を待って話す工夫が必要です。相づちを挟むと音が途切れてしまうことがあるので、声を出さずに頷くなどのリアクションで応えるのもいいでしょう。
さらに「話すときの目線も大切」だと仲尾。たとえば会議のウインドウを、パソコンのカメラの位置に近い場所に移動するだけでも、目線の動きを小さくすることができます。「顔が画面の下の方にあると、メッセージが届きにくくなってしまうので、目の高さが画面の真ん中の水平ラインよりも上にくるようにするなど、カメラに映る際の構図も意識したいところです。
ほかにも「画面を見せている間も、話している人の顔が見えるようにする」「長丁場の場合は途中でバーチャル背景を変えるなどで動きを持たせる」「本題とは違う話題を挟むなどメリハリをつける」「声のトーンが変わるように、複数人で話す内容を分散させる」など、「参加者に飽きられないようにできる工夫はたくさんある」と仲尾。もちろんスライド作成時にも、オンラインならではの配慮が必要だと話します。「スマホで見ている人もいるので、文字の大きさには特に注意した方がいいでしょう。ただスマホの人もいるということさえちゃんと認識できていれば、仮に文字が小さくても『ここは見づらいと思うので読み上げますね』といったフォローができます。相手にどう見えているか、常に意識しておくことが大切です」
Adobe Creative Cloudエバンジェリストとして、社内外を問わず人前で話す機会の多い仲尾ですが、「今後はオンラインでいかに伝えられるか。そのスキルがより求められるようになっていくと感じている」とのこと。また「リアルではリーチできない遠方の人にも参加いただけるなど、オンラインにはオンラインならではのメリットもあります。リアル、オンラインの両方が使えれば選択肢が広がると思います」と話しています。