N高でアドビが特別授業を実施。高校生が学ぶデザイン思考とは?【前編】
今や、14,852名もの生徒が在籍するN高等学校(以下、N高)。
インターネットで学べる通信制高校として知られていますが、「通学コース」も設置されており、全国19ヶ所にキャンパスを構えています。
そんなN高の通学コースでは、「プロジェクトN」という課題解決型学習を実施しています。この学習では、その分野のスペシャリストを招いた授業も行っており、デザイン思考をテーマにした授業で、アドビ株式会社デジタルメディア事業統括本部 Education Evangelist 井上莉沙が講師を務めました。
好きなデザインで通用した学生時代から、デザイン思考が求められるプロの制作現場へ
「プロジェクトN」は、N高の通学コースに通う生徒たちが取り組む課題解決型プロジェクト学習です。実社会につながるテーマを扱っているのが特徴で、生徒たちは1〜2ヶ月ほどかけて、グループで問題発見や課題解決、アウトプット制作に取り組みます。
5~6月に実施されたプロジェクトNのテーマは「ターゲットの心を動かすデジタルアートをつくろう」です。ターゲットはN高キャンパスの先生を想定し、生徒たちは動画や静止画などを使ったデジタルアートに挑戦します。そのプロジェクトの一環として、デザイン思考をテーマにした授業が設けられており、今回、アドビのEducation Evangelistの井上が講師を務めることになりました。
生徒たちはこのプロジェクトを通して、傾聴力やデザイン思考、アドビのアプリケーションやプロジェクトマネジメントについて学んできました。それらが、本当に実社会で役立つのか、スペシャリストの話を聞こうというのです。
アドビ株式会社 デジタルメディア事業統括本部 Education Evangelist 井上莉沙
井上は、アメリカのデザイン会社で働いた後、昨年、日本に帰国し、アドビに入社。アメリカの大学でジャーナリズムを学んでいるときに、副専攻でデジタルアートを学び、アドビ製品に出会ったといいます。
「N高に来る前から、アドビという会社を知っていた人〜?」、井上はオンライン越しに生徒たちに話しかけます。N高では全生徒が「Adobe Creative Cloud」コンプリート版を使用できる環境ですが、今回は新入生が多いということもあり、会社としてのアドビを知っている生徒は少ないようです。まず、「Creativity for All―すべての人に『つくる力』を」というアドビの企業理念や、実際の社会でどのようにアドビ製品が使われているのかについて説明しました。また、多種多様なアドビ製品については、「どのアプリで何ができるのかを知っておいて、分からないことを検索できるようにしておけば上手くアドビ製品を活用できます」と話しました。
井上は、アメリカの大学でジャーナリズムを学んでいたときに、「Adobe Photoshop」や「Adobe Illustrator」を使ってポスターを作ったり、インタビュー動画を作ったりと、分からないことを周囲に聞きながらアドビ製品の使い方を覚えていったといいます。そして、現地でデザイン会社に就職してから、プロのデザイナーとして、本格的にアドビ製品を使いこなすようになりました。「大学生の頃は完璧に使えていたわけではありませんが、学生時代にある程度、アドビ製品を知っていたので、デザイン会社に入ってからも学ぶスピードが早かったのかと思います」と当時を振り返ります。
一方で、デザイン会社で働くようになってからは、自分の作品に対してアートディレクターからOKがもらえないという課題には直面します。“どうしてこの画像を使ったの?”、“どうしてこの色を選んだの?”、“どういうメッセージが込められているの?”とアートディレクターからさまざまなことを聞かれたと話します。このようなモノづくりを通して、自分視点ではなく、受け手の視点を意識する大切さに気づいたということです。
「学生時代はなんとなく自分の好きなもの、いいなと思ったものを組み合わせてデザインをしていました。ところが、プロのデザイナーとして仕事をしていく中で、デザインは自分の表現ではなく、目的を持って誰かのためにデザインすることだと気づきました」と、井上は仕事を通してデザイン思考の重要性に出会ったことを語ります。