リモートワーク環境でのデザインビジネス成長のためにAdobe XDを活用したLollypopの事例

一部のデザイン会社では、パンデミックへの対応がオンラインのコラボレーションへの移行を模索し始めるきっかけとなり、すべてのことにおいて、他の人のニーズを考慮する必要があることを思い出す機会となりました。しかし、企業によっては、既に取り入れていた働き方を単に肯定することになったケースもあります。Lollypopはそのようなデザイン会社のひとつです。

7年間にわたりインドを拠点として活動し、いくつかのアワードを受賞したこともあるこのUX/UIスタジオは、フィンテック企業からフィットネスアプリに至るクライアントのポートフォリオを持ち、人間中心デザインの哲学を一貫して実践してきました。世界中の12のオフィスに150人を抱えるまでに成長したLollypopは、リモートからデザイナー同士がコラボレーションできるツールの力をすでに十分に認識していました。

上の動画はLollypopの最新のショーケースです。彼らは、スタートアップから大企業まで幅広いクライアントのために、さまざまなウェブサイト、アプリ、ウェアラブルデバイスのインターフェースを制作しています。

スタジオ設立から、スタンフォード大学のプロジェクトへの採用まで

「Lollypopのモットーである『発見し、定義し、デザインし、洗練させる』は、私たちのプロセスそのものです」と、ムンバイのスタジオで働くUXデザイナーのラジャスワリ・ケルスカーは述べました。「パンデミックが発生していますが、この点についての変化はありません。このような危機的状況において成功するために必要なものは、良いデジタル体験を提供するという信念を持った献身的なチームメイトたちです」

Lollypopは2013年以来このプロセスを実践しています。創業者でデザインディレクターのアニル・レディは、TBWATEQUILAのアートディレクター職を含め10年近くニュージーランドで働いた後、ベンガルールに移転しました。「インドをデジタルデザインの拠点として世界地図に載せる」というミッションを掲げて設立されたこのスタジオは、ネパールのフィンテック企業IME Digital Solutionから米国のスタンフォード大学まで、国際的なクライアントからの仕事を短期間で獲得しました。

今では、カリフォルニアを拠点とするITサービス企業TerralogicがオーナーになったLollypopは、インド、米国、UAE、ベトナムにオフィスを構え、世界中で150人以上の従業員を擁し、Webサイト、モバイルアプリ、ウェアラブルコンピューティングのインターフェイスデザインに取り組んでいます。

Lollypopは、IT系の新興企業や消費者向けサービスなど、さまざまな業界のクライアントと仕事をしています。たとえば最近のクライアントの1社は、Cricket.comというスポーツプラットフォームです。Lollypopの主要なゴールは、ヘルスケア、ビジネスサービス、農業などの業界において、「デザインにより、企業向けアプリケーションを人間的なものにする」ことです。彼らが持続可能な農業を実現するためのアプリとして開発した「FarmRise」はレッド・ドット・デザイン賞を受賞しました。

Lollypopが受賞したFarmRiseのUX。低速なインターネット接続でも動作するように設計されたClimate Corporationのアプリは、インドの農家に作物の収穫量を最大化するための情報を提供する

発見、定義、デザイン、洗練

Lollypopの4段階のプロセスは、「発見(ディスカバリー)」から始まります。そこでは、クライアントのビジョンと目標の調査が行われます。「デザインを提供するだけでなく、クライアントとの絆を育みます」とラジャスワリは言います。「私たちはマーケットについて、クライアントの経験や彼ら自身のストーリーについて話し合い、それに応じてデザイン作業を始めます」

定義の段階では、インターフェイスの構造を決定するために、リサーチから得たデータを主軸にして、利用可能な情報から望ましいユーザージャーニーを確立し、プロジェクトのパフォーマンス指標を特定します。

最後に、デザインの作成と洗練を行います。このプロセスでは、認知科学の知見を活用して、魅力的で使いやすい製品を開発します。そして、一連のワイヤーフレーム、ビジュアルデザイン、プロトタイプを通してインターフェイスを洗練させていきます。Lollypopではこの段階を「感情を論理に持ち込む」と表現しています。

Cricket.comのスポーツ分析アプリのために制作されたインターフェースデザイン。LollypopはUIデザインやワイヤーフレームをSketchからAdobe XDに切り替えた

SketchからXDへの移行

Lollypopは、以前はデザイン作業にSketchを使用していましたが、ある時点からクロスプラットフォームのUI/UXデザインツールであるAdobe XDに切り替えました。デザイン作業のパイプラインに必要な追加プラグインやサードパーティ製アプリケーションの数を削減することが目的でした。

「Sketchでは、開発者への引き継ぎのために、サードパーティ製ツールを購入する必要がありました。操作可能なプロトタイプを作成するためのInVision、マイクロインタラクションのためのPrincipleなどです」とラジャスワリは言います。「支払うべきサブスクリプションの費用と、その後の追加料金があまりにも多かったのです。XDは、ワイヤーフレームから開発者への引き渡しまで、ひとつのアプリで行えます。提供されるものすべてを考えれば、価格設定は非常にリーズナブルです」

現在では、Lollypopのデザインプロセス全体を通じて(アイデア作成、ユーザーフローの可視化、ワイヤーフレーム、テスト、プレゼンテーション等)、XDが使用されています。特にラジャスワリが高く評価している機能は、iOSとAndroidアプリ用のプリセットUI要素、レスポンシブデザインを整えるためのレイアウトグリッド、スタイルガイドやコードを生成する能力、チームが画面を共有して注釈を付けることの容易さなど、時間を節約できる機能です。

しかし、彼女がもっとも魅力を感じているのは、XDの共同編集機能だと言います。複数のデザイナーが協力しながら同時にプロジェクトに取り組むことが可能になるためです。これは、パンデミックによる行動制限のためにLollypopのチームメンバーがリモートワークを強いられている期間中に、スムーズなワークフローを維持するのに役立ってきました。

XDの共同編集機能により、複数のデザイナーが同じドキュメントを同時編集できるようになるため、チームがリモートで作業している場合でも、コラボレーションは容易です。

Lollypopのチーム作業の継続を可能にしたリアルタイム共同編集

ラジャスワリは、Lollypopが当初、共同編集機能について疑念を抱いてていたことを認めています。「同時に編集を行うことがが、デザインコラボレーションに関わるほとんどの問題の最適な解決策であることはわかっていましたが、それでも躊躇していたのです」と彼女は言います。「システムのメンテナンス作業のために誰かの作業が失われたり、チームの誰かが、他のメンバーが行った作業を気づかずに上書きしてしまうのではないかといったことをを心配していました」

「それでも、私たちは共同編集を試してみました。そして、その結果には驚かされました。他のチームメンバーが同じドキュメントを開いて作業しているときに、相手がどのアートボードやオブジェクトを編集しているかをリアルタイムで確認することができます。これは、まさに、UXデザインをリモートから行うために必要なことです」

DNA Paris賞を受賞したスポーツテクノロジープラットフォームRunAdamのためにLollypopが行ったUXデザインでは、ロックダウンによる制限にもかかわらず、XDのコラボレーション機能により、注目に値するレベルのプロジェクトが実現されています。

コラボレーションによるUXデザインの未来を切り開く

スタジオ文化の一部には、デジタルではどうしても再現できない面もありますが、Adobe XDのようなコラボレーションツールのおかげで、Lollypopはロックダウン中も世界中のクライアントに最先端のデザインを提供し続けることができました。更に、そうした経験を通じて、制限が緩和された時のための新しい働き方を構築することができました。

「各自の稼働時間を維持するために、物理的なオフィスは必要ないことがわかりました」とラジャスワリは言います。「簡単なブレインストーミングのセッションやレビューを行うために集まることはできなくなってしまいました。でも、XDのような仮想化ツールを使えば、今でも迅速かつ容易に共同作業を行うことができます」

Lollypopの場合、XDに切り替えたことでプロジェクトのレビューサイクルが短縮され、社内コミュニケーションのギャップの一部が解消されて、時間とコストが節約できたといいます。ソフトウェア自体だけでなく、Adobe XDのコミュニティもラジャスワリは賞賛しています。「デザインのプロが集結し、平日はUI/UXプロジェクトに取り組みながらベストプラクティスをリアルタイムで共有し、業界のトレンドについて語っています」

「アドビは口先だけの会社ではありません」と彼女は締めくくりました。「このような素晴らしいツールを提供してくれただけでなく、私たちのような顧客を支援し、コミュニティーとつながってクリエイティブでいられるようにしてくれたことに感謝しています。仕事の環境や日常生活に影響を与える要因は、現時点では制御できないかもしれませんが、チームの安全と健康を維持しながら状況に適応し、一緒に働く方法を改善することは可能なのです」

この記事はRemote Collaboration Keeps Lollypop’s UX Design Business Growing During COVID-19(著者:Rajeshwari Keluskar)の抄訳です