ペーパーレスで住宅ローン契約を実現したソニー銀⾏、そのデジタル変⾰の成功ポイントとは〜Adobe Experience Makers Liveレポート #AdobeSign
依然として新型コロナウイルスの猛威が続くなか、企業にはますます“新しい様式”のビジネスプロセスが求められています。アドビが 2020 年 7⽉29日(火)〜30 ⽇(水)に開催した企業のマーケターを対象としたオンラインイベント「Adobe Experience Makers Live」では、ニューノーマル時代の前にいち早くデジタル変⾰を実現したソニー銀⾏の重⽥浩治⽒が、その施策と成果について、アドビの北川和彦と対談しました。
住宅ローン契約のオンライン化をいち早く進めたソニー銀⾏
2020 年、新型コロナウイルスの蔓延により、世界各国で社会⽣活は⼤きく変化しました。感染防⽌に向けたソーシャルディスタンス、不要不急の外出の⾃粛など、「⼈との距離を取ること」があらゆる⾏動の基準となっています。
それは企業活動においても変わりません。打ち合わせや営業はもちろん、取引契約という⼤切な場⾯でも、物理的に距離を取りつつ、⽀障なくかつスムーズに進める必要があります。
実はこうした取り組みを2019年から始めていたのがソニー銀⾏です。2001年に開業したソニー銀行は、インターネット専業銀行では国内2行目と歴史は古く、個⼈向けの資産運⽤銀⾏として、外貨預⾦と住宅ローンを主⼒商品としています。
そんなソニー銀⾏が昨年から開始したのが、住宅ローン契約のデジタル化です。オンラインイベントに登場したソニー銀⾏ ローン業務部 副部⻑兼企画課⻑の重⽥浩治⽒は、この取り組みを開始した背景について次のように説明しました。
「マイナス⾦利施策の影響で銀⾏の利益が圧迫されるなか、住宅ローン関連の業務は紙の書類が⾮常に多く、規模の拡⼤に伴い経費も⽐例して増えるため、収益に直結しない状況がありました。
また当⾏はネット銀⾏のため、⼿続きはメールと郵便と電話が主で、時間がかかるという弱みがありました。」
この弱点を克服するために、同社が取り組んだのが、住宅ローンの電⼦契約サービスです。煩雑な紙ベースの契約をデジタルに移管し、オンラインで契約⼿続きを完結することで、経費の削減や、⼿続きに時間がかかるという課題を解決できます。また、オンラインなので実印や印鑑証明の取得が不要になり、顧客の負担を軽減できるというメリットもあります。
オンライン対談を⾏なったソニー銀⾏ 重⽥浩治⽒(右)、アドビ 北川和彦(左)
そこでソニー銀⾏は、顧客とのやり取りに利⽤していたServiceCloud(セールスフォース)を活⽤し、住宅ローン契約のオンライン化を実現する要のソリューションとして、アドビの電⼦サインソリューション「Adobe Sign」の運⽤を開始したのです。
平均3 週間かかっていた⼿続きが1 週間に、契約締結は1 時間で終了
Adobe Sign を活⽤した住宅ローン契約により、その⼿続きスピードは劇的に向上しました。住宅ローンは、顧客からの依頼を受けて銀⾏側で契約書を準備・発送し、書類を受け取った顧客は必要な記⼊事項や捺印、借り⼊れ⽇の設定を⾏い、また銀⾏に返送します。銀⾏は返送された書類に不備がないかをチェックし、融資を実⾏するのですが、かつてはこのやり取りだけで平均3 週間かかっていたそうです。
導⼊前と後の業務プロセスの変化(グレーの部分が削減されたプロセス)
「住宅ローンの契約⾃体、何度も経験している⽅は少ないので、緊張して記⼊や捺印に不備が⽣じることは⽇常茶飯事です。そのため書類の郵送・返送が何度も起こります。また書類の性質上、普通郵便ではなく簡易書留でお送りしていたので、不在の場合はお客様⾃⾝で再配達や受け取りに⾏っていただいていました。なるべくそういう⼿間がかからないよう、⼟⽇着でお送りしてはいたのですが、特定の曜⽇に業務が集中してしまいます。今回のデジタル化により、こうした課題が解消されました」と重⽥⽒は説明します。
契約書の送付をオンライン化し、署名捺印を Adobe Sign で⾏うようにしたところ、これまで 3 週間かかっていた融資前の⼿続きが 1 週間程度に短縮できました。特に契約書の捺印・締結に関しては、従来だと郵送⼿続きが外せないため、最低 3 ⽇かかっていたものが、最短1 時間以内に完了するそうです。
予定外の不備ややり取りの発⽣がなくなったため、銀⾏側でしかできない融資の⼿続きなどのスケジューリングが⽴てやすくなりました。案件を担当するローンアドバイザーも、扱う管理件数を⼀層増やしつつ、本来業務である顧客とのコミュニケーションに注⼒できるようになったそうです。結果、年換算で約 1 億円のコスト削減を実現したほか、コロナ禍においても、オンラインで契約⼿続きができたため、2020 年 3 ⽉は単⽉で過去最⾼の取引となり、翌 4 ⽉も過去最⾼のローン実⾏件数を達成しました。
顧客の利便性向上に貢献した Adobe Sign
今回、重⽥⽒と対談したアドビ Digital Media ビジネスマーケティング ディレクターの北川和彦は、⾃⾝も 15 年前に⽶国で住宅を購⼊しています。イベントではその時の経験を踏まえ、「物件を⾒ている時は楽しいのですが、いざ購⼊するとなると、資⾦繰りで現実に引き戻され、そして煩雑すぎる住宅ローンの契約で⼼を折られました(笑)」と重⽥⽒に打ち明けました。
重⽥⽒はそんな北川の経験に理解を⽰したうえで、「住宅ローン契約のオンライン化によって顧客の利便性も⾼まり、顧客満⾜度も向上しました」と説明します。その利便性向上に貢献したのが、Adobe Sign でした。
「電⼦契約技術はさまざまなものがありますが、基本は『⾮改ざん性』と『本⼈性』の 2 つです。改ざんしにくく、本⼈性の⾼い技術は、認証プロセスが複雑で顧客に不便を強いたり、コストがかかったりする可能性があります。そうかといって、簡単過ぎると今度は本⼈性が危うくなり、問題が起こった時に契約の⽴証ができないというリスクがあります。この点は社内でも議論を重ねたのですが、Adobe Signは証跡管理機能や 2 要素認証を持ち、安全な契約を実現します。さらに当⾏では、⼿続き時の電話認証を組み合わせて本⼈性を担保しており、お客様にも安全な契約を訴求しています。」(重⽥⽒)
デジタル変⾰の効果を出す3 つのポイント
「業務プロセスをデジタル変⾰したことで、組織内にどのような変化がありましたか」という北川の質問に対し、重⽥⽒は「いままでと同じ紙の業務を続けていたら、おそらくパンクしていたでしょう」と答え、次のように説明します。
「スケジューリングのしやすさや、本業である顧客対応への注⼒など、これまで事務作業に取られていた時間を本業に振り向けることができました。また今回のコロナ禍において、社員の⾃宅待機が発⽣し、⼈員を間引きして業務体制を組んだのですが、ローンの実⾏に関してはほぼスケジュールどおりに⽀障なく進めることができています。郵便や物流が逼迫するなかでも、そうしたエッセンシャルワーカーの⽅の負荷をかけず、銀⾏業務が遂⾏できた点も⼤きかったと思います。」
アドビが2019 年10 ⽉に調査会社と共同で⾏ったリサーチによると、⽶国の銀⾏ではすでに約50%の銀⾏が電⼦サインソリューションを採⽤し、未導⼊の銀⾏でも「1 年以内に採⽤を検討する」と回答したところは85%に上ったといいます。
北川は、「このニューノーマルの時代、これまでの業務プロセスをデジタルに切り替えていく動きは加速すると思います。ソニー銀⾏の取り組みは、これからデジタル化を⽬指す企業にとって、良い事例になるはずです」と評価しました。
最後に重⽥⽒は、これからデジタル化による変⾰を⽬指す企業に対し、3 つの成功ポイントを挙げました。
デジタルワークフローで効果を出す 3 つのポイント
「第 1 に、ただ電⼦化するのではなく、業務プロセスの改⾰を踏まえて電⼦化すること。第2 に、電⼦化によって本業に集中できる仕組みを整えること。そして第 3 に、取引がスピードアップすることで、効率化だけでなく、営業⾯でも効果を出せるはずなので、この機にぜひデジタル変⾰に取り組んでみてはいかがでしょうか。このセッションがそのお役に⽴てれば幸いです。」