学生用ライセンスパックでコストや初期設定の負荷を大きく軽減、オンライン授業への切り替えもスムーズに〜阿佐ヶ谷美術専門学校

新登場の学生用ライセンスパックをいち早く契約

映画監督の山崎貴氏やイラストレーターの寺田克也氏など、多くの著名クリエイターを排出している阿佐ヶ谷美術専門学校。美術やデザインなどクリエイティブ系の専門学校ということもあり、Illustrator 88(1988年)から学内環境にアドビのクリエイティブツールを取り入れています。

そのような進取の気性あふれる同校は、2020年2月に発売が開始された「学生用ライセンスパック」もさっそく4月に契約を締結しました。

「もともと、本校には、学生が授業や課題などに自由にアドビツールを使えるように、また場所や時間の制約なく制作に打ち込めるようにという思いから、入学時に学生全員に同じスペックのMacBook Airを推薦しています。アドビのCreative Cloudライセンスは学生に自身で学生・教職員個人版を購入してもらった上で、MacBook Airで使えるよう設定するように指導していました。ところが、初期設定で苦労する学生も少なくなく、毎年学校からのフォローに時間がかかっていました」と、阿佐ヶ谷美術専門学校 理事長付学校長補佐 三輪孝幸先生は説明します。

阿佐ヶ谷美術専門学校 理事長付学校長補佐 三輪孝幸先生

学生ライセンス用パックの本格運用が始まった2020年4月は、新型コロナウイルスで緊急事態宣言が発令された前後です。思わぬ災禍のなかではありましたが、いち早く学生ライセンス用パックに切り替えていたおかげで、その後のオンライン授業をスムーズに行うことができました。以下、その取り組みを紹介します。

アドビツールの需要が増え、学内PC教室がパンク状態に

そもそも阿佐ヶ谷美術専門学校が、いつでもどこでもアドビのツールを使えるように、学生にノートPCを貸与するようになったのは2014年のことでした。

阿佐ヶ谷美術専門学校では、視覚デザイン専門コースなどデザイン系の専門課程が学生からの人気も高く、授業においてCreative Cloudは必須。三輪先生も「コースによって使うソフトや使用頻度に違いはあれど、ほとんどの授業でCreative Cloudを使用します」と説明します。

同校は、アドビのクリエイティブツールの学内利用を開始した30年前から、学校のPC教室のPCにライセンスをインストールして授業を行なっていました。しかし年を追って、クリエイティブ作業でのアドビツールの重要性が高まるにつれ、PC教室だけでは学生の制作作業のニーズを賄いきれなくなり、授業に支障が出ることもあるようになりました。

そこで出てきたのが、「学生が時間や場所の制限なく、アドビのツールを使った授業をどこでも受けられるようにしたい」というニーズです。一般教室でもツールを使う授業を受けられるようになれば、PC教室がパンクして授業や制作ができないというリスクもなくなります。

その追い風となったのが、Adobe Creative Cloudの発売でした。三輪先生は「当校にはいろいろな授業やコースがありますが、アドビを使う頻度が年々増すなか、どこでも使えるクラウドの特徴を生かしたいという思いがありました」と説明します。

しかし、学生がそれぞれPCを持ち込むスタイルにすると、環境のばらつきが生じる懸念があります。「スペックやOSがバラバラだと、アドビのツールを使う環境にも差異が生じ、授業で一斉に教えにくい状況がありえます。そこで本校では、入学時全員同じMacBook Airを持つように推奨する方法を選択しました」(三輪先生)

学校でライセンスを一括管理、学生の負荷も軽減できる学生用ライセンスパックを採用

こうして、同じノートPCを使い、個人でCreative Cloudを契約して授業に利用するようになりました。しかしPCの使い方や設定に不慣れな学生も多く、「Creative Cloudはあちこちで買えるが、どこで購入するのが一番よいか」という相談や、「インストールか方法がわからない」といった相談が、春には毎年多く寄せられていたそうです。そのため毎年、Creative CloudのライセンスをPCにインストールし、利用できる状態にするための学生向けガイダンスを実施していました。

そんな時、販売店から紹介されたのが今回の学生用ライセンスパックです。このライセンスの導入の決め手は、学校が一括でライセンスを購入し管理ができるという点でした。三輪先生は「これまでは毎年春にインストールや設定をサポートする学生ガイダンスに手がかかっていましたが、学生用ライセンスパックであれば、Admin Consoleから一括でライセンスのインストールと管理ができます。費用ももちろん魅力でした」と話します。

同校の学生には、学校からGmailのアカウントを付与しているので、このアカウントをIDとしてライセンスを割り当て管理することにしました。学生は個人でライセンスを購入したりインストールしたりする必要がなく、学校からの案内に従って自分のPCで利用開始の設定をするだけです。

「この4月は、新型コロナウイルスの影響により、学校も一時休校になりました。これまでであれば、新入生を集めてガイダンスを行っていましたが、それができなかったにも関わらず、まさに直前に契約した学生用ライセンスパックのおかげで、新入生が問題なく自分のPCでCreative Cloudを使える環境をつくることができました」と三輪先生は説明します。

全学生同一のPC環境でスムーズなオンライン授業を実現

こうして4月からオンライン授業がスタートしました。阿佐ヶ谷美術専門学校 デザイン学科 視覚デザインコース コース長の小林チエ先生は、コロナの状況下で、Creative Cloudを使う授業をオンラインで行うことについて次のように評しています。

阿佐ヶ谷美術専門学校 デザイン学科 視覚デザインコース コース長 小林チエ先生

「以前から『PC教室以外でも同じように授業ができるようにしたい』と考えていろいろ取り組みをしていたこともあり、授業を受ける場が学生の自宅にまで広がった、というイメージです。インターネット環境の整備など、通信インフラの問題で若干サポートもしましたが、基本的に大きな問題はありませんでした」

もちろん、「大きな問題はなかった」といっても、そこは同校なりの工夫があります。視覚デザインコースは、IllustratorやPhotoshopのほか、印刷物を制作するタイポグラフィに力を入れており、Creative CloudのDTPソフト・InDesignの利用頻度が高い課程となっています。学生が自宅でノートPCから授業を受ける場合、PCのスペックや画面の大きさの点で、講師が行う細かいオペレーション操作を画面で見ながらInDesignを動かすことが難しかったのですが、「オペレーションの操作を動画で撮影し、普段は使わない動画編集ソフトのAdobe Premiere Rushを使って加工して復習用に配布することで、授業の負担を減らしました」と小林先生は説明します。「普段は動画編集ソフトを使うことがないのですが、直感的に操作できました。Creative Cloudに同梱されていて、本当に良かったと思います」(小林先生)

さらに、学生からの思いがけない評価の声もありました。「数十人が一斉に教室で受ける授業と異なり、オンラインでは1対1で指導をうける感覚になり、集中力が高まるそうです」(小林先生)

オンライン授業は今後も継続、今後のCreative Cloudの進化にも期待

阿佐ヶ谷美術専門学校は今後も、時代のニーズに応えつつ、映像を含めたAR関連の授業や、クリエイター向けの発信力強化につながる授業を展開していく考えです。

小林先生は、「最近は若いクリエイターも、企業に属すだけでなく、自分でクリエイティブ能力を駆使して発信し、社会に貢献するようになっています。Withコロナでそうした活動がさらに進むと考えられますので、表現力や発信力をさらに高めるため、Creative Cloudを一層活用したいと考えています」と話します。

また三輪先生は、「クラウド経由で1つの作品を複数で制作するケースが増えると思うので、まだ使いこなせていないCreative Cloudの共同レビュー機能や作業オペレーションについて、授業でも充実させていきたいと考えています」と述べています。「いずれにせよ、対面授業と併せてオンライン授業も継続していきたいと考えているので、Creative Cloudにも、そういった方向に適した機能が拡充されていくことを期待しています」(三輪先生)