オンライン授業へのスムーズな移行を可能にしたCreative Cloud「学生オプション」契約 〜東京電機大学〜
万全のBCP(事業継続計画)が奏功した新学期
1907年、東京・神田に創立された電機学校を前身とする長い伝統ある東京電機大学。現在は理系の総合大学として、最先端技術の教育・研究活動を幅広く展開しています。特に、創立以来掲げている「実学尊重」の理念は、現在もしっかりと引き継がれており、近年はAI/人工知能の研究や、産官学連携によるサイバーセキュリティへの取り組み、デザイン工学の強化など、時代に応じて社会ニーズの高い分野にいち早く対応し、人材育成や研究に勤しんでいます。
東京電機大学が、「2020年度前期開講予定の全授業をインターネット経由での実施に切り替える」と発表したのは、2020年4月20日のことでした。そして同年5月7日からオンライン授業等をスタート。全学部全学科の通常授業はもちろんのこと、Adobe Creative Cloudのアプリケーションを利用する授業も、キャンパスで行ってきた例年の授業と比べても全く遜色なく開始できたとのことです。このようにスムーズにオンライン授業に移行できた背景について、東京電機大学 総合メディアセンター 高橋陽子氏は次のように説明します。
「当大学では数年前から、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の検討を進めており、その一環としてちょうど今年の3月にAdobe Creative Cloud包括契約学生オプションを締結したばかりでした。先手を打って備えていたことが、結果的に、今回の新型コロナウイルス感染拡大のような誰も予測できなかった危機においても、学生の学びをとめることなく、ほとんど支障が出ない形でオンライン授業を開講することができました」
「どこでも授業」を支えるBYODファースト戦略
高橋氏によると、東京電機大学の情報戦略において、「どこでも授業が受けられる」というBCPの構想を描き始めたのは2018年のことでした。その背景には、時代に先駆けて開始した「BYODファースト戦略」がありました。
総合メディアセンター 米村修氏は、「学生は入学時に、自分の所属する学部学科が指定するスペックのノートPCを用意することになっています。学校に来る時には、文房具を持ち歩くようにそのノートPCを持って来ることがすでに当たり前になっていました。今はこうした取り組みをBYOD(Bring Your Own Device:個人保有のデバイスをオフィスなどに持ち込むこと)と呼びますが、大学での学生PC必携化の議論が盛んになる前から本学ではこの方式での授業を開始していました」と説明します。
2019年にはこうした状況を踏まえ、「ノートPCの有効活用」「学生のICTリテラシーのさらなる向上」を目指し、情報戦略として「BYODファースト」を立案しました。これにより、学内のPC教室だけでPCを活用した授業を行う形式から、BYODを前提としてあらゆる授業でPCを使うことが当たり前である状態へと段階的な移行を目指していく方針が決定。高橋氏はこれを機に、以前から構想していたBCPも合わせて推進をしていきました。
「BYODファーストの下、自分のPCをより活用することで、『どこでも授業』が可能になれば、教員が出張や学会参加で物理的に学内にいなくても、授業が行えるようになります。また台風など自然災害による休講も、学生が自宅で授業を受けられる環境があれば、休講にしなくて済むというメリットがあります。自宅にいながら、あたかも学内の環境と同じ状態を学生のノートPCに再現できれば、『授業や研究活動の継続性を担保できるのではないか』と考えました」(高橋氏)。
包括契約学生オプションで学生のクリエイティブスキル向上を支援
東京電機大学において、2015年以降、大学資産の全PCで利用できるようになっていたのが、Creative Cloudでした。それ以前は端末ごとにアドビのソフトウェアのライセンスを購入していましたが、「大学が保有するすべてのPCで、誰もがCreative Cloudを使えるようにしたい」と考え、教育機関向けの包括ライセンス契約を締結したのです。その目的は2つありました。
1つは、学生のITスキルの向上です。これについて米村氏は、「従来からある文書作成や表計算などのオフィスツールを使いこなすスキルに留まらず、一歩進んで、Creative Cloudのようなクリエイティブツールのスキルをしっかり身に付けてもらいたいという狙いがありました」と説明します。そのため大手企業におけるCreative Cloudの利用率に基づき、「Creative Cloudのスキルを身に付けることが、就職時のアピールポイントになる」と確信して包括ライセンス契約に踏み切りました。
もう1つは、質の高い成果物やレポートを学内外で発表するため。高橋氏によると、学年が上がるにつれ、レポートや研究発表の機会が増え、Creative Cloudを使用する学生が増えるといいます。「1〜2年生もそのような活動を見て、『こういうツールを使えば、高品質できちんとしたレポートを提出したり、研究発表をしたりできる』という意識が芽生えますし、研究においてアドビツールを活用する価値を、今後も学生に伝えていきたいと思っています」(高橋氏)。
こうして包括ライセンス契約により、学内では自由にCreative Cloudが使える環境が整ったものの、高橋氏はさらに先を見越して「学生のPCにもライセンスを」という思いを抱いていました。学校のPCを使うことによる場所や時間の制約なく、学生が自分のPCでいつでもクリエイティブツールにアクセスして、自身のスキルを高めることができるからです。
そして2019年、「BYODファースト戦略」の一環として念願の学生のPC環境の整備・強化に着手。オフィスツールだけでなくCreative Cloudも学修の必須ソフトと位置付け、学生個人のPCにCreative Cloudをインストールできる「学生オプション契約」を追加した契約を2020年3月に締結しました。
学生の多様な活躍のために
学生オプションの運用準備が整って初めて迎えた新学期。思いもよらないコロナ禍で、オンライン授業への移行のために大学をあげて大車輪で準備が進んでいました。
そのような状況下で、Creative Cloudの学生PCへのライセンス付与は、まず、学内の認証システムとアドビのAdmin Console(管理用ポータル)を連携させ、学生個人のPCにダウンロードできるように設定しました。次に総合メディアセンターのWebサイトで「学生オプション開始」の通知を行い、インストール手順を示した文書と動画マニュアルを公開したところ、「インストールも簡単なので、使い方の問い合わせはほとんどありませんでした」(米村氏)といいます。
なお学生オプションの開始を通知した際、SNS上では、喜びのコメントが次々と投稿されました。「以前から、総合メディアセンターでAdobe Illustratorなどの活用ガイダンスを行うと、参加者が非常に多い上に、『自分のPCにインストールできるようにして欲しい』という要望がたくさん寄せられていました」と高橋氏は話します。
学生オプション開始後にアドビと共同で開催したオンラインセミナーにも、さらにこれまでの記録を更新する参加がありました。それほど学生からのアドビのツールを使いこなせるようになりたいというニーズは高く、さらに教員側からも、「学生オプションが可能なら、オンライン授業で使いたい」という問い合わせが寄せられ、コロナ禍でありながらも授業の内容も一層充実したものになりました。
東京電機大学では、今後、全学的に学びの機会を広げるために、Creative Cloudを用いたデジタルクリエイティブ基礎講座などの開講を検討したいと考えているとのこと。高橋氏は「最終的には学内の人材でCreative Cloudの活用を教えられるように体制を整え、東京電機大学の学生全員が、学修や研究において一歩進んだデジタルリテラシー、クリエイティブスキルを身に付け、将来社会で活躍する人材になることを目指しています。」と語り、「今後も学生の学ぶ環境やスキルアップ向上を支えていきます」と話しています。