物語の瞬間を切り取る。フォトグラファー・酒井貴弘氏が生み出す「シーンをイメージできる」作品と、ビジュアルトレンドの解釈 #AdobeStock

連載

Adobe Stockで作品を販売しよう!

Adobe Stockに作品を提供する、人気フォトグラファー達がおくるブログシリーズ。写真撮影における心構えやポイントを各フォトグラファーが独自の視点で語ります。今回は、透明感のある作品で被写体の自然な表情を映し出し、Instagramでフォロワー数12万人(2020年9月時点)を誇る、フォトグラファーの酒井貴弘さん(@sakaitakahiro_)にお話をお聞きしました。30歳で写真業界にキャリアチェンジした理由、被写体から自然な表情を引き出すために心がけていること、Adobe Stockの活用法について語ります。Adobe Stockのビジュアルトレンドの撮り下ろし作品もご紹介します!

はじめに

ポートレートを主に撮影している、フォトグラファーの酒井貴弘です。本格的に写真を撮りはじめたのは、4年ほど前から。一眼レフカメラで撮影した動画が好きで、映像制作のために一眼レフカメラを購入したのがきっかけです。当時はデザイン会社勤務で、制作に使える時間が限られていたこともあり、映像に比べて短時間で次々に作品を生み出せる写真に、次第にのめりこんでいきました。

30歳で写真業界へキャリアチェンジ。写真は「一生続けられる」こと

平日はデザインの仕事、休日は趣味として写真を撮る生活を続けていましたが、写真スタジオに勤務する友人からの勧めもあり、30歳の時に写真館に就職しました。全く違う業界で、1からのスタートでしたが、不安よりもワクワクする感覚の方が大きかったですね。大袈裟かもしれませんが、「もし、自分が余命1年だったら会社は辞めるけれど、写真は撮るだろうな」と考えて、「自分が本当に好きなこと、やりたいことを仕事にしたい」と思って踏み切りました。

Instagramのフォロワー数12万人。SNSへの作品投稿を足がかりにフォトグラファーの道を歩む

写真館に勤めはじめた時点では、どのように写真の仕事をしていくのか決めていませんでした。地元の長野で写真館のような仕事をするか、個人のフォトグラファーになるのか、勤めながら1年ほど模索していくうちに、個人で撮影していきたい気持ちが強くなっていきました。

ただ、個人のフォトグラファーの道を考えはじめたのが、ちょうど家庭を持つタイミングでもあり、すぐに写真事務所やスタジオへの転職をするのは難しいとも感じていて。個人で活動する可能性を探るためにも、SNSに作品の投稿をはじめたんです。

Instagramは3年前から投稿をはじめ、現在のフォロワー数は12万人になります。もちろん、最初はフォロワー数ゼロからのスタート。写真館の仕事を続けながら、休日に撮影した作品を、毎日、朝と夕方に投稿していたところ、1年間でフォロワー数が1万人を超えていました。

桜と女性

今はSNSに関連したWebの仕事が多いですが、今後は紙媒体など、ほかのメディアの仕事も増やしていきたいですね。

Adobe Stockに投稿するなら「シーンをイメージできる」作品を

Adobe Stockへの投稿歴は2年ほどになりますが、作品を投稿する場合は、その作品を目にしたときに、作品の背景にあるストーリーや流れている時間、前後の動きが感じられるなど、**「シーンをイメージできる」**ことが大切だと考えています。

情報量を詰め込みすぎると、「いかにも素材」という、説明的な写真になりがちに。情報が多いだけでなく、見たときに「パッと目を引き、感情に訴えかけられる」ことができると、「説明」ではなく、「表現」をする作品になるのではないでしょうか。

また、Adobe Stockのメリットは一度投稿しておけば、自分自身が活動できない場合でも、収入になるところですね。コロナのような状況がまた起こるのかはわかりませんが、投稿できない期間にも過去の作品が売れたりするので、撮影できない期間でも収入になりえるのが魅力です。

Adobe Stockのビジュアルトレンド「Makeup is Not a Mask」の解釈

今回、Adobe Stockの2020年のビジュアルトレンドである「Make Up is not a Mask(メイクアップはマスクではない)」をテーマに、作品を撮り下ろしました。自分なりにテーマの解釈を行い、モデルさんのパーソナルな部分にフォーカスして、「自分を隠す」メイクではなく、「自分を認めるため」のメイク」であり、「その人らしさを輝かせ、肯定して前に進める」きっかけとなることをめざしています。

モデルさん選びでも、テーマを紹介した上で、応募の動機など、パーソナルな部分を記載してもらっています。その中で「きっかけが欲しい人」と「コンプレックスと向き合う人」というテーマで撮影しましたが、お二人とも新しい自分に気づけたようで、撮影後の写真を見て喜んでいただけました。

「大学を卒業し、モデル活動をしていく中で自信を持つきっかけがほしい」という理由で応募されてきたモデルさんです。「モデルさん本人で、表現すること」を伝えたいと考え、「きっかけが欲しい人」として撮影しました。ヘアメイクさんとも相談し、可能性を感じてもらえるよう、オレンジのアイシャドーが印象的な「表現としてのメイク」をしています。

メイクをした日本人女性

メイクをした日本人女性

モデルコメント「酒井さんのレンズを通すことで、自分がどのように見えているのかが客観的に分析できるのではないかと思い、応募しました。撮影後、自分にこういう表情ができるのかと驚きましたし、もっと出せる表現や表情があるのではないかと、自分に対してとてもワクワクした気持ちになりました」

メイクをした日本人女性

メイクをした日本人女性

「普段はコンプレックスを隠すために、強いメイクをしている」というモデルさんですが、薄いメイクの写真を見せてもらったところ、そちらもとても似合っていたので、自信を持ってもらうために、「引き算のメイク」として、薄く自然なメイクを提案し、「コンプレックスと向き合う人」として撮影しました。

モデルコメント「自己肯定感を保ちたいという理由で被写体活動をしていますが、どうしても顔や身体にコンプレックスがあります。自分がモデルとして立った時は緊張しましたが、自分の存在が認められたようで自信がつきました」

モデルの魅力を引き出し、自然な表情をとらえる。世界観を構築するために心がけていること

カメラを向けると、モデルさんの表情や動きが固くなることもあります。美しさや魅力を引き出すためにも、安心して表現できる雰囲気作りを意識しています。会話の中でも、撮影中にモデルさんの魅力を見つけて「今の表情がいい」「それぐらい素の状態がいいよ」と声をかけるなど、モデルさんを肯定することで、表情やポージングなどでも、自信を持って表現をしてもらうように心がけています。

それから、作品でイメージする世界観を作り上げるために、ファインダーの中にはは求める構成要素だけが入っていることも重要です。意図しないものが構図の中に入っていると、表現したいものが伝わりにくくなるので、ファインダーを覗いた時に世界観に沿っているかどうかは常に気にしています。

Adobe Stockのビジュアルトレンドは、新しい発想を得るきっかけになる

「Make Up is not a Mask」は、普段の作品作りでは設定しないテーマで、私自身にとってもチャレンジになりました。普段はモデルさんに個人的なことを聞くことはないので、内面性に目を向けたアプローチをするのも挑戦でしたし、このテーマだからこそ、踏み込んでいけた部分があると思います。SNSでのモデル募集でも、普段よりかなり応募が多かったので、みなさんにとって関心の高いテーマなのかもしれません。

今回、撮影したほかにも、2020年のAdobe Stockのビジュアルトレンドには「All Ages Welcome(世代を超えたつながり)」というテーマがありますが、シニア世代を撮影する機会が少ないので、こちらもとても面白いテーマだと感じています。

こうしたテーマがあると、いつものスタイルから抜け出して刺激を受け、自分の中にはない発想が生まれ、新しいことに挑戦するきっかけにもなります。フォトグラファーが挑戦として、Adobe Stockのビジュアルトレンドをテーマに撮影するのは、とてもよい活用方法なのではないでしょうか。

いかがでしたでしょうか?Adobe Stockへの作品投稿には、18歳以上の方で、ご本人が販売する権利を所有する作品をお持ちの方が対象となります。詳しくはこちらを御覧ください。皆さんのすてきな作品をお待ちしております。

【プロフィール】

酒井貴弘(@sakaitakahiro_)

長野県生まれ。東京在住のフォトグラファー。主にポートレートを得意とし、広告写真や企業案件、ポートレート撮影などの撮影案件をはじめ、雑誌掲載やWEBメディアでの執筆、写真教室やプリセットのプロデュースなど、幅広く写真活動を行っている。SNSでは総フォロワー12万人を超えるなど、SNSでの強みも持つ。

https://www.sakaitakahiro.com/

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