デスクトップ版IllustratorユーザーのためのIllustrator iPad版 攻略(3)デスクトップユーザーが感じる疑問、まとめて解決します《後編》
デスクトップ版IllustratorユーザーのためのIllustrator iPad版 攻略
前回に続き、Illustrator iPad版でデスクトップ版のIllustratorユーザーが感じる疑問を取り上げます(イラスト協力:宇佐美由里子)。
テキスト
「その壮大なプロジェクトは」って!?
iPad版では、アートボード上で文字ツールをタップすると「その壮大なプロジェクトは」と挿入されます。
デスクトップ版のIllustratorの「山路を登りながら」は環境設定でオフにできますが、iPad版のIllustratorでは次の3つから選択するようになっています。
- サンプルテキスト:「その壮大なプロジェクトは」
- 文字数え:「□□□□○□□□□●」
- Lorem Ipsum:「Lorem Ipsum」
ポイント文字(クリック)、エリア内文字(ドラッグ)で挿入されるサンプルテキストは次のとおりです。
カーニングのやり方がわからない
option + ←/→によるカーニングはできません。次の手順で行います。
- カーニングしたい箇所にカーソルを立てる
- [プロパティ]パネルの[カーニング]のVAの値フィールドから左右にスワイプする
次の方法は、トラッキングによる調整になるため、(デスクトップ版との整合性を考えると)あまり好ましくありません。
- ツメたい箇所の文字を選択する
- 共通アクションのトラッキングを左右にスワイプ
なお、「メトリクス」カーニングを指定すると、自動的に[プロポーショナルメトリクス]がオンになります。
オプティカルカーニングはないの?
Illustrator iPad版で設定することはできません。しかしながら、デスクトップ版で設定した「オプティカルカーニング」は、iPad版で開いても保持されます。
ただし、変更するとドキュメント内のほかのテキストで使っていても「オプティカル」を選択できません。
iPad版のIllustratorでも、「オプティカル」カーニングを適用できるようになることを望みます!
縦書き用の文字ツールがあることはわかったけど、後から変更できるの? 縦中横は?
- 縦組み:できます
- 縦中横:できます
- 縦組み中の文字回転:できます
iPad版のIllustratorには、[文字]パネルや[段落]パネルがありませんので、[プロパティ]パネルにて行います。
ポイント文字/エリア内文字の切り替えも[プロパティ]パネルにて行います。
iPad版ならでは使い方
全体表示
2本指で素早くピンチ(イン)するとアートボードの全体表示になります。複数のアートボードがある場合には、アクティブなアートボードが対象です。
画面上部をスクラブ(一本指で左右に移動)して拡大・縮小するのもiPadらしい操作方法です。
Apple Pencilをダブルタップ(1)ペン上
第二世代のApple Pencilで、ペン上をダブルタップしたときのアクションを環境設定で設定できます。
デフォルトは「アクションなし」、オススメは「オブジェクトやパスを選択解除」です。ペンツールで描画を終了したいときにも重宝します。
なお、第一世代のApple Pencilを接続していても、このオプションは非表示になりません。もちろん、変更しても何も起こりません。
Apple Pencilをダブルタップ(2)カンバス上
カンバス上でダブルタップすると、クリップボード内の内容がペーストされます。
Illustrator内だけでなく、iPad全体のクリップボードが対象です。ユニバーサルクリップボードを使っているとき、Macでコピーしたものがクリップボードに入っていることもあるので注意しましょう。
なお、カンバス上でダブルタップしたときの挙動は、今のところ変更することはできません。
共通アクションの[移動]って、どんなときに使うの?
オブジェクトをドラッグすると、バウンディングボックスごと変更してしまうことがあります。
特に小さいオブジェクト、小さく表示しているとき、共通アクションの[移動]を使えば、バウンディングボックスによる変形を避けることができます。
移動の際には、プライマリタッチショートによる移動の制限(水平・垂直)、セカンダリタッチショートによる複製も可能です。
ロックとロック解除
共通アクションの[ロック]をタップすると、アートワークの左上にロックアイコンが表示されます。このロックアイコンをタップするとロック解除されます。
実は、カンバス上のロックは、デスクトップ版のIllustrator(24.3、2020年8月リリース)でも搭載されています。
デフォルトはオフになっていますので、環境設定でオンにすると使うことができます。
シェイプを選択して配置するとマスクされる
iPad版のIllustratorでは、シェイプを選択している状態で写真などを配置([読み込み])すると、そのシェイプでマスクされます。
これはデスクトップ版のIllustratorにも欲しい機能ですね。
ワークスペースの最適化。
最後にワークスペースの最適化について考えます。
デフォルトでは、次のようになっています。
- 左端にツールバー
- 右端にタスクバー
- 上部にナビゲーションバー
ツールバーとタスクバーの位置は交換できます。
実際には、パネル類を切り替えて使いますが、このパネルアイコンをよく見ると3つ目と4つ目の間に区切り線があります。
上の3つは全面表示、それ以降のものは、オーバーレイするようになっています。
パネル類の開閉を左手で行うことを前提に、ワークスペースを工夫する一例です。
- 右端にツールバー
- 左端にタスクバー
- 上部にナビゲーションバー
- [レイヤー]パネル、または、[プロパティ]パネルは開いたまま
- 必要に応じて4つ目以降のパネルを表示
- [カラー]パネルは独立させてフローティングしたまま
キーボードショートカットは使える?
Magic Keyboardなど、キーボードを接続しているとき、デスクトップ版と同様の次のキーボードショートカットを使えます。
次のキーボードショートカットは使えません。
また、commandキーを押している間、次のツールを除き、[選択ツール]に切り替わります。
- ペンツール
- 鉛筆ツール
- 塗りブラシツール
言い方を変えると、[ペンツール]、[鉛筆ツール]、[塗りブラシツール]を選択しているときに、commandキーを押したままにすると[ダイレクト選択ツール]に切り替わります。
互換性
今のところ、下記の点に留意しておきましょう。
- リピート機能はiPad版のIllustratorのみ。デスクトップ版で開いても崩れないが、編集してしまうと、iPad版のIllustratorでのリピート機能は使えない
- アピアランス機能、ブラシ、可変線幅はデスクトップ版のみの機能。iPad版のIllustratorで開いても(基本的に)崩れないが、編集すると崩れてしまうことがある
デスクトップ、iPad、それぞれのバージョンだけの機能は、共有時に注意と覚えておきましょう。
まとめ
10月21日にリリースされてから3週間。聞こえてくる声を挙げてみますと…
- デスクに戻らずに、出先でIllustratorが使える!
- ベジェ曲線に苦手意識があったが、これならできそう
- リピート機能が楽しい!!
新しいIllustratorの魅力を引き出してみてください!