書体をデザイントレンドで考える #AdobeStock

言葉は意味を運ぶだけではありません。言葉を形成する文字の形もメッセージの受け止め方に影響を与えます。つまり、書体は言葉の印象を左右する重要な視覚的要素なのです。

クリエイターにとって、フォント選びは全体の外観を整えるために欠かせない重要な作業です。間違った書体を使用することは、タキシードにビーチサンダルで結婚式に出席するようなもの。それがドレスコードでもない限り、場違いな印象を与えてしまいます。

年初に、Adobe Stockは今年のデザイントレンドである「手書きのヒューマニズム」、「セミシュルリアル」、「アールデコの更新」、「モダンゴシック」にぴったりの厳選フォントをそれぞれ3つ公開しました(もちろん流行のフォントもいくつか含まれます)。

重要なのは、どのフォントがビーチサンダル調で、どのフォントがタキシード調なのかを知ることです。しかし、そもそもフォントはどのように(さらに言えば、なぜ)特定の雰囲気を形成するのでしょうか?以下のデザイントレンドでお勧めするマッチングフォントをご紹介します。

■手書きの温かさ

手書きフォントが登場したのは、ときに無機質な印象のある幾何学的なフォントやテクノロジー風フォントへの反動であり、コンピューター上の文字に人間味を加えるためです。手書きフォントにはプロのグラフィックと素人風のデザインの要素が両方取り入れられており、現在では、自然な字体や手書きの書体で知られるフォントメーカーも多数あります。Tart WorkshopLaura Worthington TypeLiebeFontsG-TypeResistenzaなどがその例です。

書体例

Tart Workshopの**Chelsea Market**は、幾何学的なサンシェリフと手書き感が絶妙に組み合わさったフォントです。Crystal Kluge氏は、FuturaCentury Gothicなどの書体に見られる典型的な字形を研究し、細いマーカーペンで文字の形をゆるくなぞって独自の解釈を表現しました。それによって、開放的な無地の文字に、ひねりの効いた自由なニュアンスが加わりました。

クレジット:Adobe Stock/Tanya Syrytsyna

Alejandro Paul氏は、ベテランのウェディングカリグラファーであるKathy Milici氏と組んで**Gratitude Script**をデザインしました。Milici氏のスタイルは、情熱的な筆致と極めて装飾的な飾り書きが特徴です。氏は伝統に根ざしながらも、現代的な解釈を加えた華やかなフォントを作成しました。カジュアルで個性が光り、エレガントでありながら、様々な用途に使える文字です。省スペースの縦型スタイルは1行に多くの単語が収まり、それでいて大きなサイズでも読みやすいスタイルだといえるでしょう。

クレジット:Adobe Stock/Nadezda Grapes

supertypeの**Scarlet Wood**は、デジタルの文字にリアルな躍動感を持たせた書体です。この書体は、Scarlet(楽しげな雰囲気と上部の大きさが特徴のカジュアルなサンセリフ)とScarlet Script(丸みを帯びた太字の筆記体)をベースにしつつ、そこに手触り感を加えたものです。Jürgen Huber氏はScarlet Boldと幅の異なる2種類のScarlet Script(MediumとBlack)を使い、文字に木目を加えました。そのテクスチャはリアルな美しい木版刷りを思わせます。

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■セミシュルリアル

書体デザインの業界では、装飾的フォント、3Dフォント、サイケデリック風フォントの人気が再燃しています。OpenTypeとバリアブルフォントのテクノロジーにより、文字のレイヤー、色付け、形状変更をはじめ、好みに合わせた文字のカスタマイズがこれまで以上に簡単になりました。複雑でカラフルなデザインのフォントもますます入手しやすくなっています。

書体例

**Rig Solid Zero**は、何重にも重ねることができるRig ShadedJamie Clarke氏による受賞歴のあるフォントスイート)と同系列の構成済みフォントです。エネルギッシュな3Dフォントが、アートとデザインをよりダイナミックに仕上げています。すっきりした見栄えで「伸縮自在」、幾何学的デザインの大文字フォント。無地で傾斜のついたシェードが施されており、それぞれの文字は鮮明で調和の取れたデザインになっています。Bold Soloはシェードのないスタイルで、単独の文字として使用することも、シェード付きスタイルの後ろに重ねてマルチカラーのタイポグラフィを作成することもできます。

Device FontsRian Hughes氏は、書体デザイン界のアンディ・ウォーホルです。氏は非凡な才能の持ち主で、独創性が高く、意外性に溢れた書体を作成しています。その書体は見慣れた雰囲気とおなじみのトレンドを連想させながらも、ポップカルチャーや歴史を引き合いに出して、見る側に結び付けます。**Bubblegum Pop**はファンキーなバルーン型の書体で、Highlight、Shadow、Vanillaの3つの異なる形があり、どれもレトロなロゴ、キャンディの包み、コミックを彷彿とさせます。

Flegrei RegularThe Tipoteca Seriesに含まれているフォントです。The Tipoteca Seriesは、Ulrike Rausch氏がイタリアのコルヌーダにあるTipoteca Italianaという人気の活版印刷博物館の膨大な木版文字コレクションで見つけ出し、復元した3つの書体のこと。定規とコンパスで構築されたFlegreiでは、フォントが幾何学的に表現されています。字形は三角形、正方形、円に集約され、ヘアラインと太字のクロスバーで文字を区別しています。

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■アールデコの更新

ファッションと同じように、一部のタイポグラフィにもトレンドの周期があります。2020年代に入った今、狂騒の1920年代のスタイルにインスパイアされたデザイン要素を目にするようになってきました。1世紀前に手描きの広告ポスターに使われていた建築物用の大文字書体が復活。ヴィンテージのパッケージを彷彿とさせる装飾用のアルファベットや、趣のあるセリフ書体の人気も再燃しています。「失われた」クラシックデザインを忠実に再現するデザイナーもいれば、典型的なアールデコ調から独自のスタイルを作り、今風の使い方をするデザイナーもいます。

Jean-Baptiste Levée氏によるリバイバルは、A.M. Cassandreの書体、**Acier BAT**をデジタル形式にした先駆けです。デュアルカラーディスプレイの書体は幾何学的なサンセリフの構造をしており、無地とデュアルトーンのバリエーションがあります。大文字のみのアルファベットには、機能主義の装飾アート、デザイン、建築の影響が取り込まれており、都会的なデザインに彩を添えています。主に出版や新聞での使用を目的としていましたが、ポスター、本のカバー、パッケージングにも適したフォントです。

イメージ提供:Adobe Stock/TBC

supertypeの独創的な**Cy**は、Paul Renner氏の画期的なFutura原画に匹敵する高い創作性に満ちています。Jürgen Huber氏は幾何学的なサンセリフに、クリエイティブな正方形と円形を何度も交互に重ねました。OpenTypeの機能により、Cyのテキストセット全体に意図していない形が点在していますが、自動化機能を使用するか手動で設定することによって表示の有無をコントロールすることができます。

クレジット:Adobe Stock/Polar Vectors

太い線と細い線のコントラストがドラマチックなTypeTogetherの**Fino Sans**は、高級ファッション、香水、高級品、高級雑誌、ガライベントなどを彷彿とさせる魅力的な書体です。Ermin Međedović氏が描く堂々とした縦長の大文字では、標準的で細い楕円系の文字に用いられる曲線のバリエーションが多くの支持を集めています。追加の代替形式と合字の膨大なスイートを活用すれば、見出し用書体の劇的な効果を最大限に発揮することができます。セリフのないDidoneには2種類の光学サイズがあるため、短いテキストのみならず壮大な作品のタイトルや見出しにも最適です。

アールデコファンにおすすめの風格あるその他のフォント:

■モダンゴシック

ゴシック体は別名_ドイツ字体_、_ブロークンスクリプト_とも呼ばれ、最近では人気が再燃しています。ゴシック体は信頼性、名誉、力強さを特徴とする一方で、歴史的に負の意味合いも背負っていました。しかし、今ではそのイメージはスタイリッシュな反骨精神に置き換わっています。このような変化が特に顕著なのが音楽業界で、90年代のギャングスタラップから2000年代の主流R&Bでドイツ字体のフォントが使用されたことによります。現在では新しいゴシックフォントが現代の典型的なフォントとして再構成され、多くのフォントメーカーのカタログに入っています。

書体例

**Leather**はCanada Typeが開発したフォント。1933年にImre Reinerがデザインし、秀逸でありながらも忘れられてしまったフォント、Gotikaをデジタル化し大幅に拡張したものです。時代に先駆けたデザインで、ドイツ字体には通常みられない極めてモダンな特徴を備えています。グリッドベースの幾何学的な直線と曲線、繊細なBodoni風セリフ、シンプルで幾何学的な内側の線が生み出すパターンは、さながら電気回路のようです。

Canada Typeが開発した**Alexander Quill**は、従来の金属活字をデジタル化したフォントです。1980年代初頭に、Jim Rimmer氏が所有するPie Tree Pressで限定版の本を植字および印刷するため、14ポイントの活字鋳造用に描かれたのが始まりです。シンプルで八角形のような形をした文字には、伝統的なカリグラフィーの緊張感があり、読みやすく読書に向いています。

クレジット:Adobe Stock/Wavebreak Media

**Fakir**は前の時代のリバイバルではなく、21世紀のまったく新しいドイツ字体です。Underwareは歴史的なブロークンスクリプトに倣うのではなく、パワフルで明確、読みやすい字体をゼロから作成することを選択しました。このフォントファミリーにはユニークな特徴があり、長文テキスト用に小さなサイズでデザインされたフォントのバリエーションと、イタリック体のフォントおよびスモールキャップスのフォントも付属しています。刺激的なディスプレイスタイルはエッジの効いた形が際立っており、非常に目立ちます。タイポグラフィツールボックスにこれらのフォントを追加して、時代の先を行き、今年のデザイントレンドをキャッチしましょう。もちろん、Adobe CreativeCloudサブスクリプションではいつでもお好きやフォントを有効化できます。

その他のおすすめゴシックフォント:

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この記事は2020年10月29日にYves Petersにより作成&公開されたPutting a (type)face on design trendsの抄訳です。

ヘッダー写真:Yves Peters