ao「フリーなのに多彩な表現力。味方につけると心強いAdobe Fresco」 Adobe Fresco Creative Relay 10

by Takashi Iwamoto

Posted on 12-17-2020

連載

Adobe Fresco Creative Relay

アドビではいま、Twitter上でAdobe Frescoを使ったイラストを募集しています。応募はかんたん、月ごとに変わるテーマをもとに、Adobe Frescoで描いたイラストやアートをハッシュタグをつけて投稿するだけです。
12月のテーマは「プレゼント」。
この季節のプレゼントと言えば、クリスマスを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。サンタクロースが届けるプレゼント、プレゼントを楽しみに待つ子どもたち、プレゼントを選ぶ人たち……みなさんが思い描く“プレゼント”をAdobe Frescoで描いて、 #AdobeFresco #プレゼント をつけてTwitterに投稿しましょう。
そして、この企画に連動したAdobe Frescoクリエイターのインタビュー「Adobe Fresco Creative Relay」、第10回はイラストレーターのaoさんにご登場いただきました。

季節を届けるショーウィンドウ。模様替えをしているのは…?

「“プレゼント”というテーマをいただいたとき、渡すシーンや開けるシーンも考えたのですが、もう少し違う角度から描けないかなと悩んでしまって。なかなかアイデアが出てこなくて……ヒントを求めて外に出たんです。
そのとき目にした夜の街並みは、イルミネーションやきれいなショーウィンドウの光でキラキラしていて、それがとてもいまの季節らしく感じられて……ここになにか物語をのせられないかなと思ったのが、この絵を描こうと思ったきっかけです」

ショーウィンドウに目を奪われる小さな男の子と、ウィンドウ内のクマとペンギン。
この男の子は、ペンギンのぬいぐるみがプレゼントで欲しいのかな……と思いきや、そうではありません。
“プレゼント”をテーマに描かれた「秘密だよ」というタイトルのこの絵には、aoさんらしい壮大なストーリーが詰め込まれていました。

「プレゼント、子ども、おもちゃ、ぬいぐるみというような、ヒントになりそうなキーワードを書き出して、考えを整理していきました。
小さなころに読んだ、クマのぬいぐるみが夜のデバートで失くなったボタンを探す『くまのコールテンくん』という絵本、一夜のうちに切り替わっているショーウィンドウを不思議に思った記憶……。そうした実体験もかけあわせて生まれたのが、“いつの間にかガラリと入れ替わっているショーウィンドウは、もしかすると、おとなには見えない生きもののしわざなのかもしれない”というストーリーでした」

ぬいぐるみはせっせと模様替えをしていて、それが見えているのは男の子だけ。
そして、子どもと目が合ったペンギンは、「おとなに話してはいけないよ」とばかりにシーッと口に指を当てているのです。

「わたしは季節の変化を追うのが好きなのですが、ショーウィンドウもそのときどきの季節感を知らせてくれます。その移り変わりを感じさせてくれることが、ほんの少しの幸せ、プレゼントなんじゃないかなと思いました。
よく見ると、いろいろな物語が散りばめられているので、キャラクターを一体一体、じっくり見てもらえたらうれしいです」

“好き”を続けて、いまに至る

aoさんが描く絵の魅力、それはどこかの世界のワンシーンを切り出したようなストーリー性。
描かれるキャラクターだけでなく、シチュエーションから背景の小物に至るまで、そのありようはごく自然です。

「雰囲気ではなく、できるだけ根拠があるものを描こうと心がけています。なんとなくそこにある、ではなくて、“これはこういう理由でここにある”という拠りどころがないと、自分で描いていてもどこか地に足がついていないというか、ウソっぽくなってしまう気がして。
思いつきで“筆が乗ったからこれも描いちゃおう”みたいな描きかたはできなくて、テーマをもとに自分のなかでひとつひとつ設定を決めて世界を構築してから描くというのが、いまのわたしのスタイルです。
だから、“前後のストーリーが見える絵”という感想をいただいたとき、とてもうれしかったのを覚えています」

膨大な設定を綿密な設計で一枚の絵に仕上げていくaoさんですが、実はイラストレーターとして本格的に活動を始めたのは2020年8月から。
それまでは趣味として描きつつも、“イラストレーターになる”ということを目指していたわけではありませんでした。

「絵を描くことが好きで、それを続けながら身を任せていたら、自然にイラストレーターになっていた……という感じです。
小学校、中学校のころは友だちとポケモンやヨッシーの絵を描いたり、マンガを作ったりしていて、高校になってからは授業で使った不透明水彩を、趣味の絵にも使うようにもなりました。
高校では生徒会執行部に所属していたのですが、学校行事パンフレットの表紙を描かせてもらう機会があって。振り返ると、これが自分が描いた絵をたくさんの人に見てもらう緊張感、達成感を知るきっかけだったんじゃないかなと思います」

“コンテンツを発信する側になりたい”

自分が描いた絵で喜んでくれる、楽しんでくれる人がいる。
そのことに気づいたaoさんですが、このときはまだ、これを仕事にしようとは考えなかったそうです。

「生徒会で行事を企画して、みんなで作り上げていくことが本当に楽しくて、このころから“コンテンツやエンターテイメントを発信する側、作る側になりたい”と思うようになりました。
そうした学びができるところとして、マスコミやデザインに特化した大学を選んだのですが、入ってみるとイラストが上手な人がたくさんいて。周りはみんなペンタブレットで描いていたこともあって、わたしもWacom Intuos 3を買って、少しずつデジタルで絵を描くようになりました」

手の動きで直接描くアナログに対して、手元の動きが間接的に画面に現れるペンタブレットでの描画。
その動きやギャップや、アナログと同じようにはできない水彩表現にとまどうこともあったaoさんですが、デジタルの表現力、可能性を見据え、意識的にデジタルに切り替えていったそうです。

「もちろん、水彩は好きなのですが、そこに強いこだわりがあったわけでもなくて。
それなら、デジタルで表現できることを学んで、アナログでやりたかったことをカバーしていくほうが、将来的にメリットが大きいと思いました。
デジタルに切り替えてからは、夜な夜ないろいろな人の絵を見ては自分なりの描きかたを勉強しました。pixivに投稿したイラストに辛辣なコメントがつくと逆に気持ちが燃えたり。“もっとうまくなりたい”……いつもそう思っていました」

就職、そして10年のブランクからの復帰

大学卒業後、aoさんはその学びを生かし、服飾雑貨の商品企画の仕事に就きます。

「仕事は生地を使ってポーチやカバン、ペンケースなどを作るというものでした。
pixivで投稿していたようなタイプのイラストをその仕事で描くことはありませんでしたが、ちょっとしたイラストを描けるというスキルはその仕事でも活かすことができました。
ものづくりをしたいという気持ちはずっと変わらなかったので、ゼロから企画をして、プリントのデザインを起こしたり、生地や飾りを提案するという仕事は楽しかったです」

会社員時代は、多忙のあまり趣味のイラストはほぼ封印状態でしたが、2018年頃から少しずつ再開。
それからは、学生時代のイラストとは異なる、ストーリー性を内包した画風に変わっていきました。

「自分ではそれほど意識していなかったのですが、明らかに絵のスタイルが変わったと感じます。
きっかけがあるとしたら、子どもが生まれたことかなと思います。自分が母親になったことで、いままでとは違うものの捉えかたができるようになったのかもしれません。
そして、何より絵を描く時間そのものが貴重になったからこそ、一枚一枚をていねいに、大切に描こう。誰かの記憶に残る絵を描こうと思うようになりました」

絵を描いているときだけは、会社員でも、母親でもない、“ao”になれる。
それは作家としての自分と濃密に向き合う時間でもありました。
そうして描いた絵を月に一度、SNSにポストしていると、これまでにはなかった大きな反響が生まれるようになりました。

「2018年11月に投稿した『星になって、君に会いに』は7万以上のいいねをいただいて。
“感情を込めて、ていねいに描いた絵は人の心を動かすことができる”ということに気づかせてくれた作品です。それから少しずつ、イラストのご依頼をいただけるようになりました」

絵が持つ力を実感した仕事

SNS経由のイラストの依頼を、副業として取り組んでいたaoさんのもとに、絵の力、可能性を感じさせる依頼が舞い込みます。
それは2019年12月に行なわれた、佐香智久さんのライブイベント「僕はずっと、少年T 。」-Birthday & Anniversary Live- のイメージビジュアルでした。

「ライブにご招待いただいたのですが、わたしの描いた絵のグッズや、イラストをもとにした舞台や衣装を目にして、人生観が変わるほど感激したんです。
それは、自分ひとりで絵を描いているときには出会えなかった、絵が、絵だけで完結していない世界でした。
そのとき、絵と音楽と組み合わせる、絵と映像と組み合わせる……そうしたお互いの得意を組み合わせながら、誰かと一緒に世界観を作り上げることの楽しさを思い出したんです」

作家・aoとしての活動が少しずつ広がりを見せる一方、仕事、育児という3つのバランスを取ることが難しくなってきたaoさんは、2020年8月、イラストレーターとしての独立を決意。
現在は広告、子ども向け書籍、イベントビジュアルやグッズデザインなどを手がけながら、少しずつその幅を広げています。

iPad Pro+Adobe Frescoで水彩に再挑戦

aoさんの制作環境はPhotoshopがメイン。
2019年にはiPad Proを導入し、徐々にその感触を確かめています。

「iPad Proを買ったのは、“これで描けたらいいなぁ”という思いと、“時代についていかなくちゃ”という気持ちが半々くらいでした。
でも、どこでも描けるこの手軽さは魅力的ですね。育児をしていると作業部屋でじっくり絵を描くということが難しいですので……」

2020年7月にTwitterに投稿した「マジカルアワー」は、aoさんが初めて、Adobe Frescoで描いた作品です。

「Adobe Frescoは、“水彩のにじみがすごい”と聞いていたので、デジタルでの水彩表現を一度諦めているわたしとしてはもう一度試してみたくなったんです。
実際使ってみたら、リアルタイムでにじんでいくことに本当にびっくりして。
有料アプリでもないのに、こんな表現ができることに感動しました。
水彩以外のブラシもひと通り試しましたが、手描き感の出かたがすごくいいです。Photoshopではできないような表現ができるものもあって、その質感を確かめていくのは楽しかったです」

今回のイラストはAdobe Frescoに搭載されたブラシだけでなく、追加のブラシもテストしたなかからセレクトされたブラシを使って描かれたそう。
冬の水彩は寒々しいかも、という理由で、温かみのあるクレヨンのようなブラシを選びました。

「絵描きとしては、Adobe Frescoにも色調補正機能がほしくなってしまうのですが、クラウドドキュメント経由でPhotoshopとすぐに連携できるので、使い慣れたPhotoshopとセットで使うことを前提に使っています。
今回のプレゼントのイラストも、“ここまではAdobe Frescoで描いて、色調補正やぼかしはPhotoshopで処理しよう”というふうに考えながら描きました。
それぞれのいいところを活かしながら作品を仕上げていく。そのとき、表現のひきだしのひとつとして、Adobe Frescoが使えるメリットは大きいと思います」

表現、手法に捉われすぎることなく、新しいツールも柔軟に使いこなしていくaoさん。
これから先、目指す方向性はどのようなものなのでしょうか。最後に聞いてみました。

「新しいことに挑戦したい気持ちは常にあるのですが、いちばんの目標は、”子どもたちの役に立つことを、絵でお手伝いできるイラストレーターになること”です。
子ども向けの本のイラストはもちろん、ワークショップもやってみたいと思っています。
同時に、ひとりの作家、aoとして描く世界観も大事にしていきたいので、仕事の絵と個人の創作、2つの活動を両立できる絵描きでありたいです。
流行りの絵は描けませんが、わたしの絵を見てくれたひとが温かい気持ちになれる、心に響く、記憶に残る……そんな絵を描き続けていきたいです」

イラストレーター
ao

web|https://aokarimero.tumblr.com
Twitter|https://twitter.com/aokarimero
Instagram|https://www.instagram.com/aokarimero/

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