AELメンバー限定のディスカッション〜Adobe Educator Day Online 2020 #アドビ教育
11月29日(日)に開催されたAdobe Educator Day Online 2020レポートの後編。
第1部のオープンなセッションにつづいて行われた第2部のAdobe Education Leader Summitでは、Adobe Education Leader(以下AEL)の先生が集いクリエイティブスキルを育てる教育についてのディスカッションと事例発表を行いました。
AELの先生限定のAdobe Education Leader Summit。ビデオ会議の背景は「アイデアがひらめく場所」をテーマに各自作成して参加
教室で育むクリエイティブスキル
第2部では3人の先生が事例を発表しました。日立工業専修学校の遠島充先生は、SDGsに関する調べ学習の中で、Adobe Sparkでウェブサイト制作と動画制作を実施。Sparkのテンプレートデザインを使って初めてでも素晴らしいウェブページが出来上がり、生徒たちの自信につながったことを紹介しました。学校の導入端末がChromebookなのでウェブブラウザから利用できるSparkが活躍しています。
生徒の作品例
相模⼥⼦⼤学中学部・⾼等部の新井啓太先生は、美術とICTを担当し、日頃はアナログな制作やフィールドに飛び出す活動に積極的です。同校ではBYODでひとり1台の端末体制がスタートし、Adobe Creative Cloudも使えるようになりました。導入としてAdobeのツールを使ってみようという時間を2時間設けたところ、生徒は自ら機能を調べた上でそれぞれ好きなツールを選び、強い好奇心と吸収力で制作を始めたそうです。
初めての2時間で各自がやりたいことに合うツールを自分で選び積極的につかった(写真はIllustrator、Animate、XD、Premiere Pro)
生徒はスマートフォンの操作に慣れているので、Frescoなどタブレット画面のタッチで描画するツールとの相性も良い様子です。新井先生は、今後GIGAスクール構想で全国的にPCの導入が進んだときに、子ども達がテンプレートを使うことに慣れて表現が均一化されることがないよう、クリエイティブな活動で崩していくことが大切ではないかと美術科の先生らしい視点で指摘しました。
聖徳学園中学・高等学校の学校改革本部長 品田健先生は、生徒には自分が表現したいことを伝えるためのツールをたくさん渡しておくという考え。今年度からアドビのツールも使用し始め、RushでPRムービーの作成、Photoshopで発表ポスター作成、Illustratorでレーザーカッター用デザインデータ作成など様々な用途で活用した例を紹介しました。
生徒のポスター作品例
品田先生は、生徒の「もっとやりたい!」という気持ちに応え創造性に火をつけることはできても、先生の創造性の方が課題だと感じています。原因として学校が多忙であることをあげ、クリエイティビティには「余白」や「あそび」が必要であり、それが学校現場に圧倒的に欠けていることを指摘しました。
グループディスカッション「理想のクリエイティブな教育とは?」
グループディスカッションでは5つのグループに分かれて「理想のクリエイティブな教育とは?」について話し合いました。事例発表で指摘されたポイント以外にも現場での実感がさまざまに交わされます。
「生徒たちは表現したい気持ちを持っているので型にはめずに邪魔をしないことが大切」と自由を担保する大切さと同時に、「テンプレートが必要な子もいて、真似から入っても構わない」「共同作業や外部へ発表する機会が重要」と、模倣や他者とのつながりの中でクリエイティビティが培われていくことが共有されました。
また、「教師の役割は、やり方を細かく教えるのではなく、生徒が主体的にやりたいと思う気持ちを引き出すことが大切」、「クリエイティビティは表面的なものではなく基礎学力や教養があってこそ発揮される」といった意見が複数のグループから共通してあがりました。
「余白」は子どもにとっても重要で、普段やるべきことばかり与えられていると意欲をなくしがちだそうです。大学の授業で時間を十分にとってSparkを使ったポスター作りのグループワークを行ったところ、学生がいつになく積極的にかつ楽しそうに取り組んでいたというエピソードは印象的でした。自由になる時間を確保することは、クリエイティブスキルを育むのに大切要素と言えます。
軽快なツールの活用アイディアも
ツール活用については、第1部でアドビのCreative Cloudエバンジェリスト 仲尾毅が、学校の端末環境でも軽快に使えるRush、Spark、Frescoの活用ポイントを解説。第2部ではAELの聖徳学園中学・高等学校の横濱友一先生がiPad版のPhotoshopとIllustratorのデモンストレーションを行いました。AELのコミュニティ内の学び合いも始まっています。
2年目を迎えた日本でのAELのコミュニティ。今後も輪が広がり活用が深まるのが楽しみです。
(文:狩野さやか)