ネオン光彩:Adobe Stockで注目の新しいモーショントレンド #AdobeStock
Adobe Stock ビジュアルトレンド
ネオン、それは今も昔も変わらず、私たちの身近にあるもの。まばゆくドラマチックに輝くその様は、ときにライトセーバーのように幻想的で、ときにビールの看板のようにコミカルな表情を見せてくれます。ラスベガス大通り、タイムズスクエア、新宿。都会を煌々と彩る様子もお馴染みではないでしょうか。しかし今、ネオンは背景の中の単なる一構成要素ではありません。モーションデザイン界で起きたイノベーションにより、ネオン自体が脚光を浴び、表現の主役を担うまでになりました。
2020年Adobe Stockモーショントレンドの一つである「ネオン光彩」のネオンは、伝統的なチューブ状のネオンライトを凌ぐ表現技法です(ただしチューブ状のネオンライトが廃れたというわけではなく、すぐれた製品は今でも多数存在します)。モーショングラフィックスのアーティストは、ネオンを「ライトペイント」テキストに変換し、回転したり滴り落ちたりするテクスチャーを生成。それを自然な背景の中に配置して、ネオン自体を主役として表現する実験をおこなってきました。ネオンが主役を飾るにふさわしいかどうか。それは100年以上に及ぶ歴史が証明しているところです。
ガスとガラス
デジタルのネオンと物理的なネオンは、同じように見えてまったくの別物です。_本物_のネオンはガスであり、充填時にのみ真っ赤に輝き、それ以外は目に見えません。スコットランドのWilliam Ramsay卿(1890年代にガスの発見に貢献した化学者)は、液化アルゴン(紫色に光る別のガス)を熱して沸点を超えたとき、または沸点を下回ったときに何が起きるかを観察することで、ネオンと他の類似元素を分離することに成功しました。つまり、本物のネオンは化学的作用だということです。
イメージ提供:Adobe Stock/wacomka
ネオンは1910年代に登場し、大きく派手な看板に広く使用されるようになりました。60年代まで普及が続きましたが、やがてネオンよりも手軽に利用できて安価な代替手段が登場し、デザイナーやメーカーは高価で使いにくいネオンから離れ始めました。値段が張るだけでなく、扱いにくかったからです。しかし、その魅惑的な輝きと異世界のようなきらめきに目を奪われた人々がいます。現代のアーティストです。アーティストたちはネオンを作品のメディア(素材)として使い始めました。
ネオンをアートとして最初に取り入れたアーティストの一人がDan Flavin氏です。1963年、氏は光るチューブだけを使用して、ギャラリーを光の風景に変える大規模なミニマルインスタレーションを展開しました。一方、今年の初めに亡くなったKeith Sonnier氏は、ネオンで新たなスタイルを開拓。ガラス管をねじり曲げ、抽象的な形にしたものを壁に取り付けた作品で、ポップアートのスタイルに昇華させました。また氏は、ネオンを別の対象物と組み合わせたことでも知られています。他の素材(鏡)、ファウンドオブジェ(活版印刷のフレーム)など、様々なものをネオンと組み合わせ、精巧な彫刻的作品を作成しました。また、ギリシャ人アーティストのChryssa氏(作品にファーストネームのみを使用)は、シンプルなものからカオス的なものまで大小様々なネオン作品を制作。額が付いた絵画のような作品や、特大の構造物およびインスタレーションも手がけています。
イメージ提供:Adobe Stock/wacomka
ネオンで表現される未来
1980年代に、ネオンはアートギャラリーから映画に進出。コンピューターハッカーがデジタル世界に送り込まれる設定の『トロン』など、SF映画で脚光を浴びました。『トロン』は興行的に成功とはいきませんでしたが、パッと輝くネオンとまばゆい光輪が印象的な作品で、一般公開された初のビジュアルエフェクトとして名を残すことになります。ネオンは、消費者向けコンピューター技術の黎明期において視覚的な認識手段となり、アナログとデジタルの世界を結ぶ美しい架け橋となりました。
イメージ提供:Adobe Stock/Media Whalestock
Adobe Stockのビデオ担当コンテンツ開発マネージャーであるDennis Radekeによれば、80年代のレトロでクールな雰囲気が、ネオン光彩のモーショントレンドを加速させる大きな要因となったそうです。
「いかにもネオンらしいアクアマリンやピンク系の発光を見ると、『マイアミ・バイス』のようなテレビ番組を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか」とRadekeは語っています。「ネオンそのものだけではなく、ネオンに付随する文化的側面に触発されて生まれた作品も少なくありません」。その理由は、ネオンの光そのものが生来の美しさを備え、進歩の象徴であるだけでなく、テクノロジーの進化を称え、きらびやかでありながら危険な香りをも匂わせる「新しい未来」の魅力に満ちているからです。
イメージ提供:Adobe Stock/ADOGSTOCK
80年代に生まれ、90年代に成熟した_新しい未来_は今、生まれ変わろうとしています。2010年代に登場したヴェイパーウェイヴは、インターネットから生まれた疑似シュルレアリスム的なアートムーブメントです。低解像度の(ローファイな)クリップアートときらびやかな色彩の屋内/屋外シーンが特徴。2020年代には、ネオンを使用したモーションでのハイパーリアルな表現に昇華されました。Dreamsのようなテレビゲームやアクション系ゲームのCloudpunkにもネオンは大量に使用されています。60年代や70年代のアートインスタレーションとは異なり、没入型エクスペリエンスが多いのが特徴です。
ネオン光彩というトレンドの中心には、モーションアーティストの強い思いが渦巻いています。それは現実世界で視覚的に目を引く対象をデジタル空間に取り込み、いろいろ試して、対象をデジタルで再構成したいという思いです。加えて、ネオンのような扱いにくく高価な物理的材料(金、クリスタル、クロムもしかり)をレンダリングできるようになったことも大きいでしょう。デザイン要素としてさらに利用しやすくなりました。
「モーションデザインの醍醐味の一つは、現実にあるものを画面上に複製して再現できることです」と語るのは、モーショングラフィックステンプレート(MoGRT)チームのシニアプロダクションアソシエイトのTheresa Rostek。Rostekによれば、メーカーやクリエイターがネオンの魅力を再発見し、DIYメディアとして宣伝しているとのことです。例えば、Deepa Mann-Kler氏(先頃開催されたAdobe Maxのゲストスピーカー)のようなアーティストはイマーシブ作品でネオンを積極的に使用しています。
「ネオンは一度人気が出てその後衰えるという、流行の浮き沈みがありました」とRostek。「ここ数年のネオンのリバイバルは、下町のガラス工房やネオンサインメーカーが小さなワークショップを開いているおかげです。さらに、その人気はデジタル作品にも波及しています」。そう、アートは現実世界を写す鏡なのです。
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この記事は2020年11月11日にRF Jurjevucsにより作成&公開されたNeon Glow-up: Adobe Stock’s bright new motion trendの抄訳です。
ヘッダー写真:wacomka/ Adobe Stock