学生オプションの導入で、いつでもどこでもクリエイティブに制作できる環境に ~宝塚大学東京メディア芸術学部~

新宿キャンパス設置当初からアドビツールを取り入れ、学生にクリエイティブな環境を提供

「芸術と科学の融合」を掲げ、かねてから、芸術にIT・マルチメディア教育を取り入れてきた宝塚大学。新宿にある東京メディア芸術学部では、マンガ分野、イラストーレーション分野、ゲーム分野、アニメーション分野、メディアデザイン分野の5つの分野を網羅しており、幅広くクリエイティブ業界で活躍する人材を育成しています。カリキュラムの特長は、分野の垣根を取り払い、学生の関心に応じて様々な分野を学べることが挙げられます。1年生では基礎的なこと全般を学習し、2年生から専門分野を選択するシステムですが、他分野の専門授業も自由に履修することができます。自分の専門分野を深く極めてもよいですし、「アニメに強いゲームクリエイターを目指す」など、自分らしい特色を持ったクリエイターを目指すことも可能です。

そのようなクリエイティブ業界で活躍する人材を幅広く育成する大学として、同大は、当初から、クリエイティブな制作環境の充実に力を入れてきました。「現在の東京メディア芸術学部の前身となる、東京メディア・コンテンツ学部が創設された2007年から、クリエイティブ業界ではアドビは当然必要なツールとして、当初から多くの授業でアドビのソフトウェアを使用する環境でした」と、学務課課長の大和敬朋さんは話します。包括ライセンス契約により学内のPC演習室ではアドビツールを学生が自由に利用することができ、大学の設備だけでも学生が十分に制作活動をできるように考慮されています。

コロナ禍により、対面からオンライン授業にシフト

ところが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、2020年前期から学校設備の利用を前提とした対面授業が難しくなり、すべての授業は基本的にオンライン開講となりました。そこで、自宅にPCを持っていない学生には、PCを貸し出すことに。「学生は通信環境を整えるだけでも費用がかかるので、端末は貸与することで負担がかからないようにしました」と、大和さんはその意図を説明します。

また、どうしてもオンラインでは難しい授業は10月に時期をずらし、対面で集中的に行いました。「1年生の“コンピュータデザイン基礎”という、アドビツールの基本を教える科目は、手元が見えないとマウスの操作などを教えにくいので、密を避けて本来の4クラスを8クラスに分け、教員4人が8日間集中で行いました」との中村泰之准教授の言葉からは、コロナ禍での授業の工夫と苦労が察せられます。その甲斐あって、集中講義の課題でもあった新宿区のデザインコンテストへの出品作品から、今年もみごと入選作品が選ばれました。

学生一人ひとりに、アドビツールが使えるライセンスを

後期の授業は10月末からスタートしましたが、引き続き密を避けるため対面授業は全体の2割ほどで、オンライン授業がメインという状況が続いています。そこで、同大では、まずは必修科目でアドビツールが必ず必要な1年生130人を対象に、包括契約の学生オプションを追加し、学生が自宅でもアドビツールを使えるライセンス環境を整えました。この学修環境を活かして、後期は1年生一人ひとりが課題の制作を進めています。

学生オプションライセンスを導入したことの教育効果について、大和さんは、「コロナ禍に関わらず、学生が大学でも自宅でも、場所や時間の制約を受けず自由に課題制作に取り組めることは非常に意味があります。これまでは、大学のPC演習室での作業がメインだったため、演習室が授業で使われているときや夜遅くなど、自由に課題制作ができないことがありました。今では、1年生は学生それぞれがアドビツールの入ったPCを1台ずつ持っているので、作業時間を要する高度な課題にも取り組めるようになりました」と話します。

同大では、2年生以降は専門分野が5つに分かれていきますが、「すべての専攻の学生にとってアドビツールが必要です。例えば、就職活動のためのポートフォリオ作りには、冊子制作に適したAdobe InDesignが欠かせません。授業でアドビのツールを学んでおくことで、場面に応じて有効に活用できる力がつくからです」と中村先生はアドビツールが使える学修環境の重要性を強調します。来年度からは、2年生以上の学生も全員に、学生オプションが行き渡るようにし、すべての学生がいつでもどこでも自主制作できる環境を推進する計画が進んでいます。

授業の一環としてアドビ認定アソシエイト資格を取得、学生の大きな自信に

また、同大学では、2018年からアドビの公式認定資格である「アドビ認定アソシエイト(ACA)」の学内受検を開始しました。それにあわせて、「コンピュータデザイン基礎Ⅰ・Ⅱ」をACAに対応する授業内容に変更。この背景には、Adobe PhotoshopやIllustratorの取り扱い技能のばらつきに対する懸念がありました。「例えば、ひと口にPhotoshopを使えると言っても、実際は自己流のやり方で、偏った機能を限られたやり方でしか使っていないケースもありました。ACAを取り入れたことで、学生がPhotoshopやIllustratorの基本的な機能を全般的に取り扱える技能がアップしたと感じています」と中村先生は話します。学生の技能アップという効果にとどまらず、「学生にとってACAを持っていることが大きな自信になっています。現在の3年生が授業でACAを取得した最初の学年ですが、今後、就職活動の場面でも資格を持っていることは学生の自信の重要な下支えになることでしょう」(中村先生)

アドビのツールは学生がアイデアを形にするための強力なパートナー

大和さんは、今後の同大の学修環境の展望を「アドビツールは今でもトータル50科目以上で学年に関わりなくまんべんなく使う、学生にとってなくてはならないツールです。これからは時代とともに、タブレット端末の併用など作業環境の幅も広がっていくとは思いますが、まずは大学でしっかりデスクトップベースでツールを使いこなす力をつけて、自信を持って卒業できるように学修環境を整備していきたいと思います」と話します。

また中村先生は、今後のIT・メディア教育について、「アドビのAI(人工知能)Adobe Senseiがとても優秀になり、作業的な技能を覚える時間が短くなってきました。例えば、Photoshopの切り抜きもほぼ全自動ででき、単純作業に割く時間が少なくて済みます。今後は、学生たちもテクニック習得にかけていた時間を、アイデアを練ったり制作の試行錯誤をしたりといったことにあてて、よりクオリティの高い作品をつくる時代になると思います」と捉えています。

宝塚大学では、学生が時代に合った力を身につけクリエイティブ業界はもちろん幅広い業界で活躍できるように、今後も学修環境と教育内容の強化を推し進める考えです。