テレワークを効率化 アドビ無料ツール「Acrobat Reader DC」の機能まとめ
テレワークを導入する企業の増加に伴い、書類のやりとりをオンラインで行う機会も増えてきました。デジタル書類を取り扱う上で、ぜひ活用したいのが事務作業の大幅な効率化が図れる「Acrobat Reader DC」デスクトップ版。PDFファイルの閲覧ツールとしてよく知られていますが、それだけでなくPDFファイルに注釈やハイライトを追加する校正作業、デジタル書類への電子印鑑の押印、手書きの署名の記入など、さまざまな機能を無料で利用できるのです。
本稿では、アドビの無料ツール「Acrobat Reader DC」デスクトップ版の機能の中から、テレワークに役立つ機能をご紹介します。
PDFファイルに注釈やハイライトを入れる
社内で文書のやりとりをする際、PDFファイルで書類をチェックすることがあります。そのファイルに修正やコメントを追加したいときは、「PDFファイルをプリントアウト」→「紙にコメントを記入」→「スキャナーでデジタル化」→「共有」といったステップをこなすのが一般的でしょう。しかし、紙に印刷するのはコストと手間がかかります。
そこで使えるのが「Acrobat Reader DC」の注釈機能。PDFファイルに直接注釈を入れられるのはもちろん、ハイライトを入れたり、下線、打ち消し線を引いたりするなど校正作業の時短が叶います。
<操作方法>
1. PDFファイルを開き、右側のメニューから[注釈」を選択
2. 画面上部に、メニューアイコンが表示される
3. 操作したいメニューを選び、注釈やハイライト、下線、打ち消し線などを入力して、PDFファイルを直接校正する。作業したファイルは「Adobe Document Cloud」に保管され、スマートフォンやタブレットなどさまざまな端末からアクセスが可能
同じPDFに共同で校正作業を行う
書類を複数人で校正する際、メンバーがそれぞれ校正したファイルを回収して修正点を取りまとめるのは、時間も手間もかかる面倒な作業です。また、ほかのメンバーが入れたコメントを見られないため、修正の指示に相違が生じてしまうこともあるでしょう。
そんなときは、「Acrobat Reader DC」の「注釈用に送信」機能を使えば、PDFファイルの共有URLをメールやチャットツールで送信し、メンバー全員を1つのPDFファイルに招待することができます。招待されたメンバーは、「Acrobat Reader DC」アプリをダウンロードしていなくてもファイルにアクセスし、閲覧・校正作業ができます。複数人のフィードバックを1つのPDFにまとめられるので、書類の修正作業の効率化につながるでしょう。
<操作方法>
1.ファイルを開き、右側のメニューから[注釈用に送信]を選択
2.[ユーザーを招待]を選び、ファイルを共有する相手のメールアドレスとメッセージを入力。メール以外の方法でファイルを共有する場合は、[リンクを取得]から共有URLを発行する
3. PDFファイルの有効期限を設定し、[注釈を許可]にチェックマークを入れて、招待メールを送信。招待されたメンバーは、メールのリンクからPDFファイルにアクセスするだけで校正作業に参加できる
4. これによって、複数人のフィードバックが1つのPDFファイルに集約。ほかのメンバーの注釈にコメントしたり、ファイルの作成者なら任意のタイミングでファイルの共有を解除したりもできる
電子印鑑を押印する
稟議書や休暇届など、社内文書を作成する際にハンコが必要なケースがあります。そんな時に使えるのが、スタンプツールを使った電子印鑑の押印です。
具体的な使い方は、ユーザー情報を登録して印影のスタンプを生成し、PDFファイルに直接電子印鑑を押印するだけ。これを設定しておけば、ハンコを押すためだけにわざわざ会社に行く必要がなくなります。
<操作方法>
1. 押印したいPDFファイルを開き、右側のメニューから[注釈]をクリック
2. 画面上部のメニューアイコンから[スタンプを追加]を選択したら、[電子印鑑]をクリックし、任意の印影のデザインを選ぶ
3. 電子印鑑に表示する氏名や役職などのユーザー情報を入力する。入力画面のポップアップが表示されない場合は、画面右上の[プロファイルと設定]→[環境設定]→[ユーザー情報]から設定する
4. 設定が終わるとPDFファイルの任意の場所に、電子印鑑を押印できる。電子印鑑はサイズの調整も可能
5.電子印鑑のほかに業務に使える「承認済」「非公開」などのスタンプも押すことができる。メニューアイコンから[スタンプマーク]→[標準]をクリックして、用途に合わせたスタンプを選択しよう
署名を入力する
「Acrobat Reader DC」の「入力と署名」機能を使えば、ツール内に用意されたデザインの電子印鑑ではなく、手書きの署名や手持ちのハンコの印影をPDFファイルの好きな場所に押すことができます。
一度だけ手書きの署名や印影の画像を「Acrobat Reader DC」に登録すれば、2回目以降はすぐにPDFファイルへ押印できるようになります。これを設定しておけば、テレワークでオンライン承認作業を進められるでしょう。
<操作方法>
1.右側のメニューから[入力と署名]を選ぶ
2.[入力、署名および送信]を指定する
3. 上部メニューの[自分で署名]を選択
4. 署名はタイプ・手書き・画像の3パターン。キーボードでタイプしたテキストを署名として使用する場合は[タイプ]を、画面に直接署名を書く場合は[手書き]を選び、署名を登録しよう。紙に書いたサインや印影の画像がある場合は、[画像]を選ぶとデジタル化され、アカウントに署名として登録される
5. 登録された署名は、PDFファイルの任意の場所に入力することができる。署名サイズの調整も自由自在
署名を依頼する
契約書を締結する場合は、取引先に署名や捺印を依頼することになるでしょう。このとき、わざわざ紙の契約書を用意し、郵送で相手のオフィスに送らなくても、「Acrobat Reader DC」に付帯されている「Adobe Sign」機能を使えば、取引先の担当者宛てにPDFファイルへの署名を依頼することができます。
「Adobe Sign」機能は紙での署名依頼と違い、オンラインですぐにPDFの契約書を送付することができ、さらにPDFに署名者を特定できる情報がログとして残るため、誰がいつ署名をしたかを確認することができます。修正が加えられた場合は、修正した人の情報や修正内容の確認も行えて、改ざん防止効果も期待できます。法的に電子署名が許可されない書類は対象外ですが、それ以外のビジネス書類全般に使える機能です。
<操作方法>
1.右側のメニューから[Adobe Sign]を選択
2. 署名者のメールアドレス、件名とメッセージを入力する。署名者を複数人指定してもよい
3.PDFファイル内で署名してほしい場所を指定する。[送信]を押すと、署名者に依頼メールが届き、受信者は指定の場所に署名できる
※「Adobe Sign」機能は、Acrobat Reader DCでも月2回まで無料で使用可。使用頻度が多い場合は、年150回まで送信可能な「Adobe Acrobat Pro DC」や「Adobe Sign(https://acrobat.adobe.com/jp/ja/sign.html)」をご利用ください。
スマホのカメラで紙書類をPDF化して、校正・署名ができる
「Acrobat Reader DC」と無料のスマホアプリ「Adobe Scan」を連携することで、スキャナーが自宅になくとも紙の書類をPDF化して、ファイルの校正や署名ができます。
さらに、書き出したPDFファイルはOCR(文字認識)処理されるため、書類の再利用やキーワード検索も可能に。キーワードに該当する文書をデータ検索できれば、資料の山から目視で探す手間が省けるため、作業の大幅な時間短縮につながるでしょう。
<操作方法>
1.「Adobe Scan」アプリを起動して右下にあるカメラボタンを押し、デジタル化したい書類を読み取る
2. カメラが書類を認識すると、書類の四隅にマークが表示される
3. 書類のサイズに合うように調整して[続行]を選択するとデジタル化される
4. デジタル化された書類は、切り抜きや色味調整など加工することが可能
5. トンボや折り目、不要な文字などは、「クリーンアップ」機能で削除
6. 問題なければ、[PDFを保存]ボタンを選択してPDFファイルを書き出す
7.「Adobe Scan」で書き出したPDFファイルを、「Acrobat Reader DC」で開く。ファイルの文章はOCR【※】処理が施されているため、キーワード検索や書類の再利用ができ、業務効率化につながる
【※】Optical Character Readerの略。オーシーアール(光学的文字認識)とは、イメージスキャナやデジタルカメラで紙に書かれた文字を読みとり、コンピュータが利用できるデジタルの文字コードに変換する技術のこと
「Acrobat Reader DC」の無料機能を使いこなせば、書類作業もストレスフリーに
テレワークでデジタル書類のやり取りが増えている今、書類作業の効率化を図れば全体の作業時間が大幅に短縮できます。無料で使える「Acrobat Reader DC」には、そんなデジタル書類のやり取りをスムーズにしてくれる機能が盛りだくさんです。
もっと多機能なツールを探している人は、有料版の「Acrobat Pro DC」がおすすめ。PDFファイルの編集やファイルの結合など、よりリッチな書類作業に対応しています。アドビのサービスを使いこなして、より快適なデスクワークを実現してみてはいかがでしょうか。
(執筆:中森りほ 編集:ノオト)