クメキ「イラスト表現に水彩の手札を増やせる Adobe Fresco」 Adobe Fresco Creative Relay 12

by Takashi Iwamoto

Posted on 02-17-2021

連載

Adobe Fresco Creative Relay

アドビではいま、Twitter上でAdobe Frescoを使ったイラストを募集しています。応募はかんたん、月ごとに変わるテーマをもとに、Adobe Frescoで描いたイラストやアートをハッシュタグをつけて投稿するだけです。
2月のテーマは「景色」。窓から見える景色、思い出の光景、空想の世界……みなさんが思い描く“風景”をAdobe Frescoで描いて、 #AdobeFresco #景色 をつけてTwitterに投稿しましょう。
そして、この企画に連動したAdobe Frescoクリエイターのインタビュー「Adobe Fresco Creative Relay」、第12回はイラストレーターのクメキさんにご登場いただきました。

黄昏どき、空を眺める少女

「今回のイラストは、“景色”というメインテーマに対して、さらにカラフル/夕焼け/水彩/さみしさというテーマを設定し、自分が得意とするダークファンタジー感のある夕焼けのグラデーションと、Adobe Frescoの美しい水彩をかけあわせてみたいと考えました。
最終的なイメージは、“街の外れの宇宙通信施設のような場所で、少女が歩きながら鳥や夕日をのんびりと眺めている風景”です」

「カラフル/夕焼け/水彩」のテーマは、青から赤に移ろう、あざやかな空を水彩で描くことで表現し、「さみしさ」のテーマは、夕日に向かってたそがれるひとりの少女によって描き出されています。
水彩による色のにじみが、絵に潜む切ない感情を増幅する、詩的で情緒的なイラストに仕上がっています。

クメキ「夕幻景色」

小さな成功体験を大切に、力を磨く

繊細なディテール、感情を揺さぶる質感、リアリティを持った空気感……見る人をついその世界に引き込んでしまうクメキさんのイラストは、どのように生まれたのでしょうか。クメキさんに絵を描くようになったきっかけを伺いました。

「はっきりとは思い出せないのですが、小学生のとき、ノートにふと校庭に置いてある遊具を描いたことがあったんです。それが思いのほかうまく描けて、『あれ? 自分は意外と絵が描けるんじゃないか?』と思ったことがきっかけかもしれません。
いま見たらひどい絵だとは思うんですけど、そのとき『うまく描けた』と勘違いしたからこそ、今まで絵を描き続けることができたとも言えます(笑)。
これはいまでもそうなのですが、ふだんから『うまくできた』という小さな成功体験を大事にすることを心がけていて、そのときの自分の力を出し切ったら、たとえ失敗したところがあっても『失敗した』『もうダメだ』と思わないようにしています」

そうして絵を描きはじめたクメキさんは、ほどなくしてマンガに出会います。
当時、兄が買っていたマンガを見せてもらっていたクメキさんは、そのマンガ家が描く絵のクオリティに衝撃を受け、“同じように描けるようになりたい”と模写や練習を繰り返します。

「自分でも不思議なのですが、マンガのキャラクターにはあまり惹かれず、背景のビルや街並みに魅力を感じていて。その頃はマンガを見ては、キャラクターの後に描かれている風景やビル群を描いていました。
その描きかたは誰に習うわけでもない、完全な独学だったので、きれいに描けなくて悩んだ時期もありましたが、小学校高学年の頃からは参考書を買って、パースや消失点について学ぶうちに自分の絵も変わっていくのが実感できました」

“もっとうまく描きたい”……向上心のカタマリのようなクメキさんは、技術を重ねるごとに描画はさらに細かく、リアルを追求していきました。
中学生になると画材もノートからスケッチブックに変わり、コピックを揃えて着色をするようになります。

「小学生のころは現実の風景ばかりを描いていましたが、中学生になると現実の風景が平坦に思えるようになって、そのころから自分が思い描く風景を描くようになりました。
細かい世界観、設定を作り込んでから描くのは少し苦手なので、考えながら描いていくというスタイルでしたが、とにかく『前回の自分の絵よりはうまくなろう』。そういうことを意識して描いていました」

クメキ 左「Unlimited World」/右「Altatole」

情報系の高校に進んだクメキさんは、2年生のとき、CGコースを選択。そこで出会ったのがAdobe Photoshopです。
ペンタブレットも準備された充実の環境で、Photoshopと出会ったことは、それまでデジタルで描くという発想がなかったクメキさんにとって、ひとつのターニングポイントになりました。

「家でも同じようにデジタルで描きたいと思って、ペンタブレットを買って。ただ、Photoshopは高かったので、SAIで描いていました。
最初はペンタブレットに慣れず、とまどいもありましたが、あとから修正できる/色も変えられる/レイヤーが使える……自分のなかでは革命が起きたような大きな変化でした。
『Unlimited World』は初めてデジタル作品として時間をかけて取り組んだ絵なのですが、これが学園祭で賞を取ったときはうれしかったですね」

クメキさんの描画力はこの間にもめざましく向上。高校卒業前に描かれた「Altatole」(上)では、その描画は一層精緻なものになっています。

細かく、リアルに描くことからの脱却

高校卒業後、クメキさんが進学先として選んだのは「あいち造形デザイン専門学校」。より高いレベルでの描画テクニックを学ぶためでした。

「ここで学んだことで、それまでハコをパースに沿って並べたような構図から、モノをモノとしてしっかりと描けるようになりました。色もそれまでは単調、平坦な色使いでしたが、どんどんあざやかになっていったと思います。
なによりよかったと思うのは、専門学校には自分よりうまい人がいっぱいいたことですね。周りの人の絵のうまさに落ち込んでしまう人もいましたが、自分は“いつか超えてやろう”という気持ちで描いていましたし、うまい人の描きかたを学び取りたくて、直接、聞きに行くこともありました。
1年生のときに、コンペの存在を聞いて描いた作品が宇宙をテーマにした『Universe; record』です。
特に目立った結果を得られたわけではありませんでしたが、世の中に作品をアウトプットしていくという、貴重な学び、経験を得られたと思っています」

クメキ「Universe; record」

2年生になると学校の環境に合わせて、自宅のペイントツールもPhotoshopに変更。
このころ、クメキさんに別の方向性を示す、とある出会いがありました。

「通っていた学校で、スーパーアドバイザーの増山修先生に絵を見ていただける機会があったんです。
このとき持っていったのが商店街の絵(下)です。その細かさは褒められたのですが、一方で細かすぎるとも言われて。“正確に、細かく描くことが正義”のように感じていた自分にとってはショックでした。
ただ、それには理由があって、手前と同じくらいの細かさで奥まで描いてしまうと、密度が濃くなって奥に行くほど画面が汚くなってしまうということなんです。
それをきっかけに、美しく表現するためには奥はシンプルに、見せたいところは細かく。そうしたメリハリを意識するようになりました」

クメキ「無題」(空想の商店街)

何気なく描いた幻想的な夜空で自分の強みに気づく

これまで細かさとリアリティを追求した絵を描いてきたクメキさん。「湖の水鏡」は、何気なく筆を走らせているなかで、たまたま描き出した作品でした。

「何も考えずに描いていくうちに、『あ、これ綺麗だな』『細かくない、シンプルな絵もいいな』と思って、Twitterにアップしてみたら、それまで投稿していた細かい風景よりも、ずっと評価がよかったんです。
『自分のはこういう絵のほうが強いのかもしれない』。これはそうした気づきを与えてくれた絵ですね」

クメキ「湖の水鏡」

本人こそ「シンプルな絵」とは言うものの、正確なパース、シルエットの精密さ、リアルながらも幻想的な夜空と湖面への写り込み……そこには圧倒的な経験と技術が込められていることは感じ取ることができます。
1年生のときに描いた「Universe; record」と、2年生のときに描いた「湖の水鏡」。その2枚の夜空を比較しても、その画力向上のスピードは驚異的とも言えるほど。

こうした絵をアップし続けるうちに、Twitterを経由して仕事の依頼が舞い込みます。
クメキさんはまだ在学中の身でしたが、これを快諾。この絵「I Know」は、クメキさんがイラストレーターとしての最初に手がけたクライアントワークとなりました。

「依頼いただいて描く、初めての絵だったので相当気合を入れて描きました。
キャラクターのイラストもアップはしていなかったものの、実は裏でコソコソと練習していて(笑)。それを活かせたかなと思っています」

クメキ「I Know」

「残照ルミネセンス」は、在学中から仕事として絵を描くようになったクメキさんが、卒業制作として描いた作品です。
この絵は、その独特の世界観のみならず、近景と遠景の描画の粗密、空気感や鮮明度の違い、光と陰の表現力……クメキさんの学びの集大成と言えるものになりました。

「“細かさこそ正義”と思い込んでいた自分にケジメをつけるために描いた作品で、これ以上ないくらい細かい作品にしようと思って描きました」

クメキ「残照ルミネセンス」

「湖の水鏡」でひとつの方向性を見出したクメキさんは、絵にテーマやキーワードを与えていくことで、幻想的な風景を描き出すようになります。
そのひとつが、夕暮れの雲の海から大きなクジラが現れる、美しい作品「空のクジラ」です。これは、Twitterでクメキさんにとって初めて1万を超える「いいね!」がついた、思い入れのある作品になりました。

クメキ「空のクジラ」

Orangestar「アスノヨゾラ哨戒班」ファンアートでは3万いいねを獲得するなど、SNSでの拡散をきっかけにクメキさんの絵の魅力は広がり、仕事の依頼も増加。クメキさんは音楽のジャケットイラストやゲーム、装画等、幅広いフィールドで活躍する人気イラストレーターのポジションに一気に駆け上がることになりました。

クメキ「ファンアート『アスノヨゾラ哨戒班』」

水彩がとにかくすごい! Adobe Fresco

クメキさんのいまの制作環境は、Windows+液晶タブレット。アプリケーションはPhotoshopがメインでしたが、Windows版がリリースされたことをきっかけに、Adobe Frescoを追加しました。
Photoshopと同じパソコン、同じ液晶タブレット上で動作するAdobe Fresco、そのファーストインプレッションはどのようなものだったのでしょうか。

「水彩がとにかくすごいと感じました。ほかのアプリケーションでは絶対に表現できないような色の広がり、水の広がりで、自然に色がなじんでいく。
もともと水彩で描く経験はほとんどなかった自分が、今回のイラストの空を、全部、水彩で塗ってみたいと思えるほどに、この水彩は美しいと思います」

Windows+液晶タブレットでAdobe Frescoで使用するクメキさん

普段使っているPhotoshopとの連携しやすさも、重要なポイント。
Adobe Frescoでクラウドドキュメントに保存したファイルは、即座に同期され、Photoshopでも編集できるようになります。

「Adobe Frescoで描いたイラストをPhotoshopで最終的に仕上げる。そうした使いかたがしやすいのは、同じアドビアプリであることの大きな強みです。
今後は、Photoshopで描くなかで水彩表現が欲しいときにはAdobe Frescoに持っていってまた戻る……そうした連携で絵を仕上げていくという流れもできると思っています。Adobe Frescoで水彩が使えるようになったことで、イラスト表現の手札が1枚増えたという感じですね」

クメキさんが今回使用したブラシ

“昨日の自分より、いい絵を描く”……クメキさんの向上心は留まることを知らず、常に新しい表現、技術を探し求めています。

「いまは背景に3Dを取り入れられないかをチャレンジしています。
アドビのツールでは、Photoshop以外にも、Adobe IllustratorAdobe InDesignAdobe Photoshop LightroomAdobe Dimensionも使っていますが、興味があるものを気があるツールを気軽に試せるのがAdobe Creative Cloudのいいところですよね。仮に直接、作品に影響をしなくても、そうしたところからインスピレーションを受けることはできますから」

新しい刺激を得ることだけでなく、常に上を目指すこと。
それはいまなお、クメキさんが心がけていることでもあります。

「とにかく気をつけているのは、手癖で描かないようにするということです。
時間がないとつい、自分の描ける範囲で描いてしまいそうになるのですが、そればかり続けているとスキルアップ、レベルアップのチャンスを失ってしまいます。
苦手だと思っているもの、やったことがないものも、取り組んでみれば意外と楽しいかもしれませんし、いま自分ができることが、自分の天井だとは思いたくありませんから」

イラストレーター
クメキ

Twitter|https://twitter.com/KUMEKI_3
pixiv|https://www.pixiv.net/users/7434855
BOOTH|https://kumeki.booth.pm

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