タスク分析でユーザーの目的と振る舞いを理解しよう | アドビUX道場 #UXDojo

連載

エクスペリエンスデザインの基礎知識

Webサイトやアプリのデザインをするとき、デザイナーは見た目の美しさだけに責任を持つわけではありません。一般的なグラフィックデザインとは異なり、サイトやアプリをデザインする際の主要な目的は、ユーザーの課題に対する快適な解決手段の提供です。そのために、ユーザー中心のデザイン手法が必要になります。

Greg Hinzmann Designのクリエイティブディレクターを務めるグレッグ・ヒンツマンによると、ユーザー中心のデザインとは、ユーザーからのフィードバックや提案をそのまま受け入れることではなく、彼らの視点、優先事項、達成したいものを理解することです。すなわち、注力するべきは、ユーザーの目標の達成に理想的な方法の実現と、望ましい結果に限りなく近づけることです。

ユーザー中心のデザインとタスク分析

ユーザー中心のデザインのための手法には、市場調査、A/Bテスト、インタビューによるユーザーテストなどの多くの方法がありますが、デザインに着手する前に始めるべきテクニックがひとつあります。タスク分析です。

タスク分析は、ユーザーがどのように一連のタスクを実行して、目指すゴールを達成するかを学ぶのに役立ちます。ユーザーのタスクを分析し、文脈に沿った調査を行うことで、既存フローにおける重要な問題点を発見し、体験を改善するためのより良いデザインを提供する機会を発見できます。

タスク分析の実例

Pinterestで見つけたレシピで料理を作りたいシャロンのイラスト。

Pinterestで見つけたレシピで料理を作りたいシャロンのイラスト。

ユーザーのタスクをどのように分析するのか、実際の例を見てみましょう。これから紹介する例では、Pinterestで新しいレシピを見つけて保存するのが大好きなシャロンを分析しています。

その中でも、Pinterestで見つけたレシピに従い、食材を買って料理するというゴールに焦点を当てて分析をしていきます。ゴールが広すぎると、重要な課題を特定して体験を向上させることがずっと困難になります。

目的

以前Pinterestに保存したメープル・マスタード・チキンウイングのレシピ通りに食材を買い調理する

タスク分析のダイアグラム

下の図は、シャロンがゴールを達成する様子を観察して特定した一連のタスクとサブタスクです。また、認知負荷の大きい2つのタスクを特定しました。認知負荷の高いタスクの欄には脳のイラストが描かれています。

Pinterestで見つけたレシピで買い物して調理しようとするユーザーのゴール、要件、ステップを詳細に記述したタスク分析フローチャート。

Pinterestで見つけたレシピで買い物して調理しようとするユーザーのゴール、要件、ステップを詳細に記述したタスク分析フローチャート。

タスクの記述には、単純に、数字または箇条書きのリストを使うこともできます。

    1. Pinterestを開く
    2. 保存したボードへ移動
    3. 「game day cooking」ボードをタップ
    4. メープル・マスタード・チキンウイングのレシピをタップ
    1. レシピの書かれたページを開く
    2. ページを読み、素材と手順を確認する
    1. ページ内に素材の記述を見つける
    2. ノートアプリを開き、素材の記述をコピー&ペーストする
    3. 個々の素材の数を倍にする
    1. ノートアプリの素材リストをチェックボックスのリストに変える
    2. すでに持っている素材にチェックを入れる
    1. 近くの食料品店に行く
    2. 店内で素材を探す
    3. 素材を見つけたら買い物かごに入れる
    4. 素材を購入し家に持ち帰る
    1. pinterestを開く
    2. 保存したボードを表示する
    3. 「game day cooking」ボードを開く
    4. メープル・マスタード・チキンウイングのレシピを開く
    5. 料理手順の指示に従う
    6. 正しい素材の量を確認するためにノートアプリに切り替える

上記のようにタスク分析をすることで、繰り返し行われる不要なステップを特定したり、ユーザーの負荷を軽減するためのステップの自動化を検討できます。

体験を向上させる機会の分析

Pinterestはレシピを発見したり保存するのには最適ですが、そのレシピのための買い物をしたり、実際に調理したりするのが簡単になるような機能は提供していません。そのため、シャロンは、アプリ間を行ったり来たりして、彼女の必要な盛り付けに合わせて食材の数を変換するために、いくつかの計算(認知負荷がかかり、かつ間違えが起きやすい)を行う必要がありました。

また、メモアプリで作成したチェックリストから買い物をした後に調理を始めるときには、再び同じレシピを見つけるために最初のタスクを繰り返さなければなりませんでした。

タスク分析から得られる物

上で紹介した例は、Favoreatsの設立者であるチャンドラー・ホースレーが行った実例のタスク分析です。彼は、Pinterestアカウントと同期して、同じ目標を達成する体験を改善するFavoreatsアプリを開発しました。Favoreatsアプリには、Pinterestに保存されているレシピの買い物や調理に必要な多くのステップを自動化する機能があります。たとえば、必要な分量に基づいて材料の数を変換したり、買い物リストを自動的に作成したり、各食材が食料品店どの通路にあるかなどの詳細を追加する機能です。

ユーザー自身と、そのユーザーがどのように目標を達成したかを理解することで、ホースレーは問題のある領域を特定することができました。そして、以前よりユーザーが楽しんでいた体験を奪うことなく、それをさらに改善した体験をつくり出すことができたのです。

体験を改善すべく新しいユーザージャーニーを作成する前に、タスク分析などの手法を使ってユーザー調査を行い、既存のジャーニーを分析して、重要かつ必要なステップを見落とさないことが重要です。実際に存在する問題を解決するためには、適切なデータと視点を持つことが欠かせないのです。

この記事はTask Analysis: Understanding User Goals and Behavior(著者:Caleb Kingston)の抄訳です