1人1台時代に大切なゆるぎない視点を〜奈良県の教員向け「STEAM教育エバンジェリスト育成研修」

教育機関向け無料Adobe Sparkを全県導入した奈良県で、教員研修の一環として開催された特別講演の模様をレポート。学校教育におけるICT活用の重要性と活用を推進するカギとは。

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By Adobe Education Japan

Posted on 03-08-2021

アドビの「教育機関向け無料Adobe Sparkライセンス」を導入した奈良県では、GIGAスクール構想推進のために多様な教員研修が行われています。その一環として2021年1月28日(木)、「STEAM教育エバンジェリスト育成研修」(奈良県立教育研究所主催、アドビ協賛)がオンラインで開催されました。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)主幹研究員/准教授の豊福晋平氏による講演「学習者1人1台環境とSTEAM教育への展望」では、学校現場にとって大切な視点が示されました。

図書館のテーブルに座っている男性
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国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)主幹研究員/准教授 豊福晋平氏

新しい教育観でICT活用を

豊福氏は、19世紀の工業社会に由来するこれまでの教育観と、21世紀の情報社会に必要なこれからの新しい教育観を比較し、ICT活用の重要性や必然性が明らかであることを示します。

テーブル
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豊福晋平氏講演スライドより

例えば、これまでの教育観では、コンピューターなどのツールを使うべきではないという「裸一貫主義」が特に日本には強くありましたが、21世紀情報社会の教育観では、ICTのスキルは読み書き同様に資質・能力の一部として位置づけられています。

ICTをこれまでの教育観で捉えて、教員が教えるための「教具」になってしまうことに豊福氏は警鐘を鳴らします。教員主導で特定の学習シーンだけで使用許可するような使い方をするのではなく、子ども達に委ね自らの「文具」として使えるようにすることが重要だと提案しました。

日常のコミュニケーションに積極活用

ICTを「文具」とし学習者を中心とした1人1台のPC環境を運用する際には何に気をつけどんな姿をイメージしたらよいのでしょうか。豊福氏は、教員の負担を増やさずにICTを使う機会を増やすことを勧めます。

いきなり凝った授業計画をしてICTを使おうとするのではなく、学校生活や学習のさまざまな手段をデジタルに置き換えることから始めるのがポイント。連絡帳、資料や手紙の配布、課題のやりとり、ノートやメモ、グループワーク、発表など、さまざまありますが、特に連絡帳のように毎日使うものから始めて、日常的に必須の手段にすることが大切だということです。

テキスト
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豊福晋平氏講演スライドより

現在家庭ではタブレットなどのICT利用は個人的な情報消費に偏りがちですが、学校でICTを日常的に使うようになると、家庭でも知的な創造活動に使う機会が増えるといいます。子ども達のクリエイティブスキルがのびやかに発揮される可能性が広がるのはとても楽しみなことです。

また、学校内のコミュニケーションにICTを使うこともポイントです。先生からの連絡事項や子ども同士の委員会活動などさまざまなコミュニケーションにICTを使えば、ネットを介したコミュニケーションの良い練習となり、学校外のプライベートなコミュニケーションにも役立つ学びが得られます。

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豊福晋平氏講演スライドより

これまで学校内ではコミュニケーションのためにICTが使われることはほとんどなく、むしろSNSトラブル防止を啓発するなど抑制的に扱われてきました。これからは、パブリックな学校という場で実際に使いながら、自律的な活用の経験値を積めるようになるのです。

学びの多様化と高度化

ICTの活用が日常化されると、その先のステップとして、学習の多様化や高度化にICTが活躍します。STEAM教育もそのひとつです。Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(アート、教養)、Mathematics(数学)の複数の分野を横断的に、「知る」と「創る」を繰り返し、子ども達が「知りたい」と思うような学びを設計するのがSTEAM教育。プロジェクト型学習の形で目的に応じて知識を身につけます。

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豊福晋平氏講演スライドより(図はhttps://steam-japan.com/about/より引用)

豊福氏が紹介したアメリカのSTEAM教育事例のひとつは、小学校の国語でニュース制作を行いグリーンバックスクリーン撮影とビデオ編集を行うというもの。ICTが道具となり、クリエイティブスキルを自然と育む姿を想像すると、とても魅力的です。

今までICT活用の多くは教員主導の一斉学習のスタイルを置き換える形で使われてきましたが、1人1台の環境があれば、STEAM教育のプロジェクト型学習のように、学習者中心のさまざまな活用用途が広がります。

例えば、AI型ドリルをつかった個別最適化学習で知識技能の習得を効率化したり、プログラミングや動画制作などの表現制作に取り組んだり、クラウドを使った協働的な意見の整理や制作を行ったりすることがあげられ、具体的な用途をイメージすることができました。

現場の先生に寄りそうアドバイス

講演後には、奈良県立教育研究所主幹で文部科学省ICT活用教育アドバイザーの小崎誠二氏とアドビのデジタライゼーションマーケティング本部長小池晴子が加わり、豊福氏と意見を交わしました。

棚に並んでいる少年
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上段左より研修企画担当の奈良県立教育研究所指導主事の鹿島慎一氏、奈良県立教育研究所主幹の小崎誠二氏、下段左より豊福晋平氏、アドビ小池晴子

小崎氏は奈良県内の状況を複数のエピソードを交えて紹介し、「不安や心配をかかえる先生にアドバイスを」と問いかけます。豊福氏は、「最初のワクワク期を越えると、先生を困らせるようなことをする“やらかし期”が来ます。ずっと続くことはありませんから、そこでPCの使用をやめずに毎日使い続け、指導の機会だと前向きに受け止めて欲しいと思います。“やらかし期”がくるな、と予期して気持ちの余裕を持つのが大切ですね」と勇気づけました。

参加者からは「活用に対するモチベーションに先生の間で温度差がある」という悩みが寄せられます。豊福氏は「慎重な先生には、肩ひじをはらずにまず日常の置き換えでできることから始めて欲しいです。使っているうちに子ども達が勝手に応用して先生にアイディアを提案するようになる。そこで“自分が全部引っ張らなくてもいいんだな”、と気づくことが重要です」とアドバイスしました。これを受け小池は、「先生が先にすべて把握して何でも教えられるようにしておく必要はないんです。先生も子ども達と並んで一緒に走る、後ろから見守る、というように、先生の役割が変化してきていることを伝えたいです」と話しました。

研修全体を通して、学校教育におけるICTの活用は教育観の転換とセットになってこそ価値を持つということが幾重にも語られたのが印象的です。GIGAスクール構想で1人1台のPCを「文具」として手にした子ども達が、クリエイティブスキルを育み、学びや学校生活を豊かにしていくのが楽しみです。

研修の動画はこちら

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https://youtu.be/1-mUFH1Rih0

(文/狩野さやか)

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