創造力とデザインの力でCOVID-19に立ち向かう、世界各国の地方自治体

COVID-19で難しい状況に置かれている現在ですが、世界各地の地方自治体や公共機関から、クリエイティブとデザインの力が円滑・安全な行政の維持にひと役買っているという嬉しい知らせも届いています。この記事では、Adobe Government Creativity Awards(AGCA)の候補として報告された事例の中からエピソードをご紹介します。

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By Adobe Stock Japan

Posted on 03-22-2021

地方自治体や公共機関では日頃から多くの業務に対応していますが、COVID-19の爆発的な感染拡大を受け業務量が増大し、対応に追われることとなりました。困難な状況下でも基本的なサービスを提供し続ける必要があるだけでなく、事態の推移に応じて、地域住民や職員、業務の安全性を確保しなければなりません。

このような場合、情報伝達が大きな課題となります。ガイドラインや規制情報のほか、身近な生活圏や日常的な生活習慣にパンデミックが及ぼす影響について、明確かつ一貫性のある情報を継続的に伝えるための策を講じる必要があります。どのような状況でマスクを着用すべきか、どの公共施設が閉鎖されるか、事業を安全に継続するにはどうすべきか、避けるべき行動は何か、どのような場合に外出を自粛すべきかなど、幅広くて細かい情報を随時更新しながら人々に届けなくてはなりません。地方自治体の関係機関は、こうした公衆衛生を守る重要な方策についての情報をしっかり伝える役割の大部分を担う存在です。

とはいえ、包括的な意識向上キャンペーンの策定と実施は平常時でさえ簡単ではないので、パンデミック状況下ではなおさら困難を極めるでしょう。メンテナンス作業員や消防署員などのエッセンシャルワーカーは新しい安全対策のもとで業務にあたり、その他の働き手についてはテレワークで業務がおこなえるよう体制の整備が進んでいます。

難しい状況に置かれている現在ではありますが、世界各地の地方自治体や公共機関から、クリエイティブとデザインの力が円滑・安全な行政の維持にひと役買っているという嬉しい知らせも多数届いています。今回の記事では、Adobe Government Creativity Awards(AGCA)の候補として報告されたすばらしい事例の中からエピソードをいくつかご紹介したいと思います。

ランドウィック市議会(豪州):「ウイルスを広げず、思いやりを広げよう」

ランドウィック市議会(Randwick Council)は、オーストラリアのシドニー郊外の海沿い13地域をあわせた自治体で、地域全体のあらゆる環境規制、経済発展、コミュニティイベント、公共施設運営を統括しています。オーストラリア各地の住民に向けたCOVID-19対策の情報発信は、ランドウィック市議会のような地方自治体の役割です。

ランドウィック市議会で情報発信の調整責任者を務めるChelsea Hunter氏は、「パンデミックの煽りを受け、運動場も、野外ジムも、海岸のプールも閉鎖され、ビーチへの立ち入りにも人数制限が課されました。私たちは、公衆衛生に関する国からの指令を住民の皆様にしっかりと伝え、実際にどのような規制が適用されるのかを十分理解していただく必要がありました」と語っています。

このような状況では速やかな対応が求められるものですが、それと同時に、適切な形で情報を発信することもおろそかにできません。Hunter氏のチームは、急展開する状況に必死に立ち向かおうとしている住民に対して、権威を示し、堂々とした態度で応じる必要があると考えました。さらに、人々の不安感が増大していることを踏まえ、フレンドリーな発信方法であらゆる人に漏れなく情報が行き渡ることが大切だと判断。そのような認識のもとで策定されたキャンペーン「Spread Kindness Not Germs(ウイルスを広げず、思いやりを広げよう)」のビジュアルは、断固とした意志を感じさせるネイビーブルーに親しみやすい絵文字を組み合わせ、ひと目でわかる明快なデザインに仕上がりました。

イメージ提供:ランドウィック市議会

「Adobe InDesignPhotoshopLightroomPremiere Proを活用すれば、良質なキャンペーン素材をすばやくデザインできるだけでなく、対象者に応じて適宜情報に修正を加え、タイムリーな情報を届けるのも簡単です」とHunter氏は話しています。具体的には、ビーチ、公園、事務所、図書館などの公共スペースに閉鎖・規制情報を掲示するためのサイネージ素材、webサイトやSNSに掲載するデジタルグラフィックおよび動画素材などをアドビアプリで制作しました。

イメージ提供:ランドウィック市議会

さらにHunter氏は、このキャンペーンでの情報発信にはランドウィック市議会の人々を結束させる目的もあったといい、次のように語っています。「隣近所でお互い気楽に助け合いができるよう、近隣の家の郵便受けに投函するポストカードを作りました。また、キャンペーンの標語『Spread Kindness Not Germs』が入った青いTシャツも作りました。これは、図書館など公共施設の閉鎖によって職を失ってしまう方々に仕事を提供するために考案したものです。『青シャツのヘルパーさん』たちが公共スペースを巡回し、住民の皆様に安全性ガイドラインの遵守を呼びかけるようにしたのです」

イメージ提供:ランドウィック市議会

ランドウィック市議会のクリエイティブチームは自宅での作業を余儀なくされましたが、その際、Adobe Creative CloudストレージとAdobe Creative Cloudライブラリが役立ちました。「Creative Cloudライブラリのおかげでデザイナーの共同作業が捗りました。ドキュメントを一緒に更新するために集まったり、古くなった素材や更新反映前の素材を使って作業したりせずに済みました」とHunter氏は言います。

「Creative CloudストレージとCreative Cloudライブラリを活用することで、メンバーが孤立することなくチーム全体で作業を進めることができ、ファイルを常に最新に保ちながら整った状態で管理することができました」

ランドウィック市議会の情報発信調整責任者、Chelsea Hunter氏

効果的なキャンペーンはファンを生むものですが、「Spread Kindness Not Germs」の場合もその例に漏れません。「隣の自治体がこのアイデアをとても気に入ったというので、デザインを差し上げました。あちらでも青シャツをプリントして同様に使ってくださり、シドニーエリアの海に面した幅広い地域での一貫したメッセージ展開につながっています。ちょっとした注意で感染拡大が防げることの呼びかけ活動に広がりが生まれました」とHunter氏は語っています。

プレイサー郡(米国):「プレイサーを再オープン」

カリフォルニア州北部、サクラメントバレーとタホ湖畔を結ぶ場所にあるプレイサー郡は、アウトドアを楽しむ人々が滞在する場所として知られています。州の発令した移動制限が緩和され始めると、地域住民からは、一刻も早く平常時の活動に戻ることを強く望む声が上がりました。しかし自治体としては、安全性をしっかり確保したうえで、責任ある形で地元産業を再始動させなくてはなりません。

「自治体から公式に発せられる指令は、必ずしもわかりやすい形で書かれていません。そこで、『Reopen Placer(プレイサーを再オープン)』キャンペーンにおいては、やさしい言葉づかいと魅力的なビジュアル、そして誰が見ても明快で親しみやすい情報発信になるよう心がけました」と、プレイサー郡のデジタル広報スペシャリストであるDarren Huppert氏は語っています。

イメージ提供:プレイサー郡

プレイサー郡では、組織全体で20人の職員がCreative Cloudを活用しています。「Reopen Placer」キャンペーンはアドビのツールなしでは実現し得ませんでした。キャンペーンチームは、まずPhotoshop、Lightroom、InDesign、Illustratorを使ってロゴを作り、プレイサーの既存ブランドに関連するカラーパレットを用意して、多種多様な素材を制作しました。成果物をすべてAdobe Creative Cloudライブラリに保存することによって、レビューがスムーズに進行し、必要な画像や色見本など各種のデザイン要素にも簡単にアクセスできるようになったのです。

チームが生み出した最も重要な成果物の一つは、産業分野に特化した各種リソースを取り揃えたビジネスツールキットです。ベストプラクティスやガイダンス、消耗品やサービスの提供元情報、マスクなどの個人防護具(PPE)に関するリソース、よくある質問集(FAQ)、印刷用ポスターが含まれており、定期的な更新によって最新情報が反映されるため、事業者が公衆衛生に関する指令を守って業務をおこなうために役立ちました。

イメージ提供:プレイサー郡

グラフィックデザイナーが作成したデザイン素材をAdobe Creative Cloudライブラリで共有することにより、チームメンバーの誰もが活字メディアやデジタルメディアで素材を利用できるようにしました。Huppert氏が「Reopen Placer」のwebサイトを構築した際は、Dreamweaverを活用してカスタムデザイン要素を盛り込み、印象的なビジュアルで重要なメッセージの伝達効果を向上。新しいwebサイトは、事業者がカリフォルニア州のガイドラインや便利なツール、リソースを入手できる情報センターとなりました。また、デジタルチームはAdobe Sparkを使ってSNSコンテンツや動画をすばやく作成し、ネット上でメッセージを届けています。その活動の支えになったのは、Adobe Stockで利用できる豊富なグラフィックや画像でした。

「例えば、マスク姿の飲食店オーナーの写真が必要になったとします。そのようなときフォトグラファーに写真を撮ってきてもらうのは、コロナ禍によって難しくなってしまいました」と、プレイサー郡でグラフィックデザイナーとドキュメントソリューションマネージャーを務めるMirinda Glick氏は言います。

「Adobe Stockなら、まるで地元で撮ったように見える高品位のストック写真素材が見つかります。私たちが短納期のコンテンツ作成に対応できたのは、Adobe Stockがあったからです」

プレイサー郡のグラフィックデザイナー兼ドキュメントソリューションマネージャー、Mirinda Glick氏

事業者ごとの具体的な状況に合ったガイダンスを提供するために、Huppert氏は「Can I open?(ウチは営業再開して大丈夫?)」というツールをDreamweaverで開発し、プレイサー郡のwebサイトに設置しました。このツールでは、事業の種類を選び、状況を知りたい活動内容を指定するだけで、営業の可否や適用される規制について明確な情報を知ることができます。

Huppert氏、Glick氏とプレイサー郡の方々による取り組みは実を結びつつあり、webサイト、SNS、メールの指標にその効果が表れています。「ニュースレターの配信登録者が増え、Reopen Placerキャンペーン情報メールの開封率も46%に上りました」とHuppert氏は語っています。

イメージ提供:プレイサー郡

プレイサー郡はパンデミックに立ち向かって確かな成果を手にし、今後さらに大きな成果を築いていくための土台を確立しました。将来の話はさておくとしても、責任ある活動再開のための指針を地域の住民と事業者に示せたことは既に十分な成功といえるでしょう。

カナダの公共交通TransLink:「マスクは愛情のしるし」

TransLinkは、カナダのブリティッシュコロンビア州南部の海沿いエリアをサービス対象とする公共交通機関の運営当局です。平常時には、バンクーバー都市部の圏内およびそこに出入りする利用客を年間2億7,200万人も運んでいます。COVID-19の感染拡大で利用者数は極度に落ち込み、2020年には前年比83%減となりました。しかし、TransLinkのマーケティングチームとクリエイティブチームは従来にも増して精力的に活動し、安全な移動のために役立つガイドライン(ソーシャルディスタンシングや、体調不良時に外出しないことの大切さを知らせるメッセージも含む)を発信し続けました。

TransLinkのコーポレートマーケティングスペシャリスト、Holly Millar氏は語ります。「安心して公共交通機関を利用できるイメージを持っていただくにはマスク着用を奨励するのが非常に大切だということが、その頃にははっきり見えてきていました。そこで、『マスクを着けると自分の周囲にいる人の健康を守れる』というメッセージを発信しようと考えたのです」

マーケティングチームとクリエイティブチームにとってはチャンスです。COVID-19パンデミック状況下の非常運行体制を告知する真っ黄色のサイネージ作りなどから脱却し、クリエイティブな仕事ができるからです。両チームはキャンペーンに「Wearing is Caring(マスクは愛情のしるし)」というキャッチフレーズをつけ、公共交通の利用について安心感を抱いてもらえるように、親しみやすい落ち着いたトーンのピンク、ブルー、グリーンを基調にしたデザインを採用しました。

イメージ提供:TransLink

このオムニチャネルキャンペーンにおいては、Adobe PhotoshopとAdobe Illustratorを使って、独自のコンセプトとイラストを前面に出した屋外サイネージ、SNS投稿、デジタル機器向けアニメーションが制作されました。

両チームは、TransLinkの列車、バス、水上バス、乗り換え駅の至るところに掲出するポスター、立て看板、車内サインボード、デジタルサイネージのほか、バンクーバー都市部の路上にメッセージを発信するラッピングバスおよびフロアーステッカー、SNSおよびデジタル広告向けビジュアルを用意し、メディア向けイベントを開催して一気に展開しました。また、TransLinkロゴ入りマスクを作成し、地元インフルエンサーによる手渡し無料配布(ソーシャルディスタンスに配慮した方法で)を実施したり、フロントグリルに巨大なマスクを着けた特別なバスを1台走らせたりもしています。

このキャンペーンの話題はネット上で大きく広まりました。地元の出版物、ラジオ、オンラインメディアで何百回となく報道されたほか、あらゆる大手TV放送網でも取り上げられ、Facebook、Instagram、Twitter、TikTokではハッシュタグ#wearingiscaringがトレンドになりました。さらに、TransLinkの車両用巨大マスクやキャンペーン標語を使わせてほしいという問い合わせがあちこちの公共機関から寄せられるようになったのです。

何より肝心なのは、このキャンペーンが実際に効果を上げたことです。バンクーバー都市部ではTransLinkロゴ入りマスクの配布場所に行列ができ(もちろんソーシャルディスタンスは確保)、人々はマスクを着けて交通機関に乗るようになりました。6月から「Wearing is Caring」キャンペーンでマスク着用の習慣が広まったことは、少し後に市域で施行されたマスク着用義務化への地ならしにもなりました。TransLinkの調べでは、発令から2週間で92%もの利用者が実際に着用義務を守るようになっています。

「私たちは過去にも難しいキャンペーンをたくさん手掛けてきましたが、今回の案件は普通の広告キャンペーンとは違い、その狙いも普通の行動喚起とは違います。重要なメッセージと説得力のあるクリエイティブコンセプトを自らの力で組み合わせ、多種多様な優れたキャンペーン要素を作って展開できたことは喜ばしい限りです。その結果、住民の皆様に行動を促すことができただけでなく、TransLinkと北米圏内の様々な公共交通機関の間に有意義なつながりが生まれました」と、このキャンペーンのクリエイティブ責任者であるJulia Ouspenska氏は語っています。

パンデミック状況下で発揮されるデザインの力

世界的なコロナ禍にもかかわらず目覚ましい活動を展開しておられる地方自治体や公共機関の事例には、学ぶところが多いのではないでしょうか。変化が激しく困難な状況において、クリエイティブの力は、人々の安全と健康を守るうえで非常に大きな役割を担います。今回ご紹介したエピソードは、非常時には明確で説得力のある情報発信がきわめて重要であること、そして、アドビのツールを活用して生み出される訴求性の高いデザインには大きな力が備わっていることの証しなのです。

官公庁などにおけるその他のクリエイティブ事例については、Adobe Government Creativity Awards(AGCA)に関するこちらの記事も併せてご覧ください。

この記事は2020年11月30日にAdobe Government Communications Teamにより作成&公開されたHow creativity and design help local governments fight COVID-19の抄訳です。

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