ミヤマアユミ「Adobe Frescoはアナログ&デジタルのいいとこ取りなスケッチブック」

Adobe Frescoを使うクリエイターインタビュー企画「Adobe Fresco Creative Relay」。第13回は魅力的な女の子を水彩とデジタルを駆使して描くイラストレーター・ミヤマアユミさんが登場です。

イチゴが似合う、イチゴっぽい女の子

連載

Adobe Fresco Creative Relay

アドビではいま、Twitter上でAdobe Frescoを使ったイラストを募集しています。応募はかんたん、月ごとに変わるテーマをもとに、Adobe Frescoで描いたイラストやアートをハッシュタグをつけて投稿するだけです。
3月のテーマは「イチゴ」。フルーツとしてのイチゴ、イチゴのスイーツ、イチゴ柄のテキスタイルやパターン……みなさんがイメージした“イチゴ”をAdobe Frescoで描いて、 #AdobeFresco #イチゴ をつけてTwitterに投稿しましょう。
そして、この企画に連動したAdobe Frescoクリエイターのインタビュー企画、今回はイラストレーターのミヤマアユミさんにご登場いただきました。

イチゴが似合う、イチゴっぽい女の子

「イラストを描くときはいつも“女の子が魅力的に見えるように”というのを一番大切に、意識しています。
そのうえで、“イチゴ”という今回のテーマをネイルやアクセサリー、洋服に取り入れて、“イチゴが似合う、イチゴっぽい女の子”を描きました。
たとえば、ネイルや髪のグラデーションにはイチゴの赤と緑を、目とリップには赤を使い、洋服の模様はイチゴのつぶつぶをイメージしています。髪型にもイチゴらしいかたちを加えています。
女の子はAdobe Frescoだけで描いていますが、背景のイチゴはベースになる絵をAdobe Frescoで描いたあと、Photoshopのスマートオブジェクトを使って組み合わせて仕上げました。
いまの季節は、イチゴを目にする機会、食べる機会も多いですし、イチゴが気になる人も多いんじゃないかなと思っていて。時期にあったいいテーマだなと思いながら描きました」

イチゴが似合う、イチゴっぽい女の子

Photoshopとの出会いは高校生のとき

洗練された人物イラストをやわらかいタッチで描き、見る人を魅了し続けるミヤマアユミさん。
アナログ風な表現が多いことから、アナログからデジタルに移行したのかと思いきや、意外にもその原点にはAdobe Photoshopがありました。

「子どものころは、特別絵がうまいとか、いつも絵ばかりを描いていたということはなくて、絵を描くといっても、ノートに落書きするくらいでした。
雑誌やマンガ、イラストは好きだったので、よくそうした本を読んでいたのですが、制作環境のところによくPhotoshopって書いてあって。“Photoshopがあれば、こんなにきれいな絵が描けるんだ”という漠然とした憧れを持っていました。
それを叶えて、高校生のとき、Adobe Photoshop Elementsがついたペンタブレットを買ったのが、Photoshopとの最初の出会いです」

そこからミヤマさんのデジタルイラストレーションがスタートしたかというとそうではありません。当時の用途はおもに雑貨のデザインだったそうです。

「友だち同士で手書きの手紙を交換するのが流行っていたんです。わたしはファンシー雑貨がすごく好きだったので、Photoshopでオリジナルのメモ帳をデザインして、友だちとの手紙の交換に使っていました。
イラスト制作に使うといっても色を塗るくらいで、イラストレーターになりたいという想いはまだありませんでした」

東急百貨店 バレンタインコラボレーションイラスト東急百貨店 バレンタインコラボレーションイラスト(水彩)

東急百貨店たまプラーザ店 桜フェスティバル 撮影ブースパネルイラスト東急百貨店たまプラーザ店 桜フェスティバル 撮影ブースパネルイラスト(水彩)

阪神百貨店 クリスマスイベントビジュアル阪神百貨店 クリスマスイベントビジュアル(水彩)

雑誌・書籍を頼りに独学でPhotoshopを学ぶ

高校生卒業後は、ミヤマさんはイラストと同じくらい興味を持っていたデザインを学ぶために、デザイン学科へと進学します。

「イラストレーターになれるほど絵が飛び抜けてうまいわけではありませんでしたし、イラストレーターになれるというイメージがどうしても沸かなかったんです。その先の仕事を考えたときにイラストよりもデザイン・DTPのほうが仕事の募集もあるかなと思ったのも、デザイン学科を選んだ理由のひとつです。
授業でもPhotoshopの使いかたは教えてくれましたが、それ以外にも図書館に通い詰めて、雑誌『MdN』でPhotoshopの使いかたを学んだり、書籍で使いかたを調べるうちに、Photoshopならほかの人に教えられるくらいにくわしくなることができました。
Adobe Illustratorは……授業でも触れてはいたのですけれど、直感的に描くことができないので向いていないなと思っていました(笑)」

卒業後に入社したのはインテリア系の広告会社。そこではIllustratorを使い、デザインをするのが仕事でしたが、数年で退職することになります。

「フリーペーパーの表紙や挿絵を描かせてもらうことはありましたが、仕事として描く以上、内容、タッチを自由にできるわけではありません。当時は仕事が本当に忙しくて、帰ったら寝るだけ……という状態で、オリジナルの絵を描ける余裕はほとんどありませんでした。
もっと絵を描く時間がほしい、絵を描ける仕事をしたいと思って転職を決意しました。
振り返ってみると、このとき、“自分が描きたい絵が描けないフラストレーション”を自覚したことが、イラストを仕事していきたいと意識するきっかけにもなったとも思っています」

IZUMI BODY LABO コラボレーション企画イラストIZUMI BODY LABO コラボレーション企画イラスト(イラストをランジェリー製品化)

IZUMI BODY LABO コラボレーション企画イラストIZUMI BODY LABO コラボレーション企画イラスト(ランジェリー製品をイラスト化)

描きたい絵を仕事にできた携帯待受イラスト

ミヤマさんが次に選んだ仕事。これこそ、いまのイラストレーターとしてのキャリアにつながるターニングポイントになりました。

「仕事の内容は会社所属のイラストレーターとして、携帯の待受画像やコンテンツのイラストを描くというものでした。ここではイラストレーターそれぞれの個性を尊重してくださっていたので、自分のイラストの持ち味を生かすことができました。
と言っても、好きな絵を好きなように描くのではなくて、いま流行っているもの、ことを調査してモチーフにしたり、市場調査をしながら、“待受に使いたくなるイラスト”を研究して描いていました。
人気の度合いがダウンロードされた数などからわかるので、すごく自信につながりましたね」

MotecoBeauty Web用イラスト

MotecoBeauty Web用イラスト

左:JILL STUART Beauty webサイト用イラスト/右:うらら姫募集イベント用イラスト

左:JILL STUART Beauty webサイト用イラスト/右:うらら姫募集イベント用イラスト

“ほしい”と思ってもらえるイラストを描く……この需要を見極めながら描くミヤマさんの制作スタイルは、商業イラストレーターとして求められる資質を磨くうえで、非常に大きな経験となりました。
そうした活動を続けるなかで、少しずつミヤマさん個人への依頼が来るように。しかし、ここで完全にイラストレーター1本に絞ることはありませんでした。

「イラストを描くことはもちろん好きなのですが、外に働きに出るのも好きだったんです。
職場の人と話したり、仕事帰りに街を歩いたり、いろいろなお店に立ち寄ったり……そうしたところから入ってくる情報が、イラストのアイデアになりますし、平日・休日という感覚があったほうが生活にもリズムが出ますから。そうしたバランスを考えたとき、イラスト1本にしないほうがいいなと思っていました」

仕事とイラストをバランスよく。そのなかで描かれたファッションイラストは、2016年に『FASHION GIRLS』(発行:KADOKAWA)としてまとめられ、2021年5月には『花kotoba』(発行:KADOKAWA)の刊行も予定されています。

FASHION GIRLS miyaファッションイラストブック(発行:KADOKAWA)

クライアントワークとしてイラストを描く以外にも、ミヤマさんが大切にしている活動があります。それがオリジナルグッズの製作です。

「2012年くらいからデザインフェスタやCOMITIAに出展しています。
子どものころから雑貨が好きだったせいか、『絵を描きたい』の先に、『グッズを作りたい』という気持ちもあって。イラストレーターとして依頼をいただいて絵を描くという仕事も大切ですが、自分が好きなものを、好きな人に手に取ってもらえる。そして、それを持ち歩いてもらえる、身につけてもらえることがすごくうれしいんです」

ミヤマさんのオリジナルグッズ(水彩)

自分の絵を見るだけでなく、手元に置いてもらう喜び。「これからはもっと本の装画も手がけてみたい」というミヤマさんの言葉も、その想いから生まれた、ひとつの願いと言えるのかもしれません。

Adobe Frescoは最高のツール

アナログタッチなミヤマさんのイラストは、どのような制作環境で生まれているのでしょうか。あらためて聞いてみました。

「いまはデジタルとアナログ(水彩)が半々くらいです。
アナログで描くのは好きなのですが、仕事では時間も限られていますし、修正依頼に対応するのが難しいこともあります。その点、デジタルなら失敗しても描きなおしに対応がしやすいので、仕事はデジタルのほうが多いと思います。
デジタルで描くときのツールはPhotoshopがメインですが、Adobe Frescoもリリースされた2019年にはインストールしていて、当時から話題になっていた水彩ブラシでいろいろと遊んでいましたね」

ミヤマさんの制作スペース

初期からAdobe Frescoに触れてはいたものの、ツールには慣れる時間が必要。すぐに作品作りに、仕事に使えるようにはならなかったと話します。

「最初はなかなか思ったようなアナログ表現、水彩表現ができませんでした。
iPadにはほかにもペイントアプリを入れていたのですが、そのなかで“Adobe Frescoのほうがいいかも”と思うきっかけになったのは、新しいブラシを入れたときです*。ほかのツールでうまく表現できなかったことが、Adobe Frescoだと自然に描けて。相性もあると思いますが、線画も塗りも、自分のタッチには合っていると感じました。
それからは、“Fresco、最高”みたいな日記を書いて、いいところや改善してほしいところをリストにしているくらい使っています(笑)」
*Adobe Creative Cloud有償プラン契約者の場合、Adobe Frescoにブラシの追加が可能

ミヤマさんがよく使うブラシ

ミヤマさんが感じているAdobe Frescoのメリットはほかにもあります。

「同じ角度でずらしながら線を引ける定規ツールは、かんたんな立体物を描くときに便利ですし、矢印ボタンで1px単位で動かせる移動ツールも細かい調整に役立ちます。とにかく、かゆいところに手が届いている感じがします。
PhotoshopやIllustratorとの連携がしやすいのもいいところで、たとえば今回のイラストのようにAdobe Frescoで描いた絵を、Photoshopで仕上げるとき、Adobe Frescoで保存するだけで、Photoshopでも開けるようになりますし、ベクターブラシで描いたイラストもそのままデスクトップ版Illustratorに転送して編集することができる。これにはすごく感激しました。
Adobe Frescoのベクターブラシは、Illustratorで描く線よりもアナログで描くタッチに近い表現ができるので、今後、ベクターデータでの納品を求められたときに使えそうです」

パースのついた小物を描くときに便利な定規ツール

アナログ感を残しながらベクターデータとして描けるベクターブラシ

アナログ+デジタルのスケッチブック

絵の描きやすさ以外にも、イラストラフのコミュニケーションが効率的になったという側面もあるそうです。

「つい最近、水彩でイラストを描く仕事があったのですが、ラフの作成にAdobe Frescoを使ってみました。これまでのラフは“水彩で描くのでタッチは変わります”と伝えていたのですが、Adobe Frescoの水彩でラフを描くと、仕上がりとのギャップが今までよりも少なくなりました」

ミヤマさんはすでにAdobe Frescoで描いたイラストを仕事の納品としても活用。
いま、ミヤマさんにとって、iPad+Adobe Frescoはどのような位置付けなのでしょうか。

「小さいカットはAdobe Frescoで描いて納品までしているのですが、これがすごくよくて。パソコンで作業をするときはどうしても構えてしまいますが、iPadとAdobe Frescoならどこでも作業ができます。カフェでもどこでも、開いたところで作業が始められて、そこで完結できる。これはいままでにないメリットですよね。
気軽にアナログタッチの絵が描けるiPadとAdobe Frescoは、アナログとデジタルのいいとこ取りができるスケッチブックのような感覚です。これからもっとアナログ感、水彩感のある表現を追求して、Adobe Frescoで仕事が完結できる割合を増やしていきたいと思っています」

お茶の水女子大学 学生・キャリア支援センター ノベルティクリアファイル(左)・パンフレット(中・右/Adobe Fresco)

イラストレーター
miya(ミヤマアユミ)

web|http://miya.suppa.jp/
web(works)|https://miyamaayumiartwork.tumblr.com/
Twitter|https://twitter.com/miyaU_U

ミヤマアユミさん写真