コンフォートゾーン:Adobe Stockのビジュアルトレンドが描く、居心地のよい小さな世界

COVIDの蔓延により、様々な活動が家の中にシフトし、私達の生活環境は大きく変わりました。リモートワークによるインテリアの変化や、家族とのかかわり方など。「コンフォートゾーン」で描かれる最新のAdobe Stock ビジュアルトレンドを紹介します。

イメージ:Adobe Stock/Javier De La Torre Sebastian/Westend61

2021年に入り、過去10年間でじわじわと増えていた在宅勤務が急速に浸透してきました。アメリカでは平均して25%だった在宅勤務の割合が、一年間で一気に62%にまで跳ね上がったのです。この変化は世界の現状を反映しているともいえます。経済的には決して豊かではなくコミュニティを重視するミレニアル世代を中心に、自宅で楽しむ料理やアクティビティは以前からトレンドになりつつありましたが、昨年になって急増しました。引き金を引いたのは政府による移動制限です。

変化は思いがけず唐突に訪れたものの、多くの人がこうなることを予想していたのではないでしょうか。世界がますますデジタル空間へ移行していく中にあり、自宅が物理的な拠点となりました。私たちは自分たちが思っていた以上に、手で触れることのできるリアルな世界を欲していたのかもしれません。どこかの島に隔離されるよりも、外の生活への起点であり中継地点にもなる自宅のほうがよほど便利です。これは自宅が「ハブ」として機能する時代になったということであり、いまや自宅こそが生活における様々な軸のすべてが交わる中心だといえるでしょう。

Adobe Stockのビジュアルトレンド、コンフォートゾーン(Comfort Zone)では、人々がニューノーマルにうまく適応しながら、暖かく、居心地のよい自宅でクリエイティビティを発揮し、人と人とがつながる世界を描いています。

遊びもクリエイティブも、自宅で完結

私たちは仕事と家庭を分けて考えがちですが、2つを分けてしまうと現実生活の実体は見えてきません。人生は複雑で、紆余曲折ばかりです。職場から一歩外に出て自宅からも離れると、行きたい場所、やってみたいアクティビティや趣味、取り組むべき問題に溢れています。年齢、職業、境遇は人それぞれですが、仕事や家庭以外の趣味に打ち込むことで生活を豊かにするのは誰にとっても同じです。スポーツに励んたり、スタジオスペースをレンタルして趣味を楽しむこともあるでしょうし、地元のカフェで音楽を演奏したり、演劇や映画を見に行ったりすることもあるでしょう。

COVID-19はピアノのリサイタルやサルサのダンス教室の延期を招いたかもしれませんが、趣味を楽しむ時間や空間まで私たちから奪うことはできませんでした。コンフォートゾーンのコレクションには、自宅にいながら楽しい時間を過ごすための空間作りを描いた画像、デザイン、ビデオが多数収録されています。バレエの練習など、以前ならダンススタジオでおこなっていたアクティビティも、今では自宅のリビングでおこなわれるようになりました。リビングは他にもジムやレコーディングスタジオやスパとしても活用されています。キッチンを散髪屋として、寝室を柔軟性の高い自宅オフィスとして兼用している人もいるでしょう。

イメージ:Adobe Stock/Ronnie Comeau/Stocksy.

コンフォートゾーンとは、単に自宅で何かをするということでなく、クリエイティビティ、遊び、エンターテイメントを組み込み、自宅の概念を新たに拡大したトレンドです。昨年は質素に過ごした分、今年は少しぜいたくをしたいという人も多いでしょう。キャンドルやアロマテラピーヨガや瞑想をする空間に置いたり、リビングを飾り立てたりして、より自分らしい空間作りにいそしむ方も多いのではないでしょうか。

イメージクレジット:左:Adobe Stock/MaaHoo Studio/Stocksy 、右:Adobe Stock/Marta Lebek/Stocksy

働き方の変化で、在宅勤務が増加

2020年よりはるか遠い昔の時代、自宅で仕事をするのはどこの地域でも一般的でした。最近の研究によると、80%の人が自宅での仕事を楽しんでいるそうです。アメリカ人の80%が同意することなどめったにないので、これは珍しい現象です。在宅勤務メリットは、個人の裁量で時間を自由に使えること、これに尽きます。通勤にかかる時間がなくなり、労働環境も自分好みにコントロールできるようになります。

しかし、いくら在宅勤務が多くの人にとって快適だといっても、ほんの数ヶ月で社会の働き方を根本的に転換できるものではありません。在宅勤務といえば、だらだらと続くリモート会議、画面を見続けることによる眼精疲労、電話会議、業務管理ソフトの導入というイメージが定着してしまいました。また自宅の本棚やリビングが同僚やクライアントにさらされることも想定外だったはずです。今年、大手IT企業でテレワークがニューノーマルとなってきたことにより、働き手は労働環境の見直しを図り、仕事をする空間を真剣に考え始めるようになりました。

イメージ:Adobe Stock/Hero Images/Hero Images

そのため、「コンフォートゾーン」というテーマにした作品は、このようなムーブメントを反映し、職場で仕事に追われていた日々から「在宅勤務」への移行を描いています。そこには快適で、明るく、機能的なワークスペースを構築している人々の様子が垣間見られます。1年前の私たちなら、ラップトップに椅子とテーブルがあれば満足していたかもしれません。自宅が学校、ジム、レストラン、スパ、オフィスをも兼ねるようになり、個人の空間を作る楽しみは増えています。シェアルームもこの例外ではないでしょう。デジタル上でやり取りする際に高品質のビデオや音声が必要となる業界では、マイク動画配信の機材に投資する人もいます。

イメージ:Adobe Stock/Hero Images

つながりとコミュニティの内と外

仕事以外にも、大きな変化がありました。ホリデーシーズンには毎年欠かさず祖父母、叔父、いとこなどの親類に会っていた人でも、昨年はそれが叶わなかったという人は多いのではないでしょうか。皆で集まって料理して、一緒に食卓につく、毎年恒例の家族の交流で絆を確かめ合ったものですが、ソーシャルディスタンスの必要性から実際に会うことは難しくなってしまいました。Netflixの視聴会、Zoomトリビア、WhatsAppのボイスメモなど、最初は目新しかったものも徐々に当たり前になっていきました。しかし、バーチャルでも対面でも、私達は常に社会的な絆を改善し、強化しようとしているということもまぎれもない事実ではないでしょうか。

そのため「コンフォートゾーン」をテーマにした作品には、テクノロジーが、バラバラに住んでいる家族をつなぐ大きな役割を果たしたという事実が描かれています。別々の場所にいる祖父母と孫でも、画面を共有することによってつながることができます。テクノロジーのおかげで、ささやかな時間をともに過ごし、時間と空間を超えて喜びを分かち合えるようになりました。またビデオゲームをしたり映画を視聴したりすれば、カラフルなデジタル世界の体験を共有することも可能です。

イメージ:左:Adobe Stock/Hero Images/Hero Images、右:Adobe Stock/Daniel Sierralta/ADDICTIVE STOCK

一方で、現実世界のアナログ的なつながりでは、どうすれば限られた空間で家族や友人ともっとつながれるかを皆が探し求めています。「コンフォートゾーン」で描かれているのは、人と人とが屋内で遊び、つながる時間です。ダンスパーティー音楽の合奏など部屋が賑わうアクティビティは、空間を変容させ、私たちの心を解き放ちます。家の中で一緒に読書スペースを作ったり、おもちゃのボートを作ったりするシンプルなアクティビティは、キーボードから手を放して(デジタルではなく)物理的な空間を共有するよい機会となるでしょう。

イメージ:左:Adobe Stock/Jacob Lund 、右:Adobe Stock/Marta Lebek/Stocksy

自宅をもっと快適な空間にするために

COVID-19で生活が脅かされている現在でも、私たちは希望を持ち、前を向くことができます。ただその一方で、ウイルスの影響は何世代にもわたって続いていくことでしょう。COVID-19は、主要なmRNAワクチンの開発を促し、過去数十年取り組んできた炭素排出量を大きく削減するなど、これまでにない変化を引き起こしました。しかし、これは来るべき未来の前触れであるともいえます。世界的なパンデミックがあろうとなかろうと、私たちを取り巻く社会、テクノロジー、経済は在宅勤務を積極的に推進していたのですから。

今回のトレンドである「コンフォートゾーン」では、そういった我慢して耐え忍ぶ姿だけではなく、私たちがこの変化に向き合い、生活を主体的にコントロールし、より豊かで実り多く、楽しいものにしようとする姿も描いています。自宅は外の世界から断絶されているわけではありません。むしろ外の広い世界に出ていくための居心地のよい小さな世界になったのです。

イメージ:Adobe Stock/Stocksy

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この記事は2021年3月16日にBrenda Milisにより作成&公開されたGet in the Comfort Zone: Adobe Stock’s visual trend celebrates home as cozy microcosm抄訳です。