映像編集ワークフローを新たな次元へと導くPremiere Pro-Netflix 長編映画『Mank/マンク』-

Premiere Proで編集された、フィンチャー監督の最新作であるNetflixの長編映画『Mank/マンク(原題:Mank)』の編集事例をご紹介します。

Black and white photo showing a man and woman dancing.

画像提供:Netflix

By Reiko Tanaka

Posted on 04-14-2021

映画『市民ケーン(原題:Citizen Kane)』は、その撮影技術、ストーリーテリング、そして時代を先取りした視覚効果により、長らく傑作として評価されてきました。この1940年代の映画にオマージュを捧げるのにふさわしい監督がいるとしたら、同様の特徴で高い評価を得ているデビッド フィンチャー(David Fincher)氏をおいて他にありません。フィンチャー監督の最新作であるNetflixの長編映画『Mank/マンク(原題:Mank)』は、同氏の亡き父、ジャーナリストのジャック フィンチャー(Jack Fincher)氏の脚本に命を吹き込んだ作品です。

Netflixによる映画紹介は、「アルコール依存症の脚本家ハーマン・J・マンキウィッツが『市民ケーン』の仕上げを急いでいた頃の1930年代のハリウッドを、機知と風刺に富んだ彼の視点から描く」となっていますが、この「映画についての映画」では、フィンチャー監督の作品を特徴づける、ストーリーテリングとビジュアルスタイルの両面における独特のアプローチが随所に見てとれます。

フィンチャー監督の特徴的なスタイルを実現するために協力しているのは、ポストプロデューサーのピーター マブロメイツ(Peter Mavromates)氏、エディターのカーク バクスター(Kirk Baxter)氏、ファーストアシスタントエディターのベン インスラー(Ben Insler)氏、アシスタントエディターのジェニファー チャン(Jennifer Chung)氏、その他多数のアシスタントエディターやVFXアーティストなど、才能あふれるポストプロダクションチームです。彼らは、『マインドハンター(原題:Mindhunter)』、『ゴーン・ガール(原題:Gone Girl)』、『ソーシャル・ネットワーク(原題:The Social Network)』、『ドラゴン・タトゥーの女(原題:The Girl with the Dragon Tattoo)』、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生(原題:The Curious Case of Benjamin Button)』、『ハウス・オブ・カード 野望の階段(原題:House of Cards)』などの作品を手がけています。

マブロメイツ氏は、『Mank/マンク』の共同プロデューサーとして、タイミング、予算、スケジュールだけでなく、映像編集、視覚効果、仕上げの各部門間の統合も監督しました。インスラー氏は、プロジェクト全体のワークフローの統合を担当しました。チャン氏は、ポストプロダクションの過程で、デイリーラッシュの準備、編集チームのサポート、ならびにサウンド、カラー、視覚効果の各チームとの連携を行いました。

このチームは、常にワークフローの改善に努めている、とインスラー氏は語ります。「私はポストプロダクションの仕組みが大好きなんです。ボトルネックを解消できる方法や、より効率的なやり方があれば、それに全力で取り組みます。もう、趣味のひとつですね」。

Adobe Premiere Proのプロダクション機能を活用して編集された『Mank/マンク』の制作で、インスラー氏はまさにこのような機会に恵まれました。すでにPremiere Proを長年使用していた編集チームにとって、プロダクションは、プロジェクトの整理、コラボレーション、スケールアップをさらに容易にしてくれます。また、クリップの重複を避けたり、大きなプロジェクトを小さなセグメントに分割することでファイルのオープンや保存を高速化するなど、数々の問題を解決してくれました。

プロダクション機能は、チームの効率性を新たなレベルに引き上げました。「プロダクション」パネルは、マルチプロジェクトのワークフローを管理するハブとして機能します。必要なすべてのPremiere Proプロジェクトファイルが1つのプロダクションフォルダにまとめて保存されるため、あちこちに散在するフォルダを探しまわる必要はなくなりました。また、複雑なワークフローであれば、それを管理が容易な複数のプロジェクトに分割してチームに割り当てることも可能です。その場合でも、各メンバーは他のメンバーが作業している内容を確認しながら作業することができました。アセットは同じプロダクション配下のプロジェクトの間で簡単に共有でき、変更は同期されてプロダクションフォルダに反映されました。

「プロダクションの優れた点のひとつは、プロジェクト間での相互参照です。プロジェクトの容量は小さく抑えられたままで、すべてがオリジナルの場所に対して相互参照されます。シーンプロジェクトはシーンプロジェクトのまま、そこからリールを作るときには、複数のシーンプロジェクトから組み立てられたシーケンス情報だけがリールプロジェクトに保持される、といったかたちです。さらに、いつでもオリジナルのプロジェクトを参照できるため、並行して作業を進めることができます」と、チュン氏は証言します。

サウンド、デイリーラッシュ、VFX、グラフィックといった異なるフローごとに、別々にプロジェクトを作成することもできます。そのようにしておけば、例えば特定のオーディオファイルを見つけたいときに、使われているすべての種類のアセットが含まれているプロジェクトを横断して探さなくても容易にたどることができます。

インスラー氏は、こう補足します。「『Mank/マンク』では、使われていない余計なシーンフォルダがそこに35個も混ざっているような状態ではなく、リール#3のプロジェクトにはリール#3のシーケンスだけが含まれるところが気に入っています。つまり、僕たちのリール単位のプロジェクトでは、使用を検討したすべての音楽データがそのまま残っていたり、あるいはリール#4で使った同じ音楽データの実体が重複して入っていたりすることはありませんし、そもそも音楽はすべて音楽プロジェクトフォルダ内に保持されます。あらゆる面で、自分が担当している作業によりフォーカスできるようになり、関係のないファイルの大群から選り分ける作業の繰り返しから解放されたのです。」

チームはまた、2つの演技をつなげたり、進行ペースを落としたり、ストーリーの展開を少しずつ変えて検討するといった演出の微調整に、分割画面表示を活用しました。バクスター氏は、分割画面を頻繁にアシスタントエディターに送り、Premiere ProやAdobe After Effectsによるさらに細かな調整を依頼しました。

バクスター氏は、こう振り返ります。「Premiere Proの機能は柔軟なので、アイデアをすぐに画面に反映させることができます。おかげで、決めた演出プランをどう実現するかではなく、どの方向で演出するかの試行錯誤により多くの時間を割けるようになりました」

コロナウイルスのパンデミックが発生したとき、『Mank/マンク』のチームは幸運にも撮影を終えたばかりだったため、ポストプロダクション体制は、撮影済み素材がすべて揃った状態でのリモート作業というかたちに移行しました。とはいえ、この移行は大掛かりで、なおかつ迅速さが求められました。通常は作業デスクを囲んで行われる会話がすべてデジタルで置き換えられたのです。ロサンゼルス全域に散らばったチームメンバー全員が、あたかも同じビルで働いているかのように機能する必要がありました。

幸いなことに、このチームは、移行を容易にするためのリモートツールとプロセスをすでに運用していました。『Mank/マンク』では、フィンチャー監督の他の多くのプロジェクトと同様、迅速でデジタルなリモートコラボレーションのために、すでにPIXシステムを活用していました。インスラー氏によれば、Premiere Proのプロダクション機能でプロジェクトファイルを整理し、コラボレーションをおこなう方法はリモートワークフローと相性がよく、仕組みを容易かつ迅速に構築できたといいます。

次のステップは、リモートワークフローのあらゆる面を強化することでした。H.264形式に軽量化されたメディアのコピーが提供された編集チームは、ローカルで作業を行いながら、高度な処理能力が必要な場合は、メインオフィスのコンピュータとのリモートVPN接続を活用しました。また、リモートワークフローを最適化するために、サードパーティツールのResilio Syncを使ってリアルタイムに同期したり、プロジェクトファイルとリンクしないメディアは、Chronosyncを使って同期やバックアップを行ったりしています。

このようにシームレスなプロセスを実現できた背景には、長年一緒に仕事をしてきて互いを熟知していることや、質の高い仕事を追求し、コラボレーションを尊重する文化が培われていたこともあります。クオリティを担保するための試写には全員が参加し、誰の意見も些細なことと切り捨てられたり、間違っていると拒否されることはありません。全員が積極的に意見を出し、必要ならば自ら手を挙げるのです。

インスラー氏は、こう結びます。「私たちのポストプロダクションチームは、ある意味、潜水艦の乗組員のようなものです。魚雷の装填、潜望鏡の操作、航路の設定など、専門分野は別々でも、全員が多くの知識を共有できているので、必要に応じてすぐに交代して互いをサポートでき、艦をスムーズに進められるんです」

『Mank/マンク』の映像エディターにスポットライトを当てたYouTubeビデオ(英語:日本語字幕利用可能)も併せてぜひご覧ください。

この記事は2021年3月9日(米国時間)に公開されたNetflix feature film Mank takes editorial workflows to a new levelの抄訳です。

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