bechori「レタリングで書きたい線、そのすべてが揃うAdobe Fresco」Adobe Fresco Creative Relay 14

Adobe Frescoを使うクリエイターインタビュー企画「Adobe Fresco Creative Relay」。第14回は文字に彩りを与えるレタリング作家・bechoriさんが登場です。

By Takashi Iwamoto

Posted on 04-20-2021

連載

Adobe Fresco Creative Relay

アドビではいま、Twitter上でAdobe Frescoを使ったイラストを募集しています。応募はかんたん、月ごとに変わるテーマをもとに、Adobe Frescoで描いたイラストやアートをハッシュタグをつけて投稿するだけです。

4月のテーマは4月10日「フォントの日」にちなんで「フォント」。文字、描き文字、レタリング……自分ならでは文字をAdobe Frescoで描いて、 #AdobeFresco #フォント をつけてTwitterに投稿しましょう。

そして、この企画に連動したAdobe Frescoクリエイターのインタビュー「Adobe Fresco Creative Relay」、第14回はレタリング作家のbechoriさんにご登場いただきました。

フォントの文字を、再び手書きで描き出す

「この作品は、いろいろなスタイルのフォントをミックスしてカラフルに仕上げたら、僕らしいレタリングになるんじゃないかなと思って書いたものです。

僕はフォントを“規則正しく、再現性がある印刷文字”と捉えているのですが、まったく同じものを作ることはできない手書きで、あえてその文字を再現することで、フォントの文字に手書きならではの味を加えてみました。

ただ、フォントのように整った文字ばかりでは味気ないので、あえて『Adobe』だけは自分の文字として手書きすることでデザインのアクセントにしています」

bechoriさんは今回の作品作りにあたり、さまざまなフォントを参考に、まずはそのかたち、特徴を捉えることからスタート。各テキストに割り当てる文字のスタイルを探っていきました。

そのうえでフォントの文字のかたちを、再び手で書き直すというユニークなアプローチに挑んでいるのです。

「書きかたは文字のスタイルによってさまざまです。

たとえば、『Create』は基本になる文字を一気に書いてしまってから、線を太くして中にグラデーション状の模様を描いていますが、『STYLE』はアウトラインを描いてから中を塗り、ハイライトを描き加えています。

使っているブラシは2種類で、『Adobe』の文字だけ筆圧で線に強弱がつくブラシを使い、ほかの文字はひとつのブラシで仕上げました。あえてブラシの種類を絞ることで、“ブラシひとつでもここまで違うスタイルのフォント、文字が描けるんだよ”ということが表現できたと思っています」

“文字のかたちの絵を描いている”という感覚

さまざまなペンとインクを使い分け、多彩な文字で見る人を惹きつけるレタリング作家・bechoriさん。描き出されるその文字は、ときに情感をともない、ときに風景のように詩的です。

これほどまでに表現力豊かなレタリングの世界にどのようにして足を踏み入れることになったのか、その経緯を伺いました。

「イラストレーターなら、多くの場合、“子どものころから絵を描くのが好きだった”というエピソードがありますが、実はレタリング作家やカリグラファーも同じなんじゃないかなと思っています。

僕は小さいころから文字を書くのがとにかく好きだったんです。先生が黒板に書いたことをノートに書く、その行為がすごく好きでした。

特に、きれいな文字で書くということにすごくこだわりがあって、小学3年から中学1年まで習字教室にも通っていました」

2色のペンを交互に、まじりあうように描いた作品

きれいな文字を書きたい……その衝動は、習字を習うだけにとどまりませんでした。

「小学生のころは、よく新聞の大見出しや折り込み広告の文字をトレースしていました。

明朝体は縦が太くて、横が細いんだなとか、トメ・ハネ・ハライはこういうかたちなんだなとか、そうしたフォントごとのスタイルの違いを楽しみながら書いていたのですが……いま思うと変な子どもですよね(苦笑)。

いろいろなかたちの文字があるのに、ひとつのスタイルとして統一されている。フォントの文字が持つ、そうした規則性に美しさを感じていたんだと思います。

僕にとって文字を書くという行為は、絵を描いているような感覚に近い。フォントの特徴に則って、線の集合体を描いているようなイメージですね」

そうしたことを繰り返しているうちに、bechoriさんはきれいな文字を、いろいろなスタイルで書くことができるようになっていきました。

「“ワープロみたいな文字だね”と言われることもあれば、丸文字のようにかわいらしく書くこともあって。そのときどきで何種類かの文字を書き分けることもありました。

そうすると周りの人が“うわっ”と驚いてくれる、そのリアクションがおもしろかったですね」

筆ペンの紺インクをオレンジのペンにつけながら描いた作品

学年中に出回ったbechoriさんの手書きノート

ノートを自分なりにきれいにまとめ直す。そうしたスタイルは中学、高校と進んでも変わることはなく、習字とトレースで鍛えた文字の美しさは、学校でも話題になるほどだったそうです。

「高校のとき、僕が書いたノートが定期テスト前に出回るということがあって。最初にノートを貸した人のコピーを、さらに別の人がコピーして……というのが繰り返されたのでしょうね。いつの間にか、一夜漬けでテストに臨む人の最後の切り札のようになっていました(笑)。

これは自分なりにまとめていたものが、ほかの人にとってもわかりやすかったということ、自分が書いたもの(文字)を喜んでくれる人がいるということを知った原体験でもあります」

そのときのノートは残念ながらもう残っていませんが、高校から大学へと進んだあとも、bechoriさんのノートは変わらず学年に出回っていたそうです。

大学卒業後は一般企業に就職し、しばらく書き文字とは離れていたbechoriさんですが、転職先のスターバックスコーヒーで再び、文字を書く機会に恵まれました。

「店頭の黒板にそのときのオススメやメッセージを書いていました。

チョークやマーカーで黒板に書くことはそれまでなかったので、最初はトライアンドエラーの繰り返しでしたが、描いた黒板がきっかけでオススメのデザートを売りきったことがあって。

手書きの文字、絵が人を動かすことができるということを実感しました」

bechoriさんが当時書いていた看板

看板の文字はそれまでのノートとはまったく別のスタイルの文字。

しかし、子どものころから新聞、広告の文字をトレースしては自らの書風として取り込んでいたbechoriさんにとって、大きなハードルとはなりませんでした。

それから再度の転職をし、時間に余裕ができたbechoriさんが出会ったもの、それがレタリング、カリグラフィーでした。

「趣味になるものを探そうとwebを巡っているとき、海外の方が万年筆を使ったカリグラフィーの動画をアップされているのを見かけたんです。

興味を持って調べてみると、使われている道具はどれもパイロットさん、三菱鉛筆さん、ゼブラさん、呉竹さん……と日本のメーカーばかり。

これなら自分でも道具を揃えられそうだと思って買い集め、動画を参考に見様見真似で書くようになりました。

そのときに書いたものを備忘録代わりにInstagramにアップしていたら、そこで少しずつリアクションをいただけるようになって。それが楽しくて、毎日書くようになったんです」

bechoriさんはいま、InstagramだけでなくTwitterでも多くの作品がアップされていますが、注目したいのは作品に加えて、その道具。ときに100円均一ショップの紙に、どこにでもありそうなペンで書くことさえあります。

「特別な道具を使わなくても、身近なペンでこんなふうに書けるんだよ、日本の画材は優秀なんだよ、ということも伝えたいと思っています。いまは万年筆のインクひとつとっても非常に多くのバリエーションがありますから」

はじめて雑誌に掲載された作品

身近なもので誰もが目を止める美しい文字を描き出す……bechoriさんの活動は徐々に多くの人に知られるようになり、メディアへの掲載だけでなく、仕事としての依頼も届くようになります。

「自分の文字が仕事になるということに気づいたんです。

それなら不安定でもいいから自分の好きなことを仕事にしたい。そう決意して、2019年にレタリング作家として独立をしました」

bechoriさんがレタリング、カリグラフィーに使う道具たち(一部)

限りなくアナログに近い感覚で書けるAdobe Fresco

bechoriさんの作品は、アナログによる手書きならではの味わいが大きな魅力のひとつですが、近年、デジタルによるレタリングにも力を入れています。

「意外に思われるかもしれませんが、レタリング作家はアナログとデジタル、両方できる人が多いと思います。データ納品を求められるケース、納期が短いケース等、理由はさまざまですが、デジタルならではの利点、デジタルでしかできないこともたくさんありますから。たとえば、写真と組み合わせてレタリングをしたり、写真の上に文字を書くことはアナログではできません。

今回の作品のようにいくつものスタイルを組み合わせる、複雑なレイアウトの場合もデジタルのほうが効率的です。アナログでは少しでも間違えたら、イチからやり直しですからね。

レイヤーに分けておけば配置の調整もかんたんですし、間違えてもやり直せる。これはデジタルの一番いいところです」

Adobe Frescoで書いてはじめてInstagramにポストした作品

今回の作品のようなレイアウトをアナログで作る場合、ラフを何枚も書いて、文字のかたちと配置を検討し、そのうえで本番に臨むそうで、こうした構成の検討はときに数日を要するときもあります。

「Adobe Frescoならその作業が1時間くらいで終わってしまう。すごく効率的ですよね。

黒板や看板のような大きいものに書く仕事のラフでは、すでにAdobe Frescoを投入していて、イメージの共有をしています」

いまではスムーズにAdobe Frescoを操るbechoriさんですが、iPad+Apple Pencil導入直後の印象はいいものではありませんでした。

「iPadを購入してすぐにいろいろなペイント系アプリを使ってみたのですが、根がアナログ人間な自分にとっては操作がわかりにくい、Apple Pencilを走らせてから実際の筆記線ができるまでのわずかなタイムラグが気持ち悪く、書き心地も味気ないと、いい印象ではありませんでした。

でも、Adobe Frescoを使ってみたら、操作は直感的でわかりやすく、複雑なエフェクトを加えなくても自分が書きたい線がスムーズに書くことができました」

そしてどれをどう使えばいいのか迷うほど多いAdobe Frescoのブラシ。

それは、書き文字のプロフェッショナル・bechoriさんをも納得させるものでした。

「ブラシの種類がとにかく豊富なので、試すのも楽しかったですね。標準のブラシ以外にも、興味のあるブラシはダウンロードして、全部試し書きをしましたが、筆記線にはこだわりがある自分から見ても、書きたい線はすべて網羅していました。

あらゆる画材が揃うAdobe Frescoで、ペンやブラシを使い分けながら書けるというのが、Adobe Frescoを使う大きな魅力ですね。

デジタルツールだけどアナログと同じ感覚で使えるAdobe Frescoなら、デジタルならではのあらたなレタリング表現を作り出せるんじゃないかと思っています」

bechoriさんオススメのAdobe Frescoのブラシ

レタリング作家
Bechori
Twitter|https://twitter.com/bechori777
Instagram|https://www.instagram.com/bechori777
YouTube|https://www.youtube.com/channel/UC1dbyA3Zv5-rikNEpExOM6A
Web|https://lit.link/bechori

Topics: Fresco Relay, クリエイティブ,

Products: Fresco, Creative Cloud, Photoshop,