成長し続けるモバイルデザインツールが変革する、新しいクリエイティブワークフロー

すべての成功するテクノロジーにはターニングポイントが存在します。モバイルデバイス向けクリエイティブツールに関してはその時が来ているとアドビは考えています。

すべての成功するテクノロジーの発展プロセスには、ターニングポイントとなる瞬間が存在します。技術、デザイン、利用環境、市場ニーズの理解のすべてが成熟する瞬間です。すると突然、その技術が単に利用可能であるだけでなく、不可欠なものに見え始めるのです。モバイルデバイス用のクリエイティブツールは、今まさにその転換点にあると言えるでしょう。

どこにいてもデザインできることは、間違いなくモバイル向けデザインツールが便利である大きな理由のひとつです。しかし、理由はそれだけに留まりません。いくつか例を挙げてみましょう。

- テクノロジー: 前世代のモバイルデバイスは、画像編集や複雑なイラストの作成などに求められる高い要求への対応が困難でした。最新のモバイル CPU は非常に強力になりました。ほとんどのクリエイティブな作業をこなすのに十分な能力を提供できます。

- インターフェイス: 非常に精度の高い Apple Pencil と iPad の組み合わせは、自然で直感的で親しみやすいインターフェースを実現します。鉛筆やクレヨンを使って紙に描くという多くの人が経験しているクリエイティブな作業と同じような感覚でデジタルツールを利用できます。

- 可用性:手元のモバイルデバイスをタップすれば、すぐに画面が表示され、思いつくままにクリエイティブな作業を始められます。斬新なアイデアが頭の中に浮かんでいるのはほんの一瞬です。コンピューターの場所まで移動して、アプリ画面が表示されるまでに閃きが消えてしまった経験には誰しも覚えがあるでしょう。

- 常時接続: ほとんどのモバイル機器はネットワークに常時接続されています。そのため、クリエイティブな作業に必要な素材を探したり、他の人々とアイデアを共有して協業する行為が手軽に行えます。

私たちみんなが家に閉じこめられているときに、モバイル製品がブームになっているのは皮肉に感じられるかもしれません。しかし、行ける場所が限られているとはいえ、常にデスク(あるいはソファなど、一日の大半を過ごす場所)にかじりついてるわけにはいきません。最近とあるユーザーは、iPad で Illustrator を使うことについて次のように語りました。「庭に座って、iPad を手にしてクリエイティブなことを始めるのが気に入っています。それは自分にとって、とても自然なことに感じられます」

新しいクリエイティブの方法

新しい働き方を可能にすることは、アドビが Creative Cloud に力を入れている主要な理由のひとつです。アドビの製品チームは、モバイル環境でのクリエイティビティをよりパワフルで、より協業や共有が容易なものにするために、新しい機能やサービスの開発に注力しています。

もうすぐ利用可能になる予定の素晴らしい新機能のひとつは、Adobe Fresco のアニメーションです。Fresco は iPad、Windows タブレット、そして iPhone で利用可能なドローイング&ペインティングアプリケーションで、油絵具、水彩絵具、チャコールなどで描いたキャンバスの見た目、そして動きを再現します。

アニメーション機能が搭載されれば、Fresco で描いたり塗ったりした絵画に動きを加えることができるようになります。個々のレイヤーに独立したタイムラインを適用したり、描いたパスに沿って絵の一部を動かせます。下の Kyle T. Webster が作成したホタルのアニメーションはその一例です。

クリエイティブな作業に役立つ Photoshop の強力な機能としてブラシがあります。ブラシは非常に汎用性の高いツールで、写真の合成、レタッチ、マスキングなどの作業を支援し強化します。キース・ヘリングに触発されたフェルトチップマーカーブラシから芸術的なペイントスパッターまで何百種類ものブラシが用意されているだけでなく、自分だけのブラシをつくって作品を完全にオリジナルなものにすることもできます。ひとたびお気に入りのブラシを手にしたら、いつでも使えるようにしておきたいと思うことでしょう。そこでもうすぐ、自分の選んだブラシを Photoshop iPad 版に読み込める機能を追加する予定です。つまり、デスクトップの Photoshop で使用しているすべての素晴らしいブラシを、iPad でも手元に置くことができるのです。

アドビのモバイルアプリケーションに追加される新機能は、多くの場合にユーザーからのフィードバックがきっかけです。たとえば、この数カ月の間に iPad 版の Illustrator と Photoshop の両方に、カンバスを回転させる機能を追加しました。これは些細な変更に見えるかもしれませんが、複数のユーザーから、向きを変えてより自然な方法で絵を描くことができるのは大きな利点だと言われました。実際、この機能は非常に好評であるため、デスクトップ版の Illustrator にも同様の機能を追加しようとしています。

このようにアドビは、ユーザーと一緒にモバイルアプリケーションをつくり上げることに真剣に取り組んでいます。そのため、ユーザーが簡単に新機能を提案できる仕組みを構築しました。また、開発中の新機能についての情報を定期的に更新しています。

その他にも、最近の Fresco のアップデートでは、現実世界から得たインスピレーションをクリエイティブなプロジェクトに取り入れる方法を強化しました。Adobe Capture を使って花や彫像などの形状を Fresco に取り込み、ドローイングやペインティングに使用できる機能です。アーティストの Alice Lee が Capture を使っている様子を以下のビデオでご覧ください。

コラボレーションを前提に

今日の世代におけるクリエイティブにおいて、もはやコラボレーションは前提となっています。それに応えて、アドビはモバイルアプリケーションに、共同作業を容易にする機能を継続的に追加してきました。アドビ製品の多くのコラボレーション機能の基盤となっているのはクラウドドキュメントです。Creative Cloud のプロジェクトでは、作業が直接クラウドに保存されるため、どのデバイスやプラットフォームを使用していても、常に最新状態のデザインにアクセスできます。また、クラウドドキュメントの柔軟性と利便性により、いくつかの強力なコラボレーション機能が実現されています。

たとえば、最近追加した機能として、Photoshop、Illustrator、Fresco のプロジェクトに他のユーザーを共同編集者として招待できるというものがあります。アプリケーション内から友人や同僚にメッセージを送るだけで、作業し終えたプロジェクトにその人が参加して追加の作業を行えるのです。また、Fresco と Photoshop は同じファイルフォーマットを共有しているため、2 つのアプリケーション間でプロジェクトを受け渡すこともできます。Fresco で得意な絵を描きつつ、編集や合成には Photoshop を使いたいという人には最適なワークフローです。

もし自分や他のユーザーがプロジェクトに加えた変更が気に入らなかったとしても問題ありません。クラウドドキュメントでは、プロジェクトの過去のバージョンを辿り、好きなバージョンを選択することが可能です。

結局のところ、創造力の原動力はインスピレーションです。モバイルツールは、インスピレーションを得た瞬間に、クリエイティブな作業を始められる環境です。アイデアが浮かんだら、スケッチブックと鉛筆を使うような自然な操作で、しかもデジタル制作の強力で多彩な機能を利用し、オンラインのアセットや共同制作者と常時つながった状態で作業できます。これは、日々勢いを増している革命であり、私たちはその一翼を担えることに喜びを感じています。

この記事は Everything’s coming together for mobile creativity(著者:Scott Belsky)の抄訳です