ヴィンテージ・ヴェイパーウェイヴ デザインの軽快なレトロフューチャリズムを探る

Pastel neon ambience room and CRT TV with vintage OS desktop

イメージ:Adobe Stock/Summer Candy

By Adobe Stock Japan

Posted on 06-15-2021

「ヴェイパーウェイヴ」と聞くと、懐かしの電子音を散りばめたようなサウンドや、初期のインターネットやブラウン管のビデオ画面から飛び出してきたようなアイコンやカラーパレットを思い浮かべるかたも多いと思います。

ソーシャルメディアの台頭から20年、パーソナルコンピューターの登場から40年以上、そしてパンデミックにより日常生活のすべてが破壊されてから1年以上が経ち、昨今の文化的環境は矛盾に満ちています。その矛盾を何よりうまく捉えているのが、このところ急速に進化しているデザイントレンドである「ヴェイパーウェイヴ」ではないでしょうか。Adobe Stockチームは、今年のテクノレトロフューチャリズムをヴィンテージ・ヴェイパーウェイヴと名付けました。あらゆる場所で目にする、最も強力なデザイントレンドのひとつです。

ネオンの微笑みをたたえた未来的デザイン

ヴェイパーウェイヴというジャンルの起源はエレクトロニックミュージックかもしれません。ヴェイパーウェイヴの美学を持つ視覚言語が音楽と深く結びついているのは明らかで、両者はもはや切り離して考えられないほどです。

ではヴェイパーウェイヴの見た目、サウンド、フィーリングはどのようなものなのでしょうか。それはまるで、誰もいない光り輝く廊下を通り抜ける夢の旅のようなものです。たとえば、エレベーターで流れるようなスムースジャズのメロディーと、「チョップド&スクリュード」の手法で重ねられた80年代のシンセサイザー。未来的なビデオゲーム版日本をネオンピンクのピカピカなオープンカーで、目がくらむようなグリッチ感満載の空間を疾走していくようなイメージです。

ヴィンテージ・ヴェイパーウェイヴは、2020年のデザイントレンドであるモダンゴシックと同じ系統であり、類似の関係にあります。レトロで未来的な色彩やアイコン、グリッチなどのデジタルアーティファクトを活用している点や、サイバーパンクな雰囲気が全体的に醸し出されている点が酷似しています。しかし、決定的な違いもあります。モダンゴシックが、よりダークでディストピア的な傾向があったのに対し、ヴィンテージ・ヴェイパーウェイヴは、その美学を光に向けて進化させたものであるという点です。

ヴィンテージ・ヴェイパーウェイヴにはユーモアの感覚があり、様々な風刺の効いた表現がみられるのも特徴的です。この傾向は他の2020年デザイントレンドであるセミ・シュルリアルにも見られます。このような遊び心はゲーム、特に多くの人がスマートフォンでプレイする人気のモバイルゲームからの影響が色濃く出ているといえるでしょう。

パンデミック中はソーシャルディスタンスを保つことが求められ、対面でゲームをすることは危険と見なされました。外出・移動の自粛要請により、多くの人が友人と会うこともできず、Among Usのようなグループオンラインゲームが人気を博しました。Among Usは人々の文化的欲求を象徴したゲームで、レトロなピクセルアート(および流行の3Dアートであるボクセルアート)とシンプルで中毒性のあるゲーム性、そしておふざけ感満載の滑稽な態度が特徴です(友人をこっそり妨害することも、その前に宇宙に投げ飛ばされてしまうこともある)。

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イメージ:左:Adobe Stock/Summer Candy右:Adobe Stock/Aleksandr

心の状態を示す色の手がかり

文化的意識がこのような気軽さに移行している理由としては、パンデミック疲れがヒントになるかもしれません。いらいら、燃え尽き、孤独感に苛まれた1年の後、多くの人が現状から逃れる方法を積極的に模索しています。屋外で過ごす時間を増やしたり(2021年のビジュアルトレンドの1つでもある「Breathing Fresh Air - 新鮮な空気を胸いっぱいにでも紹介)、ファンタジーゲームやビデオゲームに没頭したりと、人々はあらゆることに楽しみを見いだしています。

トレンドのカラーパレットは、多くの人が今感じている感情の変化を表します。

Adobe Stockのベクターおよびイラスト部門の責任者であるShea Molloyは次のように語っています。「(昨年のトレンドと)美的感覚が大きく異なるのがカラーパレットです」「ヴィンテージ・ヴェイパーウェイヴはもう少し柔らかめで、2000年代風であり、サイバーパンク感は減っています」

つまり、80年代や90年代のネオンカラーは引き続きみられる一方、キャンディでコーティングされたようなパステルカラーと混ざり合い、白黒のトーンやニュートラルなトーンでまとめられています。特にファッションブランドは、このような明るい色、パステルカラー、レトロな色を現代風にアップデートしています。子供服(デンマークの子供服ブランドSoft Galleryに代表される)との相性がよく、サステイナブルなファッションブランドであるGirlfriend Collectiveのようなトレンドセッターは、このようなカラーパレットが年齢や性別に関係なくアピールできることを証明しています。Studio Cultのように、ヴィンテージ・ヴェイパーウェイヴのカラーやブランディングに加えて、キラキラしたレトロな要素(フリーズしたカーソルのピンやハッピーフェイスジュエリーなど)を取り入れているところもあります。

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イメージ:上から右回りに:Adobe Stock/grumbus、Adobe Stock/Wavebreak Media、Adobe Stock/local_doctorパレット:Adobe Stock/A New Wave in Vintage Vaporwave

デジタルとアナログのハイテクマッシュアップ

ピクセルアートとピクセル化したテキストはヴィンテージ・ヴェイパーウェイヴによく見られる視覚的要素です。ほかにも、太いアウトライン、アイソメトリックなシェープ押し出したようなレタリンググリッド、ドット、強いグラフィックシャドウなどの特徴があります。デザイナーは、このようなシャドウやアウトラインを使って、フラットな構図に奥行きを加え、3D空間のように見せたり、デジタルステッカーを作成したりしています。

Molloyは以下のように語っています。「ヴィンテージ・ヴェイパーウェイヴのトレンドは、メディアとの関わりや、毎日使う新しいテクノロジーに大きく依存しています」「ソーシャルメディアのアプリでデジタルステッカーを使い、Instagramのストーリーを装飾したり、レイアウトしたりすることはもう皆慣れっこです」

拡張現実(AR)の台頭により、ステッカーはこれまでになく重宝され、人気を博しています。画面を通してだけでなく、身のまわりのあらゆるものに漫画的なグラフィックを加えることができるからです。映像の上にステッカーを貼り、物理的な世界の上にフラットなグラフィック要素を重ねることで、古いものと新しいもの、物理的なものとデジタル的なものがマッシュアップされたビジュアルになります。

「SnapchatやTikTokのフィルター、Instagramのステッカーなどを使うことで、生活の中にテクノロジーを取り入れ、視覚的に表現しているのです」と、Molloyは語っています。「こういったことからも、テクノロジーがいかに生活に入り込んでいるかがわかりますね。このトレンドには、小さなフキダシや画面のポップアップなどといったデザイン要素も見られます」

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イメージ:左:Adobe Stock/FluxVFX  右:Adobe Stock/Meowlina Meow

日々、多くのデジタル情報が入ってくる中で、視覚的リアリズムの段階的変化を把握するのは有益であるだけでなく、私たちが情報を分析して判断するのにはもはや必須になってきています。スキューモーフィズム(Skeuomorphism)とは、形状や質感、ユーザーの操作方法など、物理的な世界の物に似せたデジタルオブジェクトを指すデザイン用語ですが、そのスタイルに新たな概念が登場しました。それが「ニューモーフィズム(Neumorphism)」です。スキューモーフィックデザインとフラットデザインの要素を取り入れて物理的な世界を表現する新しい繊細なスタイルで、精神的に疲弊しているユーザーにもわかりやすいデザイン傾向です。

Molloyは次のように述べています。「多少なりとも具象的な要素のある表現と比べると、スーパーフラットなアイコンは意図がわかりにくいことがあります。完全にフラットではない方が意味が伝わりやすいこともあります。アプリやデジタルデザインも少し立体的にすることで、ユーザーに違った印象を与えることができます」

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イメージ:左:Adobe Stock/NeoLeo 右:Adobe Stock/alexdndz

未来の不安、未来の希望

ヴェイパーウェイヴの美学にはちょっとしたメランコリーが漂っている点もその特徴の一つです。「蒸気のような」つかみどころのない薄気味悪さ、とでもいえばよいでしょうか。このトレンドの中心的な考え方は、ハイアートとローアート、またはハイカルチャーとローカルチャーを隔てる境界線を崩壊させること、言い換えると、ヴェイパーウェイヴは必然的にポストモダンであるということです。

美学とポップカルチャーの評論家であるAlican Koc氏は、Capacious Journal誌の評論、「Do You Want Vaporwave, or Do You Want the Truth?(ヴェイパーウェイヴか、はたまた真実か)」の中でヴェイパーウェイヴについて以下のように述べています。「ポストモダニズムを特徴づけるフラット、感情の薄れ、新テクノロジー、パスティーシュ、消費者文化におけるハイとローのカテゴリーの崩壊を美学化することで、メランコリーな感情を再現している…つまり、ヴェイパーウェイヴの美学は、後期資本主義の荒涼とした情緒的空間を、見る人や聞く人が中に入って内側から批判するように誘う認知地図を作成するものとして理解されるのである」

2021年のデザイントレンドとしてのヴィンテージ・ヴェイパーウェイヴは、サイバーパンクのダークでディストピア的な美学や文化批判の要素や関連性を多く残していますが、現在最も人気のあるこのデザインには、強い回復力を感じさせる底抜けに陽気なムードがあります。

その根幹について、Molloyは次のように語っています。「このトレンドはとにかく陽気です。それもそのはず、ローラースケートの人気も復活のきざしを見せているくらいですからね」

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この記事は2021年5月25日に Irene Malatestaにより作成&公開されたExplore the lighthearted retro-futurism of Vintage Vaporwave designの抄訳です。

Topics: クリエイティブ, デザイン, ビジュアルトレンド,

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