より良いデザインツールをあらゆる場所で、すべての人に

私はアドビ でインターナショナル・デザインチームを率いる幸運な立場にいます。このチームは国際的なデザイナー、ストラテジスト、技術者で構成され、海外のアドビのお客様のニーズを満たし、各地域の文化的に寄り添う製品を作ることに情熱を注いでいます。

国際的なデザイナーかつ技術者として、私たちは常に世界のあらゆる地域の人々とそのクリエイティビティに魅了されています。私たちの使命は、国境や文化、言語をまたがり、創造性や革新性を発揮できるようにすること。インターナショナル・デザインチームで行っている機能拡張のデザインは、新しい機能やパートナーシップ、成長の機会を生み出すための柔軟なアプローチです。機能拡張自体は短期間で構築し学ぶことができますし、私たちのツールを世界中のユーザーの創作活動に役立てて貰うことができるのです。アドビを手にすれば、誰でも創造性を発揮できるーそれが最も大切です。

アドビにとっての拡張性とは?

プラグインや拡張機能を設計する「拡張性」は、世界中のお客様により便利で使える製品体験を提供するための効果的なソリューションです。過去2年間、インターナショナル・デザインチームはAdobe XDのために5種類のプラグインを設計開発しました。

広い意味で考えれば、私たちは拡張性を製品の今後の成長の糧となる、設計・エンジニアリングの原則と捉えているのです。拡張機能があれば、アプリケーションのコア機能を変更することなく、新機能を追加することができます。これらの「拡張機能」またはプラグインによって、ユーザーはCreative Cloud アプリをサードパーティーの生産性アプリやコラボレーションツール、及びその他デザインツールにもつなげることができます。パートナーの視点で見ると、拡張性によって他社(Google, Asana, Slackなど)が自前のプラットフォームをAdobe XDなどのアプリケーションのクリエイティブ・ワークフローに統合することが可能となります。

アドビはさらに1000万ドルを投資し Adobe Fund for Designを設立しました。これは、Creative Cloudの拡張機能を提供するアドビのUniversal Extensibility Platform (UXP) 用のプラグインを構築する開発者やチーム、ベンチャー企業を支援する取組みです。

なぜ、わざわざプラグインを設計するのか

アドビは会社一丸となって、世界中のユーザーのための研究や設計を行っており、あらゆる文化圏のユーザーが使える製品を生み出そうと日々努力を重ねています。私たちのデスクトップ、モバイル、ウェブアプリも海外ユーザーのために何十か国もの言語にローカライズされているものの、北米とは全く異なる文化圏のクリエイティブのプロ集団には未だに満たされないニーズがあり、そこに多くの機会があるのも事実です。

これまでにも多種多様な独自のワークフローに出会いました。その経験から、こうしたユーザーのためにデザインをすれば、私たちの製品にとっても新しい可能性を切り開くことができると考えたのです。例えば、デザインのプロではない人がデザイン向けとは言えないツールを使ってUXデザインを行ったり、デザイナーがUXデザインアプリでプレゼンテーションを作ったり、EコマースのデザイナーがUIキットを使わずに手探りでウェブサイトをデザインしたりするなど、多くのワークフロー事例があるのです。

プラグイン開発の意義

プラグインがあれば、新しいアイデアを素早く市場に投入し反復できるというのが最も重要な点です。デスクトップやモバイルのアプリとは異なり、プラグインは比較的構築がシンプルで、素早く市場に投入することができます。そのため、設計、構築、海外のユーザーとのテストを無駄なく、素早く進めることができるのです。同時にすべての人を同じ方法で満足させることに労力を割く代わりに、ユーザーの場所にとらわれず、そのニーズにぴったりと合う海外最優先のツールを提供することができるのです。

また、他の市場にとって有益であったことが証明された、新しいデザインのアイデアの気づきを与えてくれることもあるのです。例えば、当初は日本のユーザー向けに作ったプラグインが、同様の問題を解決したいアメリカ、インド、中国のデザイナーに好評だったことがあります。つまり、ある国固有の問題に着目することでイノベーションが起こり、プラグインを活用することでより早くソリューションの展開が可能となるのです。このように、海外向けにデザインすることが新しい製品の種を発掘しテスト一緒にその製品を世界に送り出す手段なのです。

UXデザインを日本でもっと親しみやすく

先ほども簡単に触れましたが、数年前私たちのチームは日本の大小のデザイン会社を訪れ、UXデザインのプロセスを学んだ後に、初めてプラグインを作成しました。その時、UXデザインプロセスに関わる様々な人たち(デザイナー、ディレクター、プロジェクトマネージャーなど)に話を聞きましたが、デザイナーではない人やナレッジワーカー(専門外の人)などがデザインツールを使わずにUX作業を行っていると知り、驚きました(そして、興奮しました!)。想像できますか?プロジェクトマネージャーが、PowerPointやGoogleスライドでサイトマップやワイヤーフレームを作成しデザイン担当のデザイナーに渡すと、デザイナーはそれをPhotoshopで加工していたのです。そこで私たちは、Adobe XDをモックアップやワイヤーフレームを素早く簡単にデザインするためのツールとして活用してもらえるよう、 Quick Mockup pluginを開発しました。現在、アドビのプラグイン・マーケットプレイスで最も人気のあるXDプラグインの一つとなっています。 Quick Mockupは、Webやモバイル向けに予めデザインされたUI要素やテンプレートのライブラリなど、レイアウトを構築するために必要なものを全て揃えています。また、ユニークなタイポグラフィー、カラーパレット、写真を備えた様々なデザインスタイルのテーマをXDに導入することも可能です。

今のところ日本のユーザーが多くを占めているものの、世界中で多くインストールされています。そして、このアイデアをさらにテンプレートやテーマにまで広げ、ラピッドモックアップのプロセスを創り上げました。デザイナーでもそうではない人にも、デザインプロセスの加速化につながるプラグインへと進化させたのです。

国際的なパートナーシップのために拡張性を活用

国際的なデザインと拡張性を新たな海外企業連携へ発展させようと、日本で学んだ事を別の地域のデザイナーのために活かすことにしました。

中国のアリババ・デザインとのパートナーシップでは、私たちはQuick Mockupプラグインからの学びを活用しました。アリババ・デザインチームと協力し、中国のデザイナーがeコマース体験を作れるように、UIキットとデザインシステムのプラグインをリリースしたのです。

この拡張性デザインとパートナーシップにより、アリババのオンライン・コラボレーションサービスと統合させることができ、パートナーシップをさらに強化し、XDを付加価値の高いツールとして提供することで、中国のデザイナーにより良いサービスを提供できるようになりました。そしておそらく最も重要な点は、この仕事を通じて、中国のデザイナーとデザイン研究をすることで、中国のeコマースデザインに関する新しい知見を得た結果、中国におけるCreative Cloud製品の改善に役立てる機会を得たことです。

Adobe XDのパワーをModularで拡大する

Quick MockupはXD(Modular)用のパワフルなプラグイン群のハブとして、共同でのアイデア出しから迅速な画面デザイン、最終的なプレゼンテーションまで、それぞれを繋ぐ役割を果たしています。XDのプラグインWhiteboardは、人気のデザイン思考やアジャイル手法をとりいれながらXDのリアルタイム共同作業の機能を活用し、チームがリモートで仕事を完結できるようにしています。また、PresentationもAdobe XDのパワフルなプラグインで、プロがデザインしたテーマやスライド、デザイン要素がAdobe XD内に収められており、スライドのデザインを簡単にしかも美しく作ることができます。

すべての人がもつクリエイティビティ

国際的なデザインと拡張性を活用し、海外のお客様にもっと寄り添える製品作りをしているチームのアプローチを、ぜひ知っていただきたい。あらゆる地域のデザインワークをよりよく理解し、Adobe Creative Cloudや世界中のその他プラットフォームのために拡張性をもったデザインをすることで、私たちのツールはより多くのクリエイティブな活動に使っていただけるのです。拡張性を使うことこそが、新しいツールやパートナーシップ、ビジネス成長の機会を生み出す柔軟なアプローチであると熱い想いで取り組んでいます。様々な市場に向けてデザインをすることが、世界中の人たちに価値のあるイノベーションをもたらす。それが最も大切だと考えます。

インターナショナル・デザインチームの詳細とAdobe XDのプラグイン・スイートであるModularについては、ぜひこちらをご覧ください。

5月14日、15日に開催されるDesign Matters Tokyoでは私が登壇予定のセッションがあります。講演の詳細・申し込みについては、こちらこちらをご覧ください。

東京のデザイナー・コミュニティにお会いできることを心から楽しみにしています。