コロナ禍でスマートフォンの活用が加速したことで、私たちのライフスタイルは大きく変化し、旅行体験における消費者の期待値も高まっています。そんな消費者の期待に応えるために、自治体や観光に携わる事業社は何をすべきなのでしょうか。アドビ株式会社稲田 洋介より、アドビの考える、観光顧客の体験価値を向上させるパーソナライゼーション実現の具体化についてお伝えします。
高まる顧客の期待にどう応えるか 石垣島のある屋台はキャッシュレスに対応しており、QRコード決済で「星の砂」が購入できることをみなさんご存じでしょうか。デジタルが浸透した昨今においては、決済以外にも、位置情報で手軽にタクシーを呼べるUber等の「As A Service」や、カメラのレンズを向けると翻訳してくれる「アプリ」、「AR/VR」技術を活用したPokemo Go等のリアルな世界をゲームとして楽しむことができます。スマートフォンとともに出かける機会が増えており、旅行体験をより便利で豊かなものにできるようになっています。
こうしたスマートフォンを活用する流れはコロナ禍で加速しており、「コト消費・イミ消費」の文脈で、“顧客理解に基づいた旅行体験(=付加価値)”をデザインしていくことが求められています。
さて、アゴラ社による調査では、「サステナビリティ」や「ワーケーション」が旅のキーワードなっているようです。そこでTeslaがこの2つのキーワードを軸にした顧客体験をどのように実現しているのか、事例をご紹介したいと思います。
Tesla様は日本国内でさまざまなオンラインコンテストを実施されており、その中で「TeslaのEVに乗って古民家に滞在する1泊2日の旅」をご提供されています。ドライブや古民家の滞在に必要な電気はすべてソーラー発電によるものであり、余った電気はTesla様の家庭用蓄電池「Powerwall」に蓄電されます。
この取り組みの一番のポイントは、SDGsに貢献できるライフスタイルを体感したお客様がTeslaのEVの素晴らしさを体感した結果、デジタルを通じて次のお客様のインスピレーションを生み出すアンバサダーになるということです。このようにアンバサダーのストーリーテリングも活用しながら、データドリブンで「タビマエ(Pre-Trip)」「タビナカ(In-Trip)」「タビアト(Post Trip)」のスパイラルを起こし、次のお客様の育成につなげていくのが観光業界のスタンダードになりつつあります。
アドビではこの顧客体験をデータで管理するための基盤(CXM)として、「Adobe Experience Cloud」をご用意しています。これは、データによって顧客を理解し、お客様が必要なときに、必要な情報が届く手助けし、ブランド価値につながるパーソナライズされた体験を実現するためのプラットフォームです。
この「Adobe Experience Cloud」を使うことで、“Right Person(適切な人に)/Right Contents(適切なコンテンツを)/Right Channel(適切なチャネルで)/Right Time(適切な時間に)”届けるという“4R”を実現しながら、タビマエ・タビナカ・タビアトの顧客体験を一気通貫でデザインすることができるようになります。
そんな「Adobe Experience Cloud」を使って、いかに顧客の関心事項を把握し、行動を喚起させるようなパーソナライゼーションを提供できるようになるのか。次のパートでご紹介していきます。
「Adobe Experience Cloud」で実現する優れた顧客体験 徐々に旅行需要が回復しつつある今、ポストコロナ時代に向けて、理想的な顧客体験の検討を始める好機にあると言えます。観光客の満足度を高め、地域観光経営の収益向上を図るためには、どのような打ち手が求められているのでしょうか。
タビマエ・タビナカ・タビアトといったカスタマージャーニーに基づいて、旅の過程に応じて“あるべき顧客体験”と、そのために「Adobe Experience Cloud」で使用するデータについて、ご紹介できればと思います。
<タビマエ:気になるエリア/観光スポットなどを調べる>
マス広告やデジタル広告、SNSなどで認知した後、観光名所やイベント情報など、エリアの最新情報がまとまったウェブサイトにて、関心があるコンテンツに手間なくアクセスでき、ウェブサイトに来訪頂いた観光客の閲覧履歴に基づいてセグメントを生成し、該当するセグメントに対する適切なコンテンツ提供を繰り返すことにより、メールアドレスの登録やアプリのダウンロード、予約等、行動喚起を促します。
<タビナカ:周遊バスのチケットやクーポンなどを利用する>
予約後、実際に現地に訪問するまでにおいても、ウェブサイトやメール、アプリ内での閲覧履歴に応じたコンテンツの出し分けを行うことにより、アップセル/クロスセルにつなげることが可能です。実際の現地到着時には、アプリの位置情報も活用し、提案することでアプリ上で周遊バスのチケットや地域限定クーポンの利用を促進する等、現地到着後の情報提供も可能です。さらに、チケットやクーポンなどの利用履歴に応じて、グルメやお土産情報、当日の現地イベント情報など、推奨コンテンツを閲覧でき、レンタカーなど現地で必要になったサービスを追加購入することもできるようになることで、シームレスな購入プロセスが実現できます。
<タビアト:行動利用履歴に応じたコンテンツを受け取る>
観光後、周遊バスのチケットや地域限定クーポンなどの利用履歴に応じた推奨コンテンツを受け取ることで、楽しかった旅を思い出しながら再訪の検討を促すことが可能になります。また、地場産品の案内情報を見て、買い損ねたアイテムを買いたくなり、ECにアクセスしていただくことで、「アト消費」で旅の続きを楽しんで頂いたり、体験をシェアしていただくことを促進することで、新たな顧客のタビマエにつなげていくことが可能となります。さらには、ロイヤルカスタマーセグメントの情報を収集することで、より的確なデジタル広告を打てるようになり、タビマエ体験の向上につなげることが可能になります。
「Adobe Experience Cloud」により、上記のような顧客体験をパソコンやスマートフォンなどのデバイスに依存せずに、一貫してパーソナライズされた体験を届けることができるようになります。このように旅を通じて理想的な体験をした顧客は、自らのさまざまなニーズが満たされることで、地域へのエンゲージメントを高めることでしょう。
次に、顧客体験の価値向上に向けたパーソナライゼーションを実現する上で重要な、4つのファクターについてご紹介していきます。
コンテンツの理解…AI/MLサービスにより、コンテンツのメタデータプロファイルを生成する。
顧客の理解…顧客の行動履歴や興味のデータをもとにリアルタイムプロファイリングを行う。顧客の属性データ(住所・性別・年齢など)ではなく、行動・興味のデータを活用することで、次のインサイト抽出で顧客の頭の中を正しく理解できるようにしておく。
インサイトの抽出…特定のコンテンツ特性に反応する集団をセグメント化することで、顧客の興味・関心を探る。インサイトを抽出するためには、オンライン/オフラインを問わず、さまざまな顧客接点の顧客データを収集&標準化しなければならない。社内の部門やサービスを横断してデータを集約し、顧客個人のID(シングルソース)でデータを一元管理できる環境が必要。
アクション…インサイトに基づいたコンテンツのパーソナライズと最適化を図る。PCのブラウザやスマートフォンアプリ、E-mailなど、デバイスやチャネルに依存しない形でコンテンツ配信できる顧客体験基盤があると良い。
「データをうまく活用できていない」というお悩みが多い理由は、顧客理解の仕方が誤っており、そこから抽出したインサイトをアクションにつなげられていないからであると考えられます。
「Adobe Experience Cloud」は、顧客データを管理する基盤(CDP)やコンテンツ管理システム(CMS)、デジタルアセットマネジメント、EC、アトリビューション分析、Email配信、マーケティングオートメーション(MA)など、優れた顧客体験を提供するために必要なマーケティング関連ツールを包括したソリューションです。
すでにお持ちのシステムと連携して、必要なアプリケーションを個別にご利用いただくことも可能ですが、「Adobe Experience Cloud」の基盤である「Adobe Experience Platform」として一括で提供することも可能です。「Adobe Experience Platform」は、多くのグローバル企業で導入されていることから、CCPAやGDPR、改正個人情報保護法など世界のプライバシー法に準拠しており、顧客情報保護の観点からも安心してご利用いただけます。
本記事に関連して、ウェビナーのアーカイブ配信をしております。こちらでは実際に「Adobe Experience Cloud」を利用した成功事例も数多くご紹介しておりますので、ぜひあわせてご参照ください。