成功するデザインチームをつくる Part 1: 効果的なリーダーシップ | アドビ UX 道場 #UXDojo
出典:Bhavya Minocha
クリエイティブチームのリーダーにとって、次のような質問を自分自身に問うことは大切です。自分のチームにどんな人材が欲しいのか?固有のアイデアを持つ人と、リーダーのアイデアを発展させてくれる人のどちらがいいのか?これらは難しい問いですが、デザインチームを構築して成功するには、リーダーシップの原則に注力しつつ、周囲の人々には柔軟に適応することが重要です。
私(ロバート)が受けた最高のアドバイスのひとつで、以来ずっと大切にしているものに「可能な範囲で最高の人を雇いなさい。自分よりも賢い人を雇いなさい」があります。これは、私のチームづくりの基本になりました。つまり、才能のある素晴らしい人材を探し、同時に、彼らに脅かされているとは感じないようにするわけです。
効果的なデザインリーダーシップの原則
共に働く優秀な人材を確保したとして、それでリーダーとしての仕事が終わるわけではありません。これから紹介するのは、長年にわたって(時には痛い目を見て)学んだいくつかの教訓と、効果的なデザインリーダーであることについての考察です。
原則 1: 模範を示す
私の一番の原則は、単純なように聞こえるかもしれません。確かに口にするのは簡単ですが、実際にできる限りの実践が伴っていなければなりません。これには、デザイナーとしての自分の行動、美意識から倫理に至るまで、あらゆるものが関わります。いつも実践できているとは言えませんが(人間なので)、それでも常に心がけて行動しているつもりです。
原則 2: 信頼を築く
人を信頼し、信頼を大切にすれば、チームもリーダーを信頼してくれます。すると、ずっと容易にチームに指示を出せるようになります。リーダーの意見に同意しなかったメンバーがいても、リーダーが信頼に足ると認識されていれば、発言に耳を傾けようとするでしょう。これは、デザインリーダーであるために、非常に重要なことです。
原則 3: 幅広く探求し、オープンに議論する
リーダーとして提案するアイデアは、自分が納得できるものでなくてはなりません(少なくとも私にとっては)。そのため、常にさまざまな方向性を探求します。多くの場合に、1 番目、または 2 番目のアイデアに戻ってくるのですが、それでも自分が正しい方向に向かっていると思えるようになるには、他の多くのことに目を向けて、オープンに議論することが必要です。私はいつも、この考え方をチーム内で育んでいます。
原則 4: 明確な方向性を示しつつ、自律性を与える
私たちのスタジオ、Ammunition では、指示を受けて一緒に作業する能力が高く、その一方で、自立性を持って責任を感じながら働く人たちの存在に大きな恩恵を受けています。これは非常に困難ですが重要なバランスです。
私が方向性を示したとしても、そこに到達する方法は彼らが自分で考えます。そして、彼らが学び成長できるように、十分な支援を行います。これを難しいと感じるクリエイティブリーダーは多いようですが、とてもよく協力し、自己責任を感じている人々の働きは驚くべきものです。
原則 5: クリエイティブな環境を守る
企業内のデザインチームの場合、周囲からの無駄話やノイズが多くなりがちです。多くの人が決断に影響を与えようとしたり、要求を伝えようとするからです。こういった状況下では、創造性を発揮し、リスクを冒すことが非常に難しくなります。
そこでリーダーとしては、デザイナーがアイデアを追求し、試行錯誤し、時には失敗できるように、クリエイティブな時間と空間を可能な限り確保する必要があります。何か新しいことを押し進めようとすると、組織のエンジニアリングチームや管理チームは、それを仕事、時間、費用を増やすものと捉え、好まないかもしれません。しかし、デザイナーが支援されていると感じられ、自信を持ってリスクを取れることは本当に重要です。そのための保護された環境を実現できるのは、デザインリーダーだけです。
原則 6: 高い基準を持つ
高い基準を持ち、その期待をチームが理解していることを確認しましょう。もちろん、高い基準と、不合理な期待の差を見つけることは必要ですが、仕事の品質、正しさ、遂行が良いものでなければならないことには常に明確でいるべきです。
私は挑戦されることも、することもが好きです。一緒に働く組織のリーダーたちからは、繰り返し「もっと良い仕事ができるはずだ」と言われてきました。それは必ずしも私たちの仕事に対する批判ではないことを、徐々に理解し始めました。自分やチームがさらに前進するために「もっと良い仕事ができるはずだ」と考えることを習慣化するのは良い考えです。成功に満足することなく、常にさらに上を目指すのです。
デザイン主導であること
上記の原則以外に、デザイナーを含む組織内の全員が、製品戦略や全体的な目標と連携していることも重要です。これは困難な挑戦で、達成するにはリーダーシップと文脈付けが不可欠です。誰もが、一緒に働くデザイナーをすぐに信用して、自分たちのニーズも気にかけてくれていると考えるわけではありません。ですから、常に相手に耳を傾け、理解し、自分達の仕事を全体の文脈の中で確認する必要があるのです。
また、デザイン主導とは、デザイナーが主導権を握っているという意味ではないと理解することも必要です。もちろん、デザイナーを雇い、デザインプロセスを整備するだけでもありません。自分が行っている作業について、そしてその作業が構築しようとしている製品デザインにどのような影響を与えるのかについて考えることを、プロジェクトの始まりから終わりまで繰り返し行うアプローチです。
デザイン主導の場合、構築過程に関わるすべての人がデザインに貢献します。膨大な要素の連鎖を組み合わせて、なおかつ真にデザイン主導であるためには、途方もないリーダーシップと、継続的な確認、そして優れたデザインが実際に意味するものの理解が必要です。これが世界に真のデザイン主導と呼べる企業が少ない理由です。何をすべきか、どのようにすべきか、そしてそこに到達することがいかに困難かが、十分に理解されていないことが多いのです。
リモートワーク環境で働くこと
もちろん、パンデミック中に上記のような原則を貫くことには困難が伴います。私たちが、在宅勤務の環境で最も苦労しているのは、レビュー、ブレインストーミング、そして意味のある協業を行うための方法です。
私の場合、チームとの対話は相手のデスクに立ち寄って、その人が取り組んでいる課題について話すというアプローチで行ってきました。こうした対面での対話をリモート環境で置き換えるのは、かなり難しいことです。
また、物理的なオブジェクトのプロトタイプを確認するのもずっと大変になりました。私たちは、通常 3D プリンターを使って、デザインの開発、改良、共有を行います。つい最近、デザインレビューのために、7 組のモデルを製作することになりました。それらを出荷しなければなりませんでしたが、全員が期限までに入手できるよう調整し、さらに、プロトタイプを外部に持ち出すためのセキュリティプロトコルも整えなければなりませんでした。こうして少人数がプロトタイプを前に議論する環境を整えるだけでも、管理担当者にとって大変な負荷になりました。より良い方法については、まだ検討中です。
さらに、デザイナーがクリエイティブに考え、新しい切り口を模索するのに必要なサポートを提供することも容易ではありません。日々の定時のオンラインコールまで待つことが難しい質問もあります。すぐに支援が必要な時のために、いつでも相談のメッセージを送ることができると、チームメンバーが感じられるようにする必要があります。これは、フィードバックを待つのではなく、必要ならばいつでも求めるという考え方をチームに定着させることへの挑戦です。現在は、問題を素早く掘り下げる方法と、クリエイティブであるために必要なリスクに挑むよう促す方法を探っているところです。
デザインリーダーシップの未来
リモートワークが欠かせなくなった現状は、リーダーをより良いコミュニケーターにするためのトレーニングの機会になっています。会話をしたり直接見せたりする余地が減ったことで、何が起きているのかを理解し、何をすべきかを伝えることが本当に重要になっています。リーダーとしては、タスクからタスクへと直線的に進むのではなく、多くのチャンネルで並行して起きていることも理解しなければなりません。
デザインリーダーシップの未来に関しては、デザイナーがビジネスリーダーとしての側面も持つことが強調されています。それを実践することは重要ですが、その一方で、バランスを保つことも必要です。ビジネスに貢献する方法を学びつつ、同時にこれまでのキャリアで大事にしてきた価値観、すなわち創造性、情熱、共感、進歩への欲求を持ち続けるのです。
この最後の価値観は、プロセスの一貫性を重視しがちな企業社会とは、必ずしも上手く調和するとは限りません。個人的には、ビジネスリーダーでもあるデザイナーとして、このバランスと、自身のルーツの理解は、どちらも非常に重要だと考えています。
この記事は How to Build a Successful Design Team — Part 1: Effective Leadership(著者: Robert Brunner)の抄訳です