早期に Adobe Firefly を導入した 5 人のクリエイターが語る、加熱したブームの先にある生成 AI の未来

Adobe Firefly で作成した画像 出典: Daniel Argintaru

Adobe Firefly で作成した画像 出典: Daniel Argintaru

生成 AI は、ソーシャルメディア以来、コンテンツクリエイターを直撃した最も破壊的なテクノロジーです。変化の多くはポジティブなものです。例えば、アドビのクリエイティブな生成 AI モデルのファミリー Adobe Firefly は、アイデア出し、デザイン、編集といったプロセスから、人手のかかる作業を何時間も削減しました。何よりクリエイターは、どこまでも実験し、最もとっぴな閃きさえも表現する力を与えられました。

しかし、あらゆる破壊的テクノロジーとじ同様に、生成 AI もコミュニティに新たな懸念を提起しています。アーティスト、デザイナー、イラストレーター、クリエイティブな起業家たちは、以下のような存在をかけた問いに対処しなければなりません。

今年 10 月、アドビは生成 AI を早期から活用してきた 5 人を招き、Adobe MAX のステージでこのテクノロジーの第一印象を共有してもらいました。この記事では、そのセッションのハイライトを紹介します。彼らには、Adobe Firefly のような生成 AI を活用したイノベーションが、クリエイティブの世界にどのように影響するかという予測も聞きました。

Albert Manero、Limbitless Solutions UCF エグゼクティブディレクター

手足の発達障害を持つ子供たちのバイオニックアームや義肢を製作する非営利団体の創設者 Albert Manero には、ロボットに対する大きな愛があります。彼は、Limbitless Solutions が、Adobe Creative Cloud の生成 AI 機能をどのように使って、宣伝用のコンテンツを表現し、さまざまなマーケティングチャネルに適応させているかを説明しました。

例えば、Adobe Photoshop の生成 AI 機能の使用により、職員、大学教員、50 人の学部生インターンからなる Limbitless のチームは、簡単なプロンプトで新しいアセットに必要なフラットレイのデザインをつくり出せるようになりました。Firefly を使用する前は、美術用品店から小道具を山のように購入して、フラットレイを作成していました。これは何時間もかかる作業で、その結果が満足いかないものになることもしばしばでした。

さらに、Adobe Firefly による時間とコストの削減のおかげで、チームは Limbitless のコアミッションである、着用者に力を与え、気後れのない生活を送るための、「人生を変えるテクノロジーの創出」により注力できるようになりました。義足なしでランウェイを歩いた最初の切断患者であるスーパーモデル Shaholly Ayers とのパートナーシップから、アイアンマンその人である Robert Downey Jr とのプロモーションビデオまで、この組織は確実にその約束を果たしています。

Tej Patel、写真家、映画制作者、Adobe Express アンバサダー

テクノロジーが子供たちに与える影響について、ニューヨークを拠点に活動する Tej Patel は、自身の子供時代とデザインに夢中になった瞬間の話をしました。すべてを変えたその体験は、同世代の多くの子供たちと同じく、遥か彼方の銀河系で起こりました。

初めてスター・ウォーズを見た直後に、Patel は自分自身のライトセーバーをつくるというアイデアに取りつかれました。あまりに夢中だったため、すぐに「スター・ウォーズのライトセーバーを After Effects でつくる方法」を検索し、制作に取りかかりました。自身の経験を振り返りながら、Patel はアドビのデザインソフトウェアで好奇心を満たす喜びを回想し、今日生成 AI に触れている子供の立場に立って、創造力を引き出すために信じられないほど強力なテクノロジーを利用できる、あらゆる方法を想像しています。

AI とクリエイティブな仕事の関係について、Patel は、素早くつくり出す能力と、価値あるものをつくり出す能力を区別するよう注意しました。生成 AI は、クリエイティブな問題に対して無限の可能性を生成でき、それはとても強力だと彼は論じます。しかし、人々は、それらのアウトプットから、独自の視点でユニークなストーリーを選び出す能力を求めて、徐々にクリエイターへの依存を高めるでしょう。

Jaime Derringer、Design Milk 創設者

一人のアーティストとして、Jaime Derringer は、生成 AI の「創造性を民主化する力」に楽観的です。また、独立系コンサルタントの立場からも、このテクノロジーによるビジネスオーナーへの潜在的な影響について肯定的で、特に、コンテンツ制作、マーケティング、広告、ソーシャルメディアに関して可能性を感じています。

Derringer は 2021 年に AI の可能性を探求し始めました。ですが、多くの人々がこのテクノロジーに触れたのは、もっと最近のことだという点は理解しています。彼女は、そうした人々の不安にも共感しています。生成 AI が私たちの生活の多くの側面に革命を引き起こすと彼女は確信しており、何が起こるかわからないときにおびえるのは自然なことだと考えています。

Derringer の見解は、人類が過去に変革的なテクノロジーを使いこなすために進化した、数多くの経験から形成されています。「写真が登場したとき、人々は絵画は死んだと言いました。Adobe Photoshop が登場したとき、人々は写真の未来に不安を覚えました。生成 AI の登場への反応として、仕事は変化し進化するでしょう。ですが、それは突然起こるものではありません。いつものように、人々は技術と共に進化するでしょう」と彼女は語りました。

Jesús Ramirez、グラフィックアーティスト、教育者、アドビコミュニティエキスパート

Jesús Ramirez は、進化についてある程度の経験があります。生来のコミックブックのファンである彼のデザインの旅は、1996 年に、機会を見つけては手描きのスパイダーマンのコミックを描き始めたときに始まりました。

2000 年に Adobe Photoshop を発見して彼のアプローチは進化を遂げ、初期の作品をもとに、デジタル描画を試み始めました。その後 Photoshop のレイヤー使いの達人で、Photoshop の最初の本の執筆者である Bert Monroy に触発されて、彼のデザイン はさらに創造的な飛躍を遂げました。 Ramirez は Monroy のテクニックのいくつかを吸収し、デザインに新たなレベルの本物らしさを実現したのです。

こうした自身の経験を振り返って Ramirez は、デザイナーの価値は Adobe InDesign や Photoshop のスキルで決まるものではないと論じました。技術に対する熟練度ではなくて、クリエイティブな問題を解決する能力の問題だと彼は言います。生成 AI は、その使命を遂行する上で、今後ますます強力な味方になるでしょう。

Philip Pallen、Phil Pallen Collective ブランドストラテジスト

最後を飾るのは、Adobe Express のアンバサダー Philip Pallen です。彼は、生成 AI の未来に完全に楽観的です。Pallen が特に興奮している点は、このテクノロジーがクリエイターを際立たせているもの、すなわちアイデアを想像する力、ブレーンストーミングでの発想、そして独創性に注力するようクリエイターに促すことです。

そのために行うべきことは、新しいアイデアの進展や探求の時間を奪う、骨の折れるワークフローの自動化です。Pallen は、クライアントのウェブサイトのホームページのバナー画像を、Adobe Firefly のベータ版を初めて使って修正したときに、彼の世界が揺さぶられたと振り返りました。背景を変えるためにまったく新規に写真撮影を企画する代わりに、Pallen は単純に生成塗りつぶしを使用して、数秒で変更することができました。

もちろん、Pallen は AI をめぐるクリエイティブコミュニティのストレスを理解しています。だからこそ、アドビのような企業が重要なのだと彼は主張します。アドビは、Adobe MAX のようなイベントを開催することにより、両側の意見を持つ人々を歓迎し、Adobe Firefly がクリエイターの生活をより良く変えられることを評価してもらい、会話のバランスをとろうとしています。

MAX Japan 2023 のセッションから

MAX Japan 2023 でも、こびとのくつ株式会社 代表取締役社長で、ビジュアルテクノロジスト&レタッチャーでもある工藤 美樹氏から、AI 時代のクリエイターの役割についての興味深いセッションがありましたのでご紹介します。

当日ライブ配信されていたためご覧になった方も多いと思いますが、このトピックに関心のある方は、是非以下のアーカイブ動画をご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=Mx7pKwfvkks

【Adobe MAX Japan 2023】クリエイターの存在意義と価値が問われる時代における技術と思考についての省察 こびとのくつ株式会社/ビジュアルテクノロジスト, レタッチャー, 代表取締役社長

この記事は Beyond the hype: 5 early adopter creators reflect on the future of generative AI(著者: Rani Mani)の抄訳です