Adobe Premiere ProとAfter Effects 25.2にAIを活用した新機能と動画編集ワークフローの強化
アドビは、NAB Show 2025で、Adobe Premiere ProとAfter Effectsの両方に、AI動画編集ワークフローと、プロの映像編集者やモーションクリエイターが要望していた多数の強化を盛り込んだ新バージョンをお届けします。Adobe Premiere Proでは、Adobe Fireflyを搭載した4K対応の「生成延長」機能で動画の長さを伸ばせるほか、新しい「メディアインテリジェンス」機能により、目的の動画を数秒で見つけることができます。また、「キャプションを翻訳」機能で、動画のキャプションを27言語以上に自動翻訳して世界中の視聴者に届けるほか、Adobe Premiere Pro 25.2におけるワークフローの改善には、他にもダイナミックオーディオ波形、シーケンスラベルへのカラーの追加、GPU高速化対応フォーマットの追加サポートなどが含まれます。さらに、新しい高性能プレビュー再生エンジン、パワフルな新しい3Dモーションデザインツール、HDRモニタリング機能を備えたAfter Effects 25.2もリリースしました。
なお、 これらAdobe Premiere ProとAfter Effectsのすべての機能は、本日より一般提供開始となります。また、Adobe Premiere Proでは、生成延長の利用に必要な生成クレジットを期間限定で無料提供します。
Adobe Premiere Pro
Adobe Firefly搭載の生成延長が4K対応に
撮影開始のタイミングが少し遅れたり、カメラを止めるのが早すぎたりして、大事な場面なのに尺が少し足りないという状況は誰にでも起こり得ます。そんな時に役立つのが、動画の尺を伸ばして完璧なタイミングの編集を実現する 生成延長 です。
Adobe Fireflyを搭載した Premiere Proのこの新機能は、尺の足りない動画に、4K画質のコマを違和感なく追加します。これにより、トランジションを入れるのに必要な動画の長さを足したり 、登場人物の感情的な反応を1拍長く保ったり、延長した部分に欠落している環境音や現場の空気感を自然に伝えるルームトーンを補ったりすることができます。生成延長はバックグラウンドで処理されるため編集作業を継続できます。また、AIが使われた動画にはコンテンツクレデンシャル情報が付与され、視聴者にAIが使用された箇所を明示します。
Premiere Proの生成延長は現在、期間限定で無料でご利用いただけます。無料期間後は、Adobe Firefly生成クレジットを使用し、価格は動画のフォーマット、フレームレート、解像度によって異なります。詳細については、アドビのwebサイトをご確認ください。
大量の映像素材の中から欲しいモノを素早く検索
AI 搭載の「メディアインテリジェンス」機能と新しい「検索」パネルにより、大量の映像素材の中から欲しい素材を数秒で検索できるようになりました。動画内のコンテンツは、自動的に解析され、オブジェクトや場所、カメラアングルなどが認識されます。 動画内のコンテンツは、自動的に解析され、オブジェクトや場所、カメラアングルなどが認識されます。 検索フィールドに自然言語で欲しいものを入力するだけで、一致する動画が瞬時に検索されます。選定した動画名のリストを作成したり、シーケンスや動画をマーク付けしておいたり、撮影時の記憶に頼ったりしなくても目的のものが見つかります。
また、視覚的要素、セリフ、埋め込みメタデータ(撮影日やカメラの種類など)など、必要な情報はすべて同時に、1か所で確認できます。このパネル内でサムネイルの上にカーソルを合わせたり、複数の文字起こしをスクロールで確認したり、パネルから直接タイムラインに移動して編集を加えたりすることができます。
「キッチンで作業する手のクローズアップ」や「料理の皿の俯瞰ショット」といったような説明文で素材を検索し、スクラブ再生で目的の箇所をすばやく確認したり、ソースモニターに読み込んだりすることができます。あるいは、「カカオ」で検索して、関連する視覚的要素、文字起こし内での言及、そして撮影場所をはじめとする埋め込みメタデータにおける一致を、すべて1か所で見つけることもできます。
この機能のメディア分析は高速で、さらにユーザーのシステム上で実行されるため、インターネット接続は不要です。また、他のアドビのAI搭載ツールすべてと同様に、ユーザーのコンテンツがAIモデルのトレーニングに使用されることはありません。
*ビジュアル検索に関して、リリース時は英語のみ対応
勘にたよるカラーマネジメントは過去のものに
クリエイティブな作業を開始する前に、LogやRAWの映像の色調を補正して統一する作業は、動画編集における最も困難な技術的課題の1つです。Premiere Proのカラーマネジメントにより、高品質な素材を簡単に読み込んで編集を開始できるようになりました。Logをそのままの素材で扱う必要はもうありません。
Premiere Proでは、オリジナルのLogおよびRAWカメラファイルをLUTなしで直接SDRまたはHDRに変換できるようになりました。ほとんどのカメラ形式では、素材をPremiere Proに読み込んだ直後に自動的に処理されます。プロキシやオンラインで購入したLogコンテンツなど、他の特定の形式の場合は、ビンを開いて直接、複数のクリップに適切なカラースペースのタグを簡単に付けることができます。
さらに、Premiere Proのカラーマネジメントでは、業界標準のACEScctを作業用カラースペースとして使用する新しい広色域カラーパイプラインが提供されます。これにより、Premiere ProではソースクリップのLogやRAWデータをすべて利用して、Lumetriでのカラーグレーディングのダイナミックレンジとコントロールを向上させることができます。複数のカメラのマッチング、スキントーンの完璧な調整、ビデオのムードやトーンの調整が、これまで以上に柔軟かつ楽しく行えるようになります。
何と言っても、Premiere Proのカラーマネジメントはビデオ編集者なら誰でも簡単に使えます。新しいシーケンスを作成したり、シーケンス設定を調整したり、Lumetriパネルの設定タブで作業を行う場合、必要なのは6つの新しいカラーマネジメントプリセットのいずれかを選択することだけです。カラーのエキスパート向けには、ニーズに合わせてカスタマイズできる幅広い設定も用意されています。
デフォルトのプリセット「ダイレクト Rec.709」では、Premiere Proの旧バージョンと同様のカラーパイプラインが提供されるため、レガシープロジェクトを開いた時でも期待通りに表示できます。新しい広色域カラーパイプラインの機能を最大限に活用するには、3つの新しい「広色域」プリセットのいずれかを選択するだけです。
キャプションを27の言語に自動翻訳
2023年に文字起こしベースの編集機能を導入した後、コミュニティから明確に伝えられたことは、字幕は重要であり、翻訳は必須であるということです。今回、この最も要望の多かった機能を実装し、AIを使用してキャプションを27の言語に自動翻訳できるようになりました。SNSでは、アクセシビリティとエンゲージメントの観点から、字幕の重要性がますます高まっています。Premiere Pro以外のツールに頼らなくても、より多くの視聴者、フォロワー、顧客にリーチし、グローバルコミュニティを成長させることができます。
さらに、複数のキャプショントラックを同時に表示して、さまざまな言語の表示や、異言語コンテンツの編集作業を支援することもできます。
史上最速かつ最高性能のPremiere Pro
ビデオ編集者の日常的な作業では、スピードと信頼性が非常に重要であることを私たちは理解しています。そこで、コミュニティから最も要望の多い機能に重点的に取り組み、Premiere Proをこれまで以上に高速化するために、以下のような裏側の改善も行いました。
- ボリューム調整に合わせて拡大・縮小する「ダイナミックオーディオ波形」により、オーディオレベルを視覚的に表現
- シーケンスタブのラベルカラーに色を追加できるようになり、整理を容易に
- MP4とMOVのH.264サポートの全体的な書き直しを行い、Appleシリコン搭載のコンピューターでは最大4倍、Windowsでは最大2倍のパフォーマンスを実現
- ハードウェアアクセラレーションされたAppleシリコン搭載コンピューターではCanon Cinema RAW Lightが、タイムラインでの再生時最大4倍、書き出し時最大9倍高速化
- 最適化されたオーディオ(.cfa)とピークファイル(.pek)の生成が高速化され、作業を素早く開始・続行可能に
さらに、NVIDIAと協力し、H.264やHEVC 10-bit 4:2:2などの一般的なフォーマットにおいて、リアルタイムのプレイバックよりも早い再生速度を実現しました。Premiere Pro(ベータ版)を新しいWindowsシステムで使用するビデオ編集者は、NVIDIA Blackwell GPUアーキテクチャの恩恵によるデコードのGPU高速化が得られます。つまり、プロキシではなくカメラのオリジナル素材で作業でき、タイムラインのレスポンスが向上し、CPU負荷が軽減されるため、開放されたシステムリソースをマルチアプリケーションのワークフローやクリエイティブな作業に利用できるようになります。
After Effects
あらゆるコンピューターで、途切れずにコンポジションを再生
長年、After Effectsで一度に再生できる映像の長さはコンピューターのRAM容量に依存していました。そのため、特にノートパソコンでは、After Effectsが再キャッシュするたびに作業を中断して待たなければならず、長尺のコンポジションのプレビューが困難でした。
しかし、高パフォーマンスのプレビュー再生機能により、この状況は一変します。
それは、コンピューターのRAMとローカルディスクを併用する新しいキャッシュシステムのおかげです。これにより、After Effectsはコンポジション全体をキャッシュしてプレビューすることができます。これは、After Effectsの歴史上最大のパフォーマンス向上の1つで、どんなユーザーでも、あらゆるコンピューターで、かつてない長時間、コンポジションを再生できるようになります。
少ないクリック数で、よりリアルな3Dアニメーションを作成
After Effectsユーザーからは、モーショングラフィックスやVFX合成の機能を強化する3Dツールの追加を求める声が寄せられてきました。そこで今回、新ツールの追加だけでなく、2Dモーショングラフィックデザイナーやビデオ編集者が3Dをより手軽に、より楽しく使えるようにしました。
新しい「アニメーション化された環境光」を使用すると、任意の動画やアニメーションから作成した動くライトで3Dコンポジションを囲むことができます。背景に置いたプレート、360度ビデオ、特定のレイヤー、あるいはコンポジションそのものを光源にして、3Dモデルに動きのある反射や影を付けることができます。
また、After EffectsがFBX形式の3Dモデルファイルにネイティブで対応するようになり、数百万もの3Dモデルが利用可能になりました。FBXは、オンラインマーケットプレイスで一般的に使用されている人気の3Dモデル形式です。
さらに、これまで複数のステップを組み合わせていた高度な3Dワークフローを新しいワンクリックメニュー項目に集約しました。これにより、カメラの動きに合わせて動く3D背景環境を作成したり、カスタムエフェクトで3Dモデルに陰影を付ける作業をワンクリックで実行できるようになりました。
HDRで作業をモニタリング
After EffectsでHDRコンテンツの読み込みと書き出しが可能になったことに加え、新しいHDRモニタリング機能も導入されました。HDR対応のノートパソコンで作業している場合でも、ビデオ信号をHDRリファレンスモニターに送信している場合でも、After Effectsでこれまでにない鮮明さ、彩度、明るさで表示できるようになりました。
After Effects 25.2の新機能
After Effectsのすべての新機能は、プロのモーショングラフィックデザイナーやビデオ編集者のコミュニティからのご要望を反映したものですが、以下の一見マイナーな改善も、After Effectsでアニメーションや合成を頻繁に行うユーザーにとって非常に重要なものです。
- コンポジション外の空白領域のカラーと透明度グリッドがカスタマイズ可能に
- 他のユーザーが作成したプロジェクトを開いた際でも現在のワークスペースを維持できる新しい環境設定
- 正確なアニメーション制御に役立つ新しいヌルコマンド
- プロパティパネルでの3Dモデルアニメーション制御
提供開始時期
Premiere ProとAfter Effectsのすべての新機能は、本日より一般提供開始となります。アクセス方法などの詳細については、 Premiere ProとAfter Effectsのページをご覧ください。
この記事は2025年4月2日(米国時間)に公開されたIntroducing new AI-powered features and workflow enhancements in Premiere Pro and After Effects 25.2の抄訳です。