連載/hueが直伝! “売れる“料理の撮り方、見せ方。 #12 スウィーツを高級にする、かんたんライティング #Adobe Stock

【連載】 hueが直伝! 売れる料理の撮り方、見せ方

食に特化したビジュアルの撮影・制作を手がけるプロ集団hue(ヒュー)。同社の近藤泰夫がそのテクニックをわかりやすく伝える連載、その第12回目です。今回は、スウィーツを高級に見せるための、ライティング法を伝授します。

バレンタイン前の今こそ、スウィーツの撮りどき?

ケーキ、チョコレート、キャンディー、焼き菓子――。
スウィーツは五感を刺激して美味しさを引き出す“シズル写真”の中でも、人気の被写体です。

かわいくポップに撮るスタイルも当然アリ。ですが「高級感を漂わせる」のも、昨今のスウィーツ写真の定番といえるでしょう。とくに今はバレンタインが近い時期。リッチで大人のムードを漂わせたチョコや焼き菓子などを撮るオーダーが、私たちにも多く入ります。つまりAdobe Stockで「チョコレート」や「スウィーツ」の検索も高く、売れる可能性も高い時期といえそうです。

そこで今回は、スウィーツに高級感をプラスする方法をお伝えします。
ポイントはひとつ。しかも、とても簡単なので、ぜひ実践してみてください。

狙い定めた「一灯」使い。それですべてが決まります。

結論からお伝えしましょう。
スウィーツに高級感を与えるために最も大きなポイントは「ライティング」です。

というと、何灯ものライトを用意して、後ろから前から斜めから…と複雑でテクニカルなライティングだと思われる方は多いはず。

いやいや。実は“逆“なんです。

上の写真はショコラティエが作ったボンボンショコラの写真。第7回でもお伝えしたとおり、下に敷く天板を工夫にするだけで、ぐっと高級感は演出されています。

もっとも、この写真をさらにリッチなムードにするとともに、深みのある大人の世界観を加えているのは、ライティングです、使っているライトはひとつ。「一灯」で撮っているんです。

写真でいうと左上。そこにライトを1灯置いて撮影することで強い明暗を生み出します。結果、ぐっと高級感を感じる光になっている、というわけです。
ちなみに舞台裏(撮影セッティング)はこんな感じ。

シェード板(光をカットする板)で、隙間から光が漏れているようなライティングしています。

繰り返しになりますが、一灯にすると明るい部分と影の部分の明暗が強く出ます。いわば「暗くて明確に見えない部分」が生まれる。そこがポイントです。

明るくすべてが見える写真は情報量が増えて、どんなものなのかはっきりと認識できます。しかし、人は見えないものにこそ想像力をかきたられるものです。先が見えないからこそ、なんとかして先を見てみたくなる。言い換えると、不明瞭だからこそ、ドキドキワクワクしてくるわけです。

そのミステリアスな雰囲気こそが、高級感の秘密ではないでしょうか。

すべては見えない。どこが不安。だからこそ、もっと知りたくなって目を引く。
一灯のライティングだからこそ生み出せる、「強い影」が、写真にそんな奥行きとストーリー性を与えてくれるのではないかと思います。

それは中世の西洋絵画の技法でみられるもの。宗教画などはとくに、陰影をことさら強調することで、立体感とともにどこか荘厳な雰囲気を漂わせています。いずれにしても、こういった深みある「影」を際立たせるには、一灯のライティングが大事になるわけです。

さらにわかりやすくするため下の写真を見てもらいましょう。

ガトー・バスクというフランスの伝統的な焼き菓子ですが、これも一灯で左横からのサイド光を作って撮ったものです。上に積み上げて影の部分を増やすことで、芸術的な世界観を感じさせる写真になっていると思います。

一方、複数のライトを設置した多灯による写真が、こちらです。

いかがでしょう?

しっかりと見えるところが見えているので、ガトー・バスクの形状はとてもよくわかります。しかし、陰影がないから深みがない。高級感や芸術性は先程よりも感じられません。
むしろイメージは真逆となり「アットホームさ」すら感じさせます。

スウィーツに高級感を漂わせたいならば、一灯でライティング。「どこを明るくするか」よりも「どこに影をつくるか」を意識しながら、いろいろと試して撮影してみてください。あなたが撮るスウィーツが、少しビターな雰囲気のある一枚に仕上がると思います。

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参考写真撮影:鈴木孝彰hue inc.