Adobe Illustrator のMAX 2020リリース #Illustrator #AdobeMAX
今年は、Adobe Illustratorがかつて経験したことのないほどの大規模なリリースの年となりました。この記事では、iPad専用に再設計されたIllustratorや、そこに搭載された放射状、グリッド、ミラーの各リピートツールなどの新機能はもちろん、Illustrator デスクトップ版の中核機能のアップデートについてもご説明します。
今回のアップデートは、「新しいクリエイティブ表現」、「クラウドドキュメント」、「精密なタイプデザイン」、「まったく新しいデザインエクスペリエンス」という4つの重要なカテゴリーをカバーしています。ではさっそく、より効率的に、より早く、よりクリエイティブに仕事を進めるのにお役立ていただける、Adobe Illustratorの最新アップデートを詳しくご紹介しましょう。
新しいクリエイティブ表現:強化されたアートワークの「オブジェクトを再配色」ツール
「オブジェクトを再配色」ツールは、Adobe Illustratorの強力なツールのひとつで、デザインの色を素早く変更したり、入れ替えたりすることができます。この機能がアップデートされ、写真や画像からフルカラーパレットを抽出し、ワンクリックでプロジェクトに適用できるようになりました。この機能強化により、あなたのグラフィックスにさまざまなカラーパレットを簡単に適用することができます。また、ストック素材を使用するときも、必要な配色にマッチするように素早くカラーを変更できます。
どこからでもアクセス可能なクラウドドキュメント
2020年6月のIllustratorアップデートでは、作業が自動的に保存され、どこからでも簡単にアクセスできる便利なファイル形式「クラウドドキュメント」を導入しました。プロジェクトをクラウドドキュメントとして保存するメリットは他にも、Illustratorデスクトップ版とIllustrator iPad版をシームレスに使い分けられる点が挙げられます。また、過去のバージョンにも簡単に戻すことができます。クラウドドキュメントは最新のテクノロジーで構築されているため、保存速度が速いだけでなく信頼性も高く、オンラインでもオフラインでも、いつでも簡単に作業の続きを再開できます。
高精度のタイプデザインで品質向上を目指す
私たちは、タイプデザインをよりスマートにおこなえるようにIllustratorを再設計し、作品にタイポグラフィを配置する精度を向上させました。
これまでIllustratorでタイポグラフィを扱う際には、テキストの字形(グリフ)よりもテキストフレームが重要な役割を果たしていました。つまり、これまでデザイナーは、テキストそのものではなく、その枠の形状を基準にしてオブジェクトや他のテキストフレームをテキストと整列させたりスナップしたりせざるを得なかったのです。今回のアップデートにより、Adobe Illustratorは、フレームの制約を越えた、よりスマートで正確な方法でテキストを扱えるようになりました。この新機能の要点をご紹介します。
オブジェクトを字形にスナップ
新しい「字形にスナップ」機能を使うと、Illustrator は、ベースラインやxハイトなど文字の主要な特性に基づいてオブジェクトの適切なスナップをガイドし、配置します。そのため、デザインをレイアウトする際に、文字と他のエレメントの位置を目視で確認しながら調整することに時間をかける必要がなくなりました。
フレーム内でテキストを垂直方向に整列
皆さんからのご要望が最も多かった機能のひとつである「テキストを垂直方向に整列」を搭載しました。これは、テキストフレーム内でテキストの垂直方向の配置を上揃え、下揃え、中央揃え、または両端揃えで整列するものです。テキストのプロパティパネル上のボタンひとつで実行できます。
字形の境界を認識するようになった整列ツール
Illustratorの整列ツールを使ったオブジェクトとテキストの整列は、これまでは常にテキストフレームの境界線を基準としていました。今回の機能強化によって、視覚的な字形にオブジェクトを整列することが可能になり、テキストフレームの制約から解放されます。例えば、オブジェクトとテキストを整列ツールで下揃えする際に、テキストフレームの大きさにかかわらず視覚的にぴったり揃えられるようになります。
プロキシ(字形の構成要素の寸法)を使ったフォントサイズ指定
デザインに要求される精度が非常に高いときに、字形に含まれる特定の構成要素の寸法でフォントサイズを指定したいことがあります。キャップハイト、xハイト、emボックス、日中韓の場合は平均字面(ICF)といった要素のサイズでフォントサイズを指定できるようになりました。これにより、デザインエレメントの種類を横断してテキストをシームレスに配置できます。
より効率的で、早く、クリエイティブに仕事を進められるよう進化した、Illustratorのデザインユーザー体験
ちょっとしたことの積み重ねが、とてつもなく大きな違いを生むことがよくあります。作業に使えるスペースが拡大したこと、リアルタイムで作品をプレビュー可能になったこと、新しいショートカットの追加など、今回のIllustratorのアップデートには、日々のIllustratorライフをより快適にするための新機能が満載です。
今までより大きなカンバス。100倍ものスペース
規模が拡大する見込みのデザインを作成するためにもっとスペースが欲しいときや、すべてのアセットを1つのプロジェクトに集約する必要があるときに便利な機能です。「ファイル/ドキュメント設定」で新規ドキュメントを作成する際に指定できるカンバス領域の上限が100倍になり、最大で500万平方インチ(3,225.8平方メートル)まで使えます。
リアルタイムのドローイングと編集を実現するライブプレビュー
オブジェクトを拡大縮小、回転あるいは描画するとき、境界枠だけが頼りだった時代は終わりました。最新バージョンのIllustratorでは、コンピュータのGPUを最大限に活用し、デザインの編集中もグラフィックをライブでレンダリングします。この機能をオンにすると、グラデーション、エフェクト、ストロークスタイルを適用したオブジェクトであっても、即時にレンダリングされます。
アートボードのカット&ペースト
この時間削減に役立つ新機能を使えば、他のプロジェクトで使っているドキュメントからアートボードをコピーして作業中のドキュメントに持ち込み、他のアートボードと一緒に保存することができます。現在作業中のドキュメントに含まれる複数のアートボードを選択してそのまま他のドキュメントにペーストすることも、選択済みのアートボードを独立した「.artboard」ファイルとして個別に保存し、後でドキュメントに読み込んだり、共有することもできます。この機能を活用すれば、デザインエレメントのライブラリ、アイコン、スタイル要素などを1つのドキュメントに簡単に集約できるので、コラボレーションも非常に簡単になります
アートボード上で直接オブジェクトのロックを解除
オブジェクトのロックおよびロック解除は、これまでもレイヤーパネルを介して行うことができました。しかし、無数のレイヤーやアートボードを含む大規模なプロジェクトで作業する場合は面倒な操作でもありました。そこで私たちは、アートボード上のオブジェクトを直接右クリックするだけでロックとロック解除ができるようにしました。ロックされたレイヤー上の他のオブジェクトに影響を及ぼさず、その場で個別のオブジェクトを編集できるため、意図しない改変を避けることができます。
ワークフローを補完し強化するツールで時間にゆとりを持てるようになった皆さんが、ものづくりやコラボレーション、あるいはデザインを通じて互いに刺激を受ける、といったことに時間とエネルギーを集中できることが私たちの望みです。ここでご紹介したアップデートは、そのビジョン実現に向けた重要な役割を果たします。これからもこの取り組みは続きますが、ここまで私たちを支援し導いてくださったコミュニティの皆さんに深い感謝(英語)をお伝えしたいと思います。そして、皆さんが今回のAdobe Illustratorの新機能に刺激を受けてデザインした作品に出会うのを楽しみにしています。
この記事は10月20日(米国時間)に公開されたAdobe Illustrator MAX 2020 releaseの抄訳です。