ハウスエージェンシーのKernel、動画広告を使用したブランドメッセージの刷新を大規模に展開

Kernelには、特殊な状況下でも優れた広告作品を制作してきた確かな実績があります。Kernelはフルサービスを請け負うハウスエージェンシーで、Charter Communications, Inc.の広告営業事業部門Spectrum Reachの専属広告会社として、Spectrum Reachとそのお客様のために年間数万本のコマーシャルを制作しています。拡張性に優れたインフラストラクチャとプロフェッショナルな制作陣を武器に、効率化されたプロセスで、地域ごとにカスタマイズしたクリエイティブを制作するという珍しい案件を手掛けています。スモールビジネスであればその強みを、大企業であればローカリズム(地域主義)をアピールできるよう支援するSpectrum Reachの施策においてきわめて重要な役割を担っているといえるでしょう。

Kernelは、Spectrum Reachが2020年の半ばに実施したブランド刷新のクリエイティブの制作を依頼されましたが、そこにはいくつか課題がありました。Spectrum Reachの会社概要と事業内容を刷新する必要がある一方で、ローカルビジネスとその地域社会の力強い繁栄を支援するというコミットメントも強化しなければならなかったのです。Kernelが契約した地域密着型キャンペーンの制作では、1本のオンエア広告を制作し、それを基に各市場独自のオーディエンスに合わせてローカライズした36種類のコアバージョン(30秒のスポット広告)を制作することになっていました。そのため、メッセージのカスタマイズに膨大な量の編集が必要になることが判明(ちなみに、成果物リストの項目数は600個を越えています)。それをすべて12週間の制作期間内で終える必要がありました。常に、ワークフローの理論と実践のはざまで限界に挑戦してきたことが幸いし、結果として、すばやく効率的に、好きなだけバージョンを作成できる手法を確立できました。

ソーシャルディスタンスを確保するため、Kernel(米国内の41州に展開)は本格的なビデオ撮影をおこなうことができませんでした。そのうえ、それぞれの市場、デモグラフィック、業種(自動車、食品、小売など)に適したメッセージでSpectrum Reachのブランドをアピールできるように、クリエイティブを迅速にカスタマイズする方法を見つけなければなりません。また、Spectrum Reachの各地域のクライアントを、直接、クリエイティブに登場させる必要もありました。

Kernelでは常にパーソナライゼーションのリクエストに応じるようにしていますが、現地での追加の制作作業抜きで、この大がかりなカスタマイズを容易に実現するソリューションを見つけられずにいました。偶然にも、Kernelのクリエイティブリードが、Adobeのツールセットを基にAfter EffectsとCCEライブラリを使ったワークフローを考え出したことで、各地域に合わせてカスタマイズしたビデオコンテンツの制作にかかる手間を大幅に削減することに成功。この画期的な方法により、制作作業全体の拡張性が高まり、記録的に短い時間で、スポット広告のバージョンを数千種類も作成できるようになったのです。

Spectrum Reachの刷新のストーリーをご覧ください。新しいワークフローと、このワークフローを使って、広告クリエイティブを地域ごとにカスタマイズする様々な方法をどのように考案したかを紹介しています。

ストーリーボードからプロトタイプ、クリエイティブのサインオフまで

このプロジェクトの作業はシナリオ作りから始まりました。シナリオが承認されたら、Kernelのデザインチームがビジュアルの計画に取り掛かり、何度か計画を練り直して、テレビ広告用に調整されたプロトタイプを開発しました。この広告では、背景にイラストを使い、前面には実際の人物の動画を使っています。Adobe Stockを使用してビデオ映像の編集と必要なショットの種類の定義をおこない、より肉付けされたストーリーボードが出来上がりました。

プロトタイプの新しいバージョンが必要になるたびに、さらに細かい要素を追加し、調整を行って、アニメーションに磨きをかけていきました。タイプの異なる出演者を使ってグリーンスクリーンをバックに撮影をおこない、違うタイプのお客様の動画を業種ごとに用意。クリエイティブがサインオフされたら、いよいよ、(このキャンペーンに大きな付加価値をもたらす)プロジェクトの次の段階、つまり、ローカリゼーションという難題に取り組みました。

After Effectsのテンプレートを使うと、ビジネスを演出する背景要素や顔に装着するマスクを選択して、最終的なスポット広告に追加できます。

36の市場で放映されるカスタマイズされた地域密着型テレビCMを制作

ローカリゼーションは極めて重要なので、このテレビ用のクリエイティブは編集しやすい形にしておく必要があることをKernelは理解していました。そこで、After Effectsのテンプレートを使用して、編集者がどこにいても、数分で30秒のスポット広告をカスタマイズできるプラグアンドプレイが作成されました。

スポット広告を効果的にローカライズするには、地域ごとに最初の地図アニメーションを変える、いくつかの画面で地元の広告を表示する、ポストカード画像、吹き替え、ローカライズした文章、最後の映像を追加するなどの編集が必要です。スポット広告はさらに、タイプの違う3人の消費者の映像(マスクありとなしの2パターン)を使って、3業種向けにカスタマイズされました。

ひとつのAfter Effectsプロジェクトで複数のプリコンポジションとエクスプレッションを使用することにより、編集者が必要な要素を置き換え、ドロップダウンメニューから変数を選択するだけで、プロジェクト全体にプリコンポジションとエクスプレッションを適用できるようにしました。プリレンダーの操作やガイドレイヤーの提供も、カスタマイズ時の効率化とエラー混入のリスク縮小に貢献。Kernelでは、After Effectsのほかに、Adobe Stockといくつか事前に制作していた遠景ショット、Adobe IllustratorAdobe AuditionAdobe Premiere ProAdobe InDesignを使用しました。

リアルタイムでの共同作業を可能にしたAdobe XDも、非常に役立ちました。Adobe XDを使用することにより、Kernelのチームはグループ内でクラウドファイルを共有してライブ編集をおこなうことができ、デザイナーはビデオ会議をスケジュールして同じXDファイル内で作業し、実際の制作ワークスペースにいるような感覚を得ることができたのです。さらに、チーム間の共同作業も促進されました。ムードボードを参照したり、Webページ、印刷、デジタルのデザインコンセプトをすべてひとつのボードにまとめて確認できる機能があり、複数のプラットフォーム間で一貫性を維持することができました。

制作の最後には、メインのローカリゼーションプロジェクトと併せてパッケージ化され、30か所を超える市場に点在しているKernelの編集者に送られました。

After Effectsのテンプレートを使うと、ビジネスを演出する背景要素や顔に装着するマスクを選択して、最終的なスポット広告に追加できます。

パンデミック中のコンテンツのカスタマイズ

Kernelがこれほどのスピードと量で、このクリエイティブのローカリゼーションとカスタマイズを実現できたのは、広告代理店としてのKernelの体制ならではです。

この種のプロジェクトにAdobe Creative Cloudを使用することは珍しくありませんが、パンデミック中はほとんどの対面での制作は禁止されていました。KernelではAdobe独自の製品、ツール、機能を利用することで、ファイルを米国中に点在しているチームメンバーと共有し、わずか数週間で結果を出すことができたのです(36種類のコアバージョンを制作し、それらを基にさらに好きなだけバージョンを増やすことが可能)。Kernelは、承認が降りるよりも先に、カスタマイズされたスポット広告を作成していました。ハウスエージェンシーが業務を拡張し、全国と地域の両方のレベルでメッセージを考える手法として、新たな先例が作られたといえるでしょう。

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この記事は2021年3月19日にTimm Chiusanoにより作成&公開されたIn-house agency Kernel reimagines brand messaging with video at scale抄訳です。