クリエイティブで伝える本来の姿 – Adobe Stockが考えるダイバーシティ & インクルージョン
私達の社会はたくさんの人種、文化的背景の異なる人たちで構成されており、クリエイティブで表現される人たちも同様に多様性が求められています。このブログでは、Adobe Stockのコンテンツを通じて多様性を表現するスタンスや活動についてご紹介します。
クレジット:Adobe Stock/B. Alyssa Trofort/Diversity Photos
先日、お客様向けのAdobe Stockオンラインセミナーシリーズにて、クリエイティブに求められる多様性についてディスカッションをする機会をもうけました。ゲストスピーカーとして、アドビのコンテンツパートナーの一つである、Diversity Photosの共同創業者であるNicole Carter氏とGerald Carter氏をお招きし、両氏のクリエイティブな変革者としての業績と、多様性のあるコミュニティ出身のアーティストに力を与える取り組みについて語っていただきました。また、Syneos Health Communicationsのバイスプレジデント兼ビデオおよびアート制作担当取締役であるHarvey J. Austin氏からも、広告業界において多様性のある新世代のクリエーターを育成する取り組みについてお話を伺っていました。
アドビは、「Creativety for all - すべての人に『つくる力』を」という信念にゆるぎない思いを抱いています。誰もが自分の創造性を表現、共有し、世界をより活気に満ちた場所にする機会を持つべきだという考えは、当社の核となる信条の1つです。これを実現する方法の1つは、ビジュアルストーリーを通してメッセージを伝えることと考えています。
まだ道半ばですが、既にいくつかの成功例も生まれてきています。このセッションでは、アドビの目標に賛同し、Adobe Stockのコレクションにダイバーシティ&インクルージョンに関連する画像を提供するだけでなく、カメラの先にいる有色人種のアーティストの地位を向上しようとするコミュニティのリーダーたちの取り組みを取り上げました。
クレジット:Adobe Stock/Gerald R Carter Jr/Diversity Photos
Adobe Stockのコンテンツ開拓担当マネージャーであるNatika Sowardは、アドビ社内の取り組みを主導し、過小評価されている人々が作り出す独創的なコンテンツに対するニーズを認識しているパートナーを増やすべく活動を続けています。「私たちが今特に力を入れているのは、Adobe Stockコレクションに多様性をもたらすことです。コンテンツ戦略にもこの考え方は盛り込まれており、よりお客様のニーズに合ったものを提供できるよう取り組んでいます」とNatikaは語っています。
昨年の夏、600人を超える業界のクリエーターを対象に「State of Creativity 2020」調査を実施した結果、89%のクリエーターがダイバーシティ&インクルージョンに関するクリエイティブ素材が必要とされていることがわかりました。また、90%のクリエーターから、ビジュアルの文化とトピックのトレンドがこれまでにない速さで進化しているという意見もいただきました。
2020年に世界がどれほど変化したかを考えると、この結果は驚くには当たりません。調査対象となったクリエーターの91%が、2020年におこった様々な歴史的な出来事により、これまで以上に現実社会の問題をクリエイティブに取り入れるようになったと回答しています。クリエイティビティの未来を考えると、これは多くのお客様に共感いただけるのではないでしょうか。
「多様性に関する今後の取り組みについて、アドビのCEOであるShantanu Narayenは2021年の企業ビジョンの中でその概要を述べています。アドビは、ダイバーシティ&インクルージョン、そして公平さの実現を約束しています。特に重要視しているポイントが3つあり、『あらゆる声に力を与えること』、『独自のインパクトを与えられる分野を主導し、声を発すること』、そして『投資の観点からもサポートをおこなうこと』です。これらは、Adobe Stockの戦略にも反映されています」とNatikaは説明しています。
クレジット:Adobe Stock/Mhandy/Diversity Photos
偽りのないストーリーテリングを可能にする関連画像
オンラインセミナーでは、多様性を追求する取り組みがアドビとお客様にとって極めて重要である理由についてNatikaは詳しく述べています。「アドビのコンテンツパートナーは、お客様のビジュアルのニーズと独自性や信憑性ある作品が、ビジネスにどれだけの影響をもたらすか重々理解しています」
「ここ数年、世の中で重要視されるトピックやライフスタイルが大きく変化したと感じています。その結果、メッセージとの関連性を保つキャンペーンビジュアルにも実質的な変化がみられるようになりました。作品を通して表現されているストーリーがリアルであることは、Adobe Stockにおいて最も大切な要素の一つです。偽りのないストーリーテリングを可能にするキャンペーンで利用される場合、多くのユーザーにとって特に重要な要素といえるでしょう。ブランドを差別化して顧客との強固なつながりを築くには、独自の視点でストーリーを語るのが有効です。その視点とは、ダイバーシティ&インクルージョン、文化的な関連性、それぞれの業界固有の事情を反映した視点です」とNatikaは語っています。
クレジット:Adobe Stock/Gerald R Carter Jr/Diversity Photos
画像の正統性とクリエーター支援の重要性
Adobeのミッションを達成するうえで鍵になるパートナーの1社が、Diversity Photosです。オンラインセミナーでは共同創業者の二人から、ストック素材にも有色人種のリアルな表現を取り入れるための試みについて話を伺いました。彼らはAdobe Stockとの共同プログラムとして、Creative Empowermentプログラムをスタートさせました。これは、有色人種のアーティストがストックフォト業界に参入しようとする際に生じる障害を乗り越えるために必要なツールを提供するものです。
同社の共同創業者であるNicole Carter氏とGerald Carter氏は、ストックフォトの表現の乏しさに不満を覚え、2016年にDiversity Photosを創業しました。「選択肢はほとんどありませんでした。当時あったストックフォト素材では、私たちのコミュニティの幅広さをカバーできていなかったので。私は日々、自分の目でコミュニティを見ていましたが、メディアはその姿を正しくとらえていなかったのです」と説明しています。
Nicole Carter氏は、代理店のHeatが実施した調査に注目しました。この調査によると、広告におけて多様性が最も高いブランドは、最も低いブランドより株価のパフォーマンスが69%優れていたのです。「株価を引き上げている要因は多様性のある広告だけではありません。ですが、そこには直接的な相関関係があると考えられます。広告における多様性は、広告主がどのような企業で、どのように顧客との関係を築き、サービスを提供しているかを裏付けします」と同氏は語っています。
クレジット:左:Adobe Stock/Melissa Alexander/Diversity Photos、中央:Adobe Stock/Melissa Alexander/Diversity Photos、右:Adobe Stock/Melissa Alexander/Diversity Photos
Nicole Carter氏は、信憑性のないクリエイティブとは、良い本の中に誤字脱字を見つけるようなものだと語っています。内容が正しくなかったり、実際にはあり得ないと感じてしまう画像は、本来達成すべき目標から私たちを遠ざけてしまうでしょう。このような結果を避けるためには、カメラの前だけでなく、カメラの後ろ側にも目を向けることが必要です。Creative Empowermentプログラムは、この問題に対処することを目的としています。
「これまで、過小評価されているマイノリティの人々はストック業界に参入する大事な機会を奪われてきました。特に米国では、人種差別主義と不平等が国全体に広がることによって拡大した貧富の格差が、その原因となっています。Creative Empowermentプログラムは、この問題に正面から取り組んでいます。このプログラムでは多様性のあるコミュニティに投資することで、そのようなコミュニティ出身のクリエーターを経済的に支援しています」とNicole Carter氏は語っています。
昨年の8月に開始されたパイロットプログラムは大きな成功を収めました。総合的なアプローチを採用し、最初の対象グループのアーティストに対してトレーニングをおこなった結果、6ヶ月間に35回の写真撮影がおこなわれ、4,000を超える写真とビデオコンテンツが制作されたのです。次の対象グループに対するトレーニングは、今年の春に開始される予定です。
Gerald Carter氏らは、2021年にさらに興味深いプロジェクトの実施を予定しています。その1つは、新しい医療施設で実施が予定されている妊娠と出産をテーマにした写真撮影です。Diversity Photosでは今後、ビデオコンテンツの分野にも進出することを発表しています。
クレジット:左:Adobe Stock/Mhandy/Diversity Photos、中央:Adobe Stock/Gerald Carter/Diversity Photos、右:Adobe Stock/Gerald Carter/Diversity Photos
「多様性」を選択肢ではなく、標準に
オンラインセミナーに参加したHarvey J. Austin氏は、有色人種の人々のクリエイティブ業界における地位の向上と支援に対する熱意を語っています。Austin氏は、マーケティングと広告において「多様性を選択肢ではなく、標準に」することの必然性を説いています。同氏は、この分野でキャリアを積む過程で、自分と似た境遇にある人や同じような背景を持つメンターあら指導を受ける機会はありませんでした。現在、Syneos Healthでは、組織内にダイバーシティ&インクルージョンを推し進めるうえためのいくつかの取り組みを用意しています。
たとえば2020年の夏、Austin氏と数名のメンバーは、Syneos Healthにおいて黒人社員リソースグループを発足させました。「黒人社員リソースグループのミッションは、黒人の入社希望者を呼び込み、黒人社員のキャリアアップを目指しながら、企業、ビジネスの優先事項、目標、ブランド価値をも引き続き支援していくことです。私たちは、社内におけるBIPOC(黒人、先住民、有色人種)の社員および役員の表現機会を増やし、これらの個人のキャリアアップと指導、採用、継続的雇用に焦点を当てようと考えています」とAustin氏は語っています。
今年、Syneos Healthではキング牧師記念日と黒人歴史月間を記念するキャンペーンを実施しました。アドビはクリエイティブパートナーとしてこのキャンペーンの立ち上げに参加し、プログラム用の関連画像を提供しています。
Austin氏の取り組みは、広告、マーケティング、広報に携わる有色人種の人々のネットワークである100 Roses from Concreteへの参加後も続いています。このネットワークへの参加により、またパンデミックへの対応として、Austin氏はG.R.O.W.T.H. Initiativeの設立にも尽力しました。G.R.O.W.T.H. Initiativeはバーチャルなインターンシップで、多文化出身の大学生を100 Roses from Concreteのメンターに紹介し、8週間にわたって非営利のクライアントに関する簡単な課題に実際に取り組ませるものです。アドビの支援を受けて、Austin氏のグループはCity Living NYを立ち上げています。これは、コマーシャル放送を含む大規模な広告キャンペーンです。G.R.O.W.T.H. Initiativeでは、既に2021年のプログラムへの申し込みを受け付けています。
自身のキャリアではメンターの指導を受ける機会を得られず、この分野における主導者となったAustin氏は、有意義な変化は内側から生み出さなければならないと考えていました。「私たちは積極的な取り組みをおこなって、多様性のある個人をこの業界に引き込まなくてはなりません。なぜなら、私たちがサービスを提供している世界もまた多様性に満ちているからです」
クレジット:左:Adobe Stock/alvaro 右:Adobe Stock/Santi Nunez/Stocksy
クレジット:Adobe Stock/Hero Images/Hero Images
クリエイティビティの未来
オンラインセミナーの最後では、作品の中で多様性を表現しているクリエーターを中心に据えることを目的としたアドビの新しいプログラムをご紹介しました。
過小評価されているコミュニティの新しい声やビジュアルを紹介するため、Adobe Stockで販売するコントリビューターに対し、Adobe Stock クリエイター支援プログラム開始し、アーティストを育成するファンドを用意しています。このファンドは、アーティストに対して経済的支援と機会を提供し、クリエイティブ業界において正確で包摂性のある文化的な表現を推進するものです。最初の受給者は既に選出されていますが、申請は受け付け中、年間を通じて随時受け付けをおこなう予定です。プログラムへのご応募や選考プロセスは英語となりますが、日本からもふるってご応募ください。
また、オンラインセミナー「ストック画像業界における多様性のある表現」(英語版のみ)はオンデマンドでもご覧いただけますので、今後のクリエイティブ制作に関して多様性を考える際のヒントとして活用ください。
合わせて、Adobe StockにあるCreative Empowermentプログラムの最初の対象グループが制作した画像のギャラリーにはインスピレーションあふれる画像が満載です。ぜひご覧ください。
いかがでしたでしょうか? Adobe Stockでは様々なクリエイターからの作品を世界中から受け付けています。日本の文化や社会的な課題として重要と考えるテーマを写真やイラスト、ビデオ作品に仕上げ、是非Adobe Stockで販売してください。詳しくはこちら。
この記事は2021年3月9日にLindsay Morrisにより作成&公開されたDiverse representation in stock imageryの抄訳です。