1人1台端末で広がる探究的な学び〜SDGsクリエイティブアイデアコンテスト2021キックオフイベント
GIGAスクール端末の活用促進をめざし開催するSDGsクリエイティブアイデアコンテスト。作品応募を希望する学校や教員に対し、SDGs学習のポイントやAdobe Spark活用事例など作品制作に役立つ情報をお届けするオンラインセミナーのキックオフ回をレポートします。
GIGAスクール構想による1人1台のPC環境は、児童・生徒の学びの姿を変え、これからの社会に欠かせない創造的問題解決能力を育むことが期待されます。朝日新聞 SDGs ACTION!とアドビは「SDGsクリエイティブアイデア コンテスト2021」を開催し、SDGsの達成に向けた解決のアイデアを全国の小、中、高等学校より広く募集します。2021年4月19日(月)にはキックオフイベントが開催され、昨年度のコンテスト受賞校から応募作品の背景と、アドビからAdobe Sparkによる作品作りのヒントが共有されました。
「自分ごと」にするプロセスを大切に
前半は、2020年度の同コンテストで優秀賞を受賞した京都府亀岡市立東別院小学校で当時教諭として指導にあたっていた亀岡市みらい教育リサーチセンター指導主事の広瀬一弥氏が、応募作品に至る学習のプロセスについて報告しました。
亀岡市みらい教育リサーチセンター指導主事 広瀬一弥氏(発表スライドより)
同校の受賞作品は、Sparkで作成されたウェブページで、SDGsの17のゴールについて子ども達自身が調べた解説と、課題解決の方法を検討した3つの提案が、グラフィックや文章、動画などで表現されています。作品の制作自体にかけたのは10日間ほどですが、そこに至るまで1年間を通してSDGsについて探究的な学びを行ってきました。
子ども達の制作の様子と作品例(発表スライドより)
まず、SDGsの17のゴールから自分の興味あるものを選び調べ学習をすることからスタート。ニュースや教科で学んだことと結びつけ、自分なりのアイデアで解決策を考えるところまでいくつものステップを踏みます。
事実、伝聞、推測、意見にわけて思考を整理する過程(発表スライドより)
中間発表では、他の人の発表から自分が調べているゴールを別の視点で見直す機会を得ます。次第にゴール同士が関連しあっているということに気づき始め、最終的に3つのグループに分かれて複数のゴールに関わる解決策を提案することになりました。
広瀬氏は、子ども達の気づきを待ち、「自分ごと」に近づけていけるよう見守ります。亀岡市は山の中の自然豊かな環境にあり、子ども達は幼い頃から山や川の持つ圧倒的な力に接して育っています。グループごとにまとめた解決策の提案は、そうした日々の実感が反映されました。例えば水問題について考えた子どもたちは、地域の自然を守りたいという気持ちが強く川が大好き。その思いと世界の水問題で苦しんでいる人たちの課題が結びついた解決策が生まれました。
解決策はSpark Videoで作成した動画で表現。ブロックでモデルを使ってコマ撮り撮影などを行った
アウトプットの形は、子ども達の気づきと共に徐々にアップグレードしていきました。最初は調べたことをポスターにまとめるグラフィック制作から始めましたが、それだけでは伝わりづらいことに気づきナレーションを入れた動画を制作。さらに、自分たちの力で直接解決するには限界があると感じた子ども達は、解決策の提案をウェブページにまとめて世界に発信することが課題解決につながると考えたそうです。「子どもたちが自分ごととして取り組んでいれば、学習の方法すら自ら生み出すのだと気づきました」と広瀬氏。
1人1台端末が広げる創造的な学び
子どもたちはもちろん広瀬氏自身もこの学習で初めてSparkを使用しましたが、テンプレートが良い意味での制限となり「勝手におしゃれ」に出来上がるため、伝えたいことの中身に思考を集中できると感じています。大切なのは、SDGsについて考えを深め、メッセージを伝えること。細部に凝ってこだわりすぎて作品作りがメインにならないように声をかけたそうです。
Sparkで作成した作品はクラウド上にありネットですぐに見られるので、学級通信にQRコードを貼って保護者に随時共有し、家庭でもSDGsの課題解決に関心を持ってもらうきっかけにもなりました。これまでの教育現場ではなかなか出せなかったスピードと情報共有方法です。
広瀬氏は、子どもたちが何かを調べて発表する活動の手段やアウトプットを以前と比較し、「タブレット端末を使うことによってすごく幅が広がったように思います」と話し、多くの学校がGIGAスクール構想の1人1台端末を生かして創造的な学びに取り組むことに期待を寄せます。
「教師になった頃は、想定外のことが起こると、想定のレールに戻すことを考えていました。探究的な学習を進めて行く中で指導観が変わり、自分の想像を越えたことを子どもたちが提案してきたときに、最高の喜びを感じるようになりました」と自らの実感を語る広瀬氏。最後に、「自分が想定する以上のものを子ども達は作ってきます。そんな子どもたちの姿を、ぜひ多くの先生に目の当たりにして欲しいと思います」と呼びかけました。
Sparkの直感的な操作感と連携を紹介
後半はアドビの営業戦略本部エデュケーションエバンジェリストの井上莉沙がAdobe Sparkの使い方を紹介しました。本コンテストは、Sparkを使用して動画を1本以上含むウェブページを制作して応募することになっています。デモンストレーションではSDGsのテーマにそったグラフィック、動画/スライドショー、ウェブページがどんどん作成され、直感的な操作方法と質の高いテンプレートで制作がスムーズに進むことが伝わります。
【グラフィック作成の「Spark Post」】
テンプレートの活用で情報が瞬時にデザインされる
【動画作成の「Spark Video」】
素材を並べてスライドを作る感覚で動画を制作。ナレーションは画面を見ながら録音できて、選べるBGMも多数用意されている
【Webページ作成の「Spark Page」】
コードを記述することなく直感的な操作で簡単に印象深いデザインのウェブページを制作できる。動画の掲載も簡単。スマートフォンなど多画面サイズに対応している
なお、Sparkで作成した作品はいずれもクラウド上にデータが自動保存されるため共有が簡単で、ウェブページの公開も簡単です。グラフィックと動画はダウンロードもできます。
グラフィックの共有画面。Google ClassroomやMicrosoft Teamsとも連携
昨年受賞校の亀岡市立東別院小学校でもスムーズに活用できたように、直感的な操作でアプリの習得負担が少ないのがSparkの特徴。子ども達の表現手段のひとつとして活用が広がるのが楽しみです。
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SDGsクリエイティブアイデアコンテスト2021(公式サイト)
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