先生も子どもたちと共に学び深める視点をもって〜SDGsクリエイティブアイデアコンテスト2021セミナー

GIGAスクール端末の活用促進をめざし開催するSDGsクリエイティブアイデアコンテスト。作品応募を希望する学校や教員に対し、SDGs学習のポイントやAdobe Spark活用事例など作品制作に役立つ情報をお届けするオンラインセミナーのキックオフ回をレポートします。

先生も子どもたちと共に学び深める視点をもって〜SDGsクリエイティブアイデアコンテスト2021セミナー

朝日新聞 SDGs ACTION!とアドビは「SDGsクリエイティブアイデア コンテスト2021」を開催し、SDGsの達成に向けた解決のアイディアを全国の小、中、高等学校より広く募集します。GIGAスクール構想による1人1台のPC環境と、教育機関向け無料Adobe Sparkを活用してSDGsにどう取り組むのか、そのヒントとなる第2回目のセミナー「子どもたちと学び深めるSDGs」が、2021年5月17日(月)に開催されました。

SDGsとの向き合い方

セミナーは、本コンテストの審査員である慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授 蟹江憲史氏と、神田外語大学 グローバル・リベラルアーツ学部教授兼学長補佐 石井雅章氏による対談から始まります。両氏はSDGs研究の第一人者であり、学校でSDGsを取り上げる際に役立つ大切な視点が語られました。

左:慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授 蟹江憲史氏。右:神田外語大学グローバル・リベラルアーツ学部教授兼学長補佐 石井雅章氏

左:慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授 蟹江憲史氏。右:神田外語大学グローバル・リベラルアーツ学部教授兼学長補佐 石井雅章氏

<SDGsの捉え方>

SDGsにはカラフルなアイコンで示された17のゴール(目標)があります。これらは「我々の世界を変革する: 持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」で示されたゴールで、その前文にはSDGs全体のビジョンが書かれています。

蟹江氏は、「ひとつのゴールだけを考えるのではなくて、17のゴール全体としてひとつになっているんだという視点をぜひ大事にしてください」と話します。石井氏は、17のゴールのいずれかを既存の教科や単元に当てはめて終わりにしてしまうケースがあることを指摘。17のゴールを個別に扱う際には、「2030アジェンダ」の持続可能な世界を達成するという大きなビジョンと結びつけて捉えるよう勧めます。

<大人も子どもも共に考えることが大切>

蟹江氏は、「SDGsは17の答えが書かれた問題集」と表現します。SDGs実現のための答えが17のゴールとして示されていても、その答えに至る問題の解き方は書かれていません。子ども達にその解き方を考えさせるということが重要で、正しい答えを見つけるのとは逆転の発想が必要です。

「持続可能な世界って実現したことがない。達成したことがある先生がいて、誰かがやり方をもっているということじゃないんです。だから一緒に学んでいくという環境作りや考え方が大事です」と石井氏。先生も子どもも立場や世代を越えて一緒に学び合う仲間になることが大切だということです。

<コンテストに向けて>

コンテストに出てくる作品の傾向は、アイディアが中心のものと、調べたことが中心のものがあり、両方のバランスが重要だと石井氏は指摘します。「アイディアはアイディアだけでは成立せず、分析や深い洞察があってこそ。また、すごく細かく調べても、アイディアとして昇華させられないのはちょっともったいないですね」。

蟹江氏はクリエイティビティに期待します。「ゴールを達成するまでの道筋をどう描くかは自由です。それが知的好奇心を刺激すると思うので、楽しく思いながら取り組んで欲しいですね」。身近なこと、グローバルな視点、テレビで見聞きした話題など、出発点もいろいろあります。さまざまな方法があることがクリエイティビティを刺激するというわけです。

先生と子どもが学び会うヒント

続いてアドビ 教育市場の松本聖子が、石井氏にインタビューし、先生も子どもも一緒に学ぶ学習活動についてのヒントを探ります。

左:アドビ 教育市場部 松本聖子。右:神田外語大学グローバル・リベラルアーツ学部教授兼学長補佐 石井雅章氏

左:アドビ 教育市場部 松本聖子。右:神田外語大学グローバル・リベラルアーツ学部教授兼学長補佐 石井雅章氏

石井氏は、共に学ぶ例として、身近な学校生活で、どんなふうに水やエネルギーを使っているかを一緒に調べるという活動をあげました。調べてみると、先生から見えることと、子ども達から見えることには違いがあります。それらを出し合い違う視点を知ることが、先生にも子ども達にも良い刺激になるということです。先生の意見が正解ということではありません。

「2030アジェンダ」でポイントとなるのは、持続可能な世界へのトランスフォーミング(変革)。大人ほど変わることを避けがちなので、先生も、自分たち自身も学びながら変わっていくということに喜びや楽しみを感じて、ワクワクしながら取り組んで欲しいと呼びかけました。

1人1台のGIGA端末は小さなことから自由な発想で活用

後半は、実際にAdobe Sparkを活用している千葉県印西市立原山小学校の松本博幸校長からの事例紹介です。同校では2020年3月から段階的に1人1台のPC環境を整え、10月には全校生徒にChromebookが行き渡りAdobe Sparkの活用がスタートしました。

印西市立原山小学校の松本博幸校長

千葉県印西市立原山小学校の松本博幸校長

松本校長が1人1台のPCを活用する上で大切にしているのは「いつでもどこでも小さなことから自由な発想で」ということ。教科に限らず、係や委員会の活動、家庭学習、家庭との連絡などさまざまなシーンで活用しています。例えば児童に学校公式の「子どもブログ」の運営を任せていて、責任ある情報発信に必要なプロセスを学ぶ場にもなっています。

小学校1年生からSparkを使って創造的な学びの場を

生活科と総合的な学習の時間には、SDGsをカリキュラム編成の視点として組み入れ、社会とつながるプロジェクト型の学習を行っています。

生活科と総合的な学習の時間に行っている探究活動の一覧。SDGsの視点を取り入れている

生活科と総合的な学習の時間に行っている探究活動の一覧。SDGsの視点を取り入れている

例えば5年生は、エシカル消費を地域に広めるという活動を行い、地域の大型ショッピングセンターの協力で特設のエシカル消費コーナーを開設しました。この活動ではSparkが大活躍。売り場に流す動画、ポスター、ちらし、ポップなどをSparkで作成し、さらに一般公開用のウェブサイトも作成したそうです。

5年生の活動の様子。Sparkを使いこなしている

5年生の活動の様子。Sparkを使いこなしている

Sparkの利用は高学年に限らず、1年生でも。国語や図工などの時間に、動画や音声を組み合わせて1年生なりの表現を行っています。最初は不安もあったそうですが、まず、5、6年生が使い慣れることから始め、1、2年生が使う際に、5、6年生が1対1でサポートしました。

1年生の活用の様子。発達段階にあった表現に使用している

1年生の活用の様子。発達段階にあった表現に使用している

松本校長は、Sparkを使うと子ども達が直感的な操作で質の高い表現制作を行えることを評価します。伝えたいことをビジュアル化する活動を授業に取り入れやすくなり、多様な表現力や、多角的な思考力を育む機会が増えたということです。

SDGsに取り組む視点と、小学生がGIGA端末とSparkをのびのびと活用している姿は、たくさんのヒントを与えてくれます。ぜひ、皆さんの学校でも学習に取り入れ、コンテストに参加してみてください。

【セミナーアーカイブ視聴・次回セミナー申込はこちらから】

SDGsクリエイティブアイデアコンテスト2021(公式サイト)

▼関連リンク

GIGAスクールモデル活用に最適 | 教育機関向け無料 Adobe Spark