「おうち時間」を撮るならば、スローシャッターを友達に!
心に響く作品を作る際に必要なポイントを、第一線で活躍するコマーシャルフォトグラファー・趙慧美さん(アマナ)から学べる記事です。ワンランク上の表現を目指し、できた作品はAdobe Stockで販売してみましょう。
自宅で過ごす時間が増えた今、「おうち時間」をテーマにしたストックフォトが人気となっているそうです。ただ、身近なシーンをただ撮ってもつまらないですよね。他と差をつけるおうち時間を切り取るなら、スローシャッターに挑戦してはいかがでしょうか。ライフスタイルフォトを得意とするアマナのフォトグラファー・趙慧美氏がティップスをお教えします。
■「ブレ」と「ブレてない」を一枚に収めて、静止画に“動き”を。
「おうちで過ごす時間をイメージした写真を使いたい」「ステイホーム期間に充実した自宅での過ごし方を写真にしたい」。ステイホームが続く中で、こうした撮影依頼が増えています。おうち時間の過ごし方は、千差万別。それだけに何をどう撮ればいいかテーマ決めから迷うし、ふつうに撮っても似たような写真になって埋もれてしまいそうです。
そこで、私がおすすめしたいのが「スローシャッター」を効果的に使う方法。言うまでもなくシャッタースピードを遅めに設定して撮る撮影法です。シャッタースピードが遅くなればカメラに光が入る時間が長くなるので、動きのない風景や被写体に変化はありませんが、動いている被写体は、「ブレて」写ります。これがおもしろい表現を生むからです。
実際の写真で見てもらいましょう。テーマは「料理」。ステイホームで自炊する人が増えたので、料理写真のニーズが高まっています。
まずはスローシャッターを使わない写真から。
小麦の香りが漂ってきそうな、ほどよく陰影のついた「パンを切る風景」ですよね。これはこれで完成度の高い写真ですが、私ならもうひと味、プラスしたくなる。そこでスローシャッターを使います。ほぼ同じ構図で、
1/ 60秒だったシャッタースピードを1/8秒まで遅くして撮ったのが下の写真です。
いかがですか? パンを切るナイフが完全にブレています。そして今まさに切っているパンがブレていますね。
このブレが、正解です。ブレによって「今、まさに動いている」「ナイフでパンを切っている」というライブ感が伝わってきます。先にあげたシャッタースピード1/60秒で撮った写真にはなかった動的な臨場感が、写真に宿っています。
言い方を変えると、静止画にも関わらず「時間」を感じる写真になるということ。スローシャッターによって「ブレているところ」と「ブレていないところ」を作ることは、「動いているところ」と「動いてないところ」を創ることになる。まるで動画のような動きと時間を感じさせることができるのです。
■夜のベッドサイドに、大人の艶と華やかさを。
陽が落ちた夜のおうち時間でも、スローシャッターでエモーショナルな撮影が可能です。たとえばベッドサイドで、ムードたっぷりな夜の時間を撮るとしたなら。たとえば1/125秒のシャッタースピードで撮ると、こんな感じの写真になります。
輪郭がきりっとたちあがり、きれいな写真ではあります。ただ、夜の艶感や、大人の落ち着いた雰囲気があるかというと、少ないですね。ちょっと冷たい印象すら感じます。
そこでシャッタースピードを1/15秒に。スローシャッターに変えてみましょう。
シャッタースピードが遅くなった分、まず光が多く入るため電球の色味を全体に感じて少し黄味がかった色になりました。そして、手の動きをとらえたかのようなブレ。1/125秒のシャッタースピードのときは、とまっていたシャンパングラスの気泡もシュワシュワと音を立てているように感じます。臨場感と時間軸が、スローシャッターによってふわりと立ち上がってくるのです。
ライフスタイル系の写真を撮るときは、こうしたスローシャッターによるブレ表現を意識すると、他との差別化になります。注意したいのはスローシャッターにすると、手ブレも起きやすくなるので、可能な限り三脚を使いましょう。その場になかったらしっかりとテーブルや壁などを使ってカメラを持った手を動かないようにホールドすること。
また、感度や絞りなどを調整せずにスローシャッターにすると、光が入りすぎて明るくなるので、露出を調整して撮りましょう。
いずれにしても、習うより慣れろ。ステイホーム期間を利用して、おうちでシャッタースピードを変えながら、自分なりのスローシャッターのテクニックを磨いてみてください。
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