あるがままに: Adobe Stockに垣間見る自分らしい生き方や自己表現

Large Colorful People Pattern With Grunge Texture

イメージ:Adobe Stock/Barry Bödeker/Stocksy

ここのところ「自分のあるがままを生かす働き方(whole self to work)」の重要性が、以前よりも増して頻繁に語られるようになりました。このブログでは、このフレーズを2015年に考案したMike Robbins氏に敬意を表しつつ、私たちなりに、「今求められる自分らしさとは何か」について考えてみたいと思います。

自分のあるがままを生かすビジュアルの重要性

広告物などで求められる人物像がある偏った「“特定“の見た目」に準拠していることは、誰の目にも明らかです。たとえば、体型、民族的背景、年齢、どれをとってもステレオタイプ化された「ある一定の姿」が求められていて、ともすれば様々な問題はなおざりにされがちです。それは、私たち自身と私たちが生きる世界の姿やあり方について、私たちの視野が狭められ、多面的な見方が妨げられていることにほかなりません。

では、ビジュアルの世界においてこの問題をうまく取り組むには、どうすればよいのでしょうか。問題を認識することは最初の一歩にすぎません。

最近、Adobe Stockチームは Gearah Goldstein氏からお話を伺う機会を得ました。彼女はインクルージョンとダイバーシティのコンサルタントであり、トランスジェンダーの女性である自分自身の体験を積極的に語っている人物です。

私たちとのインタビューに対し、Goldstein 氏はこう語ります。「社会の寛容性や多様性を本当の意味で実現するには、人が自分たちの本来のあり方を気兼ねなく出せるような環境づくりが必要です。本来の自分を出すことを心から安全だと思える環境、そういう空間がなかったら、必要不可欠な変化を促すための適切な会話は生まれないと思っています」

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

イメージ:Adobe Stock/Adam Perez

Adobe Stockは、このような「空間」を提供するために努力しています。例えば、歴史的に過小評価されてきたコミュニティにルーツを持つアーティストを大きく取り上げ、サポートし、共同のプロジェクトを手掛けたりしています。Artist Development Fundを発足させたことや、Adobe Stock で多様性を意識したビジュアルを優先的に扱っていることもその一つです。私たちは、人のもつ様々な「あり方」を正しく描写するためには、まず最初にその重要性を改めて認識する必要があると考えています。

あるがままの人生とは

自分らしくあるがままに生きることは、それ自体が一つの「物語」になることが多いものです。Goldstein氏は更にこう述懐しました。「私は自分の人生や、私が何者なのかを単に伝えたかっただけなんですね。そして、いざそうしてみると『あれっ、そういえば、自分が何者なのか語るのをやめる必要って全然ないんじゃない?』と考えるようになりました」

ここでいう「物語」とは、その実例に触れる機会がなかったら、なかなか理解するは難しいかもしれません。Goldstein氏はこう説明します。「実例を見てもらうのは、自分事として受け止めてもらうための大切なきっかけを作るためです。若い人がいる場で私がやっていること、そしてそれをやる理由は過去の経験からです。もしも私が若い時に代弁者がいてくれたら、私はもっとずっと早い時期にカミングアウトできていたかもしれないけれど、そういう存在はいませんでした。本当に存在しなかった…『トランスジェンダー』という言葉もなかったのです」

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

イメージ:Adobe Stock/Julia Forsman/Stocksy(左)、Adobe Stock/Julia Forsman/Stocksy(右)

ここで、強調しておきたいことが一つあります。それは「実例を見せるのと、センセーショナルに扱うのはまったく違うこと、むしろ正反対でさえある」ということです。特にクリエイティブに携わるすべての人は、この事実を心に留めておく必要があります。インクルーシブに存在を尊重するのは結構なことですが、センセーショナルに扱うことは、たとえ善意であっても疎外につながるおそれがあります。

障害者の権利に関する活動家でコメディアンの、2014年に他界したStella Young氏は、そのような間違った描写が幅をきかせることについて、たとえポジティブであっても究極的には一人の人生経験に対する見方を歪めるものだと述べています。

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

イメージ:Adobe Stock/Fjello/Stocksy(左)、Adobe Stock/Fjello/Stocksy(右)

2013年のTEDトークで、Young氏はこう語りました。「世の人が『あなたにインスパイアされました』と言ったら、褒め言葉には違いないでしょう。しかし、私たちは『障害者の存在は特別なものだ』というウソに乗せられているだけです。正直言って実際にそんなことはない。… 障害者だからって、朝がきたら自分でベッドから起きられた、自分の名前をまだ覚えていた、そんなことだけで祝福してくれるような低レベルな期待は要らない。私は、そんなものがない世界で生きたいんです」

こういった状況を是正する方法の一つとして、 Adobe Stock はコンサルティング会社の LaVant Consultingとパートナー関係を結びました。同社はコンサルティング事業のほか、全米の障害者団体、障害者コミュニティとの強力なつながりを通して、障害を持つ人々の扱いを改善・拡大する活動を展開しています。

LaVantでインパクトオフィサーを務める Sofia Webster 氏はこう言います。「障害を持った人々が家事や雑用をする姿などを、もっと正確に正統的に描写した通常のコンテンツには、障害を特別視する固定概念をなくしていく効果があると考えます。疎外し病的なものとして見るのではなく、見る人は“ただ単にもうひとりの人間がこんなふうに生きているんだ”と捉えるわけです」

エクストリームスポーツで活躍する Aaron “Wheelz” Fotheringham 氏は、車椅子ランプジャンプの飛距離に関するギネスブック世界記録保持者です。彼は、USA Todayの2017年のインタビュー記事において、「スケートパークに行ったら車椅子の人が最高難度コースを攻めまくってたよ、みたいな話が普通になってほしいですね」と語っています。

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

イメージ:Adobe Stock/Maskot(左)、Adobe Stock/Ignacio Ferr√°ndiz Roig/Westend61(右)

誰でも歓迎 - ブランドが広告の出演者募集方法をインクルーシブに

広告の世界でごく普通のビジネスが展開される中、各社ブランドはコミュニケーションにおけるリアリズムの必要性をしっかり受け止めています。Verizon Wirelessが2020年、オーディション情報サイトBackstageに掲載した広告は、俳優ではなく、キャンペーンのスポットCMに出演する一般人を募るものでした。募集期限は2020年6月13日で、その要項は年齢、人種、体格、性別を限定せず、これまでのメディアの慣習を問う内容でもありました。

募集の文言は次のようなものです。「ロサンゼルスまたはニューヨークに在住している本当の家族、エンタメが大好きで、何を観るかでいつも気が合わない家族を募集します…。Disney、Marvel、またはStar Warsの熱烈なファンで、映画のセリフを言えるか映画の曲が歌える方々」

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

イメージ:Adobe Stock/Hero Images

出来上がったのはこんなCMシリーズです。多様性も豊かな多種多様な家族が登場し、すべてはシームレスなサウンドステージに乗って撮影されました。

また、衣料品ブランドも広告の(そしてサイズの)裾野を拡大させています。充実したデニム商品ラインアップで知られるAmerican Eagle Outfittersが2018年に展開した「Make Moves」キャンペーンの中の一本、Kendrick Lamar氏の曲『DNA』を使ったダンス動画は、Verizonの広告と同じように、様々なジェンダー、人種、体型を持った本物のAmerican Eagleユーザーだけをダンサーとして起用して制作されました。

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

イメージ:Adobe Stock/Image Source(左)、Adobe Stock/Image Source(右)

変化を起こすには業界内の善意が必要な場合もあります。実績豊富なモデルの Lauren Wasser 氏は、24歳のとき、毒性ショック症候群(TSS)の合併症で右脚を切断、のちに左脚も切断する事態に見舞われました。それにもかかわらず、彼女は自分の予想にも反して、すらりとした金色の義足を着けた姿でモデル業を継続できたのです。

Wasser氏は2019年、HyperBaeのインタビューでこう語っています。「まさか、この業界がこんなにも協力的で、私を寛大に受け入れてくれるとは思いもしませんでした。もし、TSSになったのが10年前だったら、私は今、ここにいなかったでしょう。この業界も変わってきているんです。『美』の観念が拡張されて、様々な形、サイズ、能力、色がインクルードされるようになってきました。まだまだ取り組むべきことは山ほどありますが、進歩は進歩です」

その進歩が心からの問題意識やコミットメントに根ざしているとき、違いは伝わるものです。Sofia Webster 氏は、正確な描写が行われた良い事例として、LinkedInの「The Hiring Chain」スポットや、Huluの国際障害者デーによせた広告解説音声付きバージョンあり)などを引き合いに出し、こう語っています。「状況を是正するために全力を注いでいるチームがそこにいるときは、そうなんだなと伝わってきますよ。多様性やインクルージョンにしっかり取り組んでいる会社を、大企業を見ると、心からありがたく思います。その取り組みは大変なことですから」

あなたが「あったらいいな」と思う作品をAdobe Stockで発表しよう

現実に生きる人々の多様性を反映した広告向けのクリエイティブのニーズは、さらに強く拡大しつつあります。そのため、今の世界を正確に表現する、人々に力をもたらすストーリ性の高いビジュアルをAdobe Stockコレクションに加え、この流れを盛り上げることを最優先事項の一つにしていきます。

Adobe Stock 支援プログラムは、強いインパクトがあり、かつ誠実で寛容性の高いコンテンツを制作できるアーティストをインスパイアし、サポートするために用意されました。いろいろな切り口のクリエイティブブリーフを8つご用意したで、新しく多様なビジュアルを生み出すためのヒントとして活用ください。また、Adobe Stockを更にインクルーシブなコレクションにするため、私たちは総額50万ドルのクリエイティブコミッションプログラム「Artist Development Fund」を発足させました。これは、正当に評価されてこなかったコミュニティの中にその方自身のアイデンティティがあり、ビジュアル表現を自分事として追及することのできるアーティストに特化した基金です。アーティストの皆さんからの参加申し込みをお待ちしています(ご応募は英語となります)。

さらなるインスピレーションと、現在実施中のAdobe Stock 支援プログラムに関する詳細情報を得るには、私達のクリエイティブブリーフ「Celebration of Self」をご覧ください。そして、誰にも似ていない体型やパーソナリティを表現する差をを Adobe Stock に投稿ください。皆様の素晴らしい作品をお待ちしております。

この記事は2021年5月13日にSarah Casillasにより作成&公開されたCome as you are: Celebrating the self and self-expression in stock imagery の抄訳です。