【映像制作基礎:第4回】Logデータ・RAWデータの違いを知ろう
Adobe Stockに投稿する 素材はご自身のカメラで撮影 すること が多いと思いますが、ダイナミックな映像やシネマティックな映像を撮影 したい場合に本格的 なシネマカメラなどを使用することもあるかもしれません。その場合、撮影データの選択を誤ると、「データ が SDカードに入りきらなくて困った」、「思うようにカラーの調整ができない」、といった問題が起こりがちです。3つの撮影データの 性質を正しく覚えて今後の撮影や編集に活かしてください。
目次
- データ圧縮の必要性
- 通常データ(Rec709)の特徴とメリット
- RAWデータの特徴とメリット
- Logデータの特徴とメリット
- それぞれのデータの使い分け
1.データ圧縮の必要性
まず、撮影後に行う映像データの圧縮の話から始めます。
そもそも撮影した映像データは膨大な情報を持っています。データの容量が大きすぎるとSDカードに入りきらなかったり、パソコンで編集する際に重くて動かなかったりすることがあります。そうした場合は、データを圧縮して情報量を減らす必要があります。
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撮影データには通常データ、Logデータと、RAWデータの3種類があります。この3つのデータにはそれぞれ特徴があり、データの特性にあわせて使い分けることで撮影データの持ち運びや編集がしやすくなります。
では、各データの特徴とメリットについてご紹介します。わかりやすいように、“釣った魚”を例にしながら説明していきましょう。
2.通常の撮影データ(Rec709)の特徴とメリット
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動画を撮影する場合、特にカメラの設定(モード)を変更しなければ、この通常データ(Rec 709)の形式で記録されます。
通常データの特徴は、撮影の段階で余分な情報は切り捨てられ、最適と思われる色やコントラストが自動でつけられるため、すぐに再生して見ることができます。また、データの圧縮率も高く、SDカードに入れて持ち運ぶのにも便利です。
これを“釣った魚”に例えると、その場でさばいて切り身にし、味付けをし、さらに冷凍保存した状態なので、解凍すればすぐ食べれるというメリットがあります。
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通常データのメリット
- データ容量が軽く、持ち運びや共有に便利
- 撮影後の加工が不要で、すぐに見ることができる
- 一般的なPCスペックで編集が可能
通常データのデメリット
- すでに加工された状態のため、追加で加工することが難しい
3.RAWデータの特徴とメリット
RAWデータのRAWとは、「生(なま)」という意味です。釣った魚で例えると、なんの加工もしていない「釣れたままの状態」になります。
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このデータの特徴は、すべての情報が保存されているということ。情報が豊富に残っているため、撮影後にカラーコレクションやカラーグレーディングを自由に行うことができます。つまり、自分の思い通りの味付けができるというメリットがあります。
一方で、RAWデータで撮影できるカメラは割と高額なものが多く、また情報量が膨大になるため、SDカードのような保存容量の少ないものだとすべてのデータを保存するのは難しくなり、RED MINI-MAGのような大容量記憶メディアが必要になります。編集をとことんやりたい時、多くの情報を残したい時など、どうしてもRAWデータを使いたい場面で使うのがおすすめです。
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RAWデータのメリット
- 多くの情報が残せるので後から自由に加工ができる
RAWデータのデメリット
- データが大きくなりすぎるため持ち運びや共有が困難 ・撮影できるカメラに制限があり、コストがかかる
- 編集にはハイスペックなPCが必要
4.Logデータの特徴とメリット
Logデータは、RAWデータと通常データ(Rec.709)のちょうど中間にあたるもので、情報量が多く残っていながらも、ある程度データが圧縮された状態になります。
魚に例えると、調理しやすいように下処理はされているが、味付けはされていない切り身のようなものです。
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下の画像はS-Log3(α7sⅡ)という設定で撮影したLOGデータになります。Logデータの映像は低コントラストのくすんだ色のため、そのまま編集することもできません。
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そのため、圧縮されている状態から一度解凍し、カラーグレーディングなどの処理を行う必要があります。調理されていない魚はそのままでは食べられないため、味付けしたり火を通したりするのと同じです。
また、LUT(Look Up Table=映像にあてるカラープリセット)などを使うことで、撮影時に仕上がりイメージして撮影することができたり、編集時にカラーグレーディングをスムーズに行うことが可能です。
Logデータのメリット
- RAWデータよりデータを圧縮して持ち運びができ、後で加工することができる
- 比較的安めのカメラでも撮影できる
Logデータのデメリット
- 余分な情報をそぎ落として圧縮しているため、RAWほどは調整がきかず、色温度の変更はできない
- くすんだ色の映像になるため、LUTを当てるなどの加工が必要
5.それぞれのデータの使い分け
では、実際の現場ではRAWデータ、Logデータ、通常データをどのように使い分けているのでしょうか?
ケースバイケースですが多くの場合、カラーコレクションやカラーグレーディング、データの管理が十分に行える予算があるような現場であれば、RAWデータは非常に向いています。しかし、RAWデータを扱えるカメラは非常に高価です。そのため、予算が少なくてもしっかりカラーグレーディングをしたいときなどはLogデータを使う場合が多いです。
ただ、RAWデータとLOGデータは加工しないとすぐには使えないので、撮った後すぐにカット編集だけして公開したい、あるいはそのままクライアントに映像データを渡したいときなどは、ある程度加工された状態の通常データを使います。
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今回はRAWとLog、そのどちらでもない通常データ(Rec.709)の3つを説明しました。
映像をはじめられたばかりの方は、通常データ(Rec.709)で撮影や映像制作のフローを理解することをお勧めします。
シネマティックな画作りに挑戦したい・自分の色を表現したいという方は、RAW、Logなどにチャレンジしてみると、映像表現を広げることができると思います。
ご自身のシチュエーションや予算によってデータを柔軟に使い分けてみてください。
以上、用途に合わせた「RAWデータ、Logデータ、通常データの使い方」についての解説でした。記事には収まりきらないより具体的な説明を知りたい方は、Vookのチュートリアルもご覧ください。
Adobe Stockでは、皆様からの映像をお待ちしております。