Adobe Stock アーティスト開拓ファンド:受賞者のご紹介

クレジット:Adobe Stock/Rawpixel.com

Adobe Stockが50万米ドルを用意し、様々なアーティストの制作プロジェクトを支援するプログラム「アーティスト開拓ファンド」の新たな対象者が決まりました。今回選ばれたアーティストは、Maliha Abidi氏、Sophie Alp氏、Mecoh Bain氏、Mizuho Call氏、Monika Jurczyk氏、Wiji Lacsamana氏、Adam Perez氏、Shawn Pridgen氏です。

たくさんのすばらしい応募者の中でも、それぞれがアイデンティティの拠り所となる地域・民族・ライフスタイルなどの観点から、自分が属するコミュニティを独自の視点で捉え、その特徴を自分事として伝える力に長けた方々を選出しました。 Adobe Stockは「インクルーシブ」という言葉にふさわしい、現実世界の多様性を正確に映し出すコレクション開拓を進めています。そのため、このような卓越したアーティストの皆さんをパートナーに迎え、制作を支援できることは大きな喜びです。

Adobe Stock 支援プログラムは、ストック素材の被写体描写の正確さにこだわり、ビジュアルを通じて社会の寛容性を向上させる取り組みの一環としてAdobe Stockが実施している活動のひとつです。このプログラムでは、アーティストは自分自身のアイデンティティーに関連するテーマを選んでもらいます。そして、作品を通じて、これまで正当に評価されてこなかった人々や文化にスポットライトを当ててもらいます。我々の提供する資金は、モデルの人件費、作業や制作場所のコスト、器材調達費など、金銭面で活動をあきらめざるを得ない状況を打破するために活用いただきます。

Adobe クリエイティブレジデンシープログラムと連携して今年選出する40人のアーティストには、それぞれ1万2,500米ドルが提供されます。多様なコミュニティの姿やユニークな経験を、新鮮で寛容な視点で細やかに描写するための制作プロジェクトに着手するための原資としてもらいます。 このプロジェクトへの参加アーティストの募集は現在も継続しています。正当な評価を得ていない多様なコミュニティがご自身のアイデンティティの土台になっているビデオグラファー、フォトグラファー、イラストレーターの皆さん、自身のコミュニティの姿を発信するためにぜひご応募ください

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クレジット:Adobe Stock/Westend61

●今回選考に選ばれたアーティスト達のご紹介

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Maliha Abidi

クレジット:Maliha Abidi

アーティストであり著述家のMaliha Abidi氏は、女子教育、児童婚の禁止、家庭内暴力など、女性の権利を活動の中心テーマに据え、 メンタルヘルスや人種差別反対にも熱心に取り組み、社会問題にスポットライトを当てた作品を発表しています。 彼女はパキスタンのカラチ出身、14歳で米国に移住、今に至ります。

アーティスト開拓ファンドのプロジェクトでは、様々な場面や職種で働く女性の多様な姿を描きます。 「多様性を称え、ストーリーを語り、言葉にすれば難しくなりすぎてしまうメッセージを伝えるうえで、アートは非常に優れた手段です。このプロジェクトでは、アートを通じて多様性や複数の問題が折り重なる状況を浮き彫りにする作品を制作できればと思っています」とAbidi氏は語っています。

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Sophie Alp

クレジット:Sophie Alp

イラストレーターでありサーフェスパターンデザイナーのSophie Alp氏。彼女の作品は、雑誌や書籍など出版物のデザインや、カナダ国内の専門店に置かれているテキスタイルや紙製品でも目にすることができます。

アーティスト開拓ファンドのプロジェクトでは、イラスト制作を通じて、ジェンダーの多様なあり方や、「一般的でない」社会や職業の現場の裏側にあるものを浮き彫りにしていきます。 科学の世界で活動する母親の姿を見て育ったAlp氏は、当時の生活環境の中で感じたことを世の中に向けて発信したい、当時の現実をビジュアルとして積極的に表現していきたいと考えています。

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Mecoh Bain

クレジット:Mecoh Bain

アルバータ州カルガリーを活動拠点とするフリーランスのフォトグラファーで、フィリピン系カナダ人のMecoh Bain氏。 写真制作の中心テーマは、ストーリーテリングとコミュニティです。 「2つの人種的ルーツを持つ女性であり母として、私の務めは、ストーリーの語られ方を変えることと、コンテンポラリーアートとコマーシャル写真の最前線に多様性をもたらすことです。そしてBIPOC(アメリカにおける黒人や先住民族などの白人ではない少数派人種の総称)やLGBTQ2IA+コミュニティの代弁者になることだと思っています」とBain氏は語っています。

このプロジェクトでは、クリエイティブブリーフ「Celebration of Self(自分自身のあり方を称える)」に呼応する作品を手がけます。 精力的に活躍することが期待され、一人ひとりの幸せが二の次、三の次にされがちな世の中にあって、「自分を抑えつけなくていい、構えなくていい、完璧じゃなくていいと思える、心と身体と魂に休息の許しをもたらすような、心に響くビジュアルを生み出そうと努めています」とBain氏は語ります。

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Mizuho Call

クレジット:Mizuho Call

日本の滋賀県で生まれ育ったイラストレーターのMizuho Call氏。 『ビバリーヒルズ高校白書』の日本語吹き替え版を観て、米国での暮らしを夢見る青春時代を送りました。高校を卒業した後、バージニア州の小さな町に移り住み、その夢を実現。米国では写真とグラフィックデザインを学び、さらに3人の我が子を育てながら、デザイナーおよびアートディレクターとして10年間仕事のキャリアを積みました。 その後、イラストレーターになるという第2の夢を追い求める決心をするに至ります。

米国に移住して19年目の2021年、彼女はアーティスト開拓ファンドのアーティストに選ばれました。 このプログラムで取り組むイラスト制作では、日本のライフスタイル、食生活、文化的な産物のディテールや思い出を取り上げ、温かみのある手描きアイコンをミニマリズムのスタイルで描きます。 「このプログラムは、私自身を形作っている『日本文化』という一番大切な要素のひとつに立ち返り、作品の形で残しておく機会となりました」とCall氏は語っています。

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Monika Jurczyk

クレジット:Monika Jurczyk

スコットランドのエジンバラを拠点とするイラストレーターであり「ノマド的クリエイティブ」のMonika Jurczyk氏(別名Monsie)は、 ポーランドの生まれ。ビジュアルアートとドローイングに傾倒し、興味の対象を写真、コラージュ、版画へと広げながら、ビジュアルの追求を続け、日本、ベトナム、スペイン、フランス、米国と様々な国を旅して回りました。PBS、The Guardian、Vansなどのクライアントから依頼されたビジュアル制作の仕事を手がけています。

このプロジェクトでは、「女性」をテーマにして、 女性であること、姉や妹であること、人間関係、人とのつながり、自己承認、女性の権利などの概念について考えを深めるようなイラストを制作する予定です。

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Wiji Lacsamana

クレジット:Wiji Lacsamana

フィリピンを活動拠点とするイラストレーター、タトゥー・アーティスト、レイキ・ヒーラーのWiji Lacsamana氏。 心のイメージ、本、占いカード、香料など、幅広い分野で独特のビジョンを展開し、クリエイティブな取り組みを遂行してきました。 Adobe Stockのこのプロジェクトでは、クリエイティブブリーフ「Beliefs & Rituals(信仰と儀式)」にインスパイアを受け、信仰や儀式を継承、創造しながら様々な困難を乗り越えて生きるフィリピン人のために、新しい時代を祝福するイラストをシリーズで制作します。

「(パンデミック状況下における)外の世界から撤退した最近の生活スタイルは、探究を広げる余地を生み出しました。その出発点は、自分に結びついているルーツを深く理解することです。 私たちには、一見シンプルな日常の儀式的行動によって一種の内的宇宙や精神の集中を得るという、豊かな伝統の蓄積があります。そうした小さな瞬間が、私たちに小さな奇跡をもたらし続けているのです」とLacsamana氏は語ります。

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Adam Perez

クレジット:Adam Perez

移民第1世代であり、かつクイアでもあるAdam Perez氏は、カリフォルニア州を拠点とするフォトグラファーであり映像作家です。社会構造的な要因からくる貧困や、移民、クイア、気候変動をテーマとして、濃密な内容のポートレート、ルポルタージュ、ドキュメンタリー映画を生み出しています。 現在、エマーソンフェローの一員として「Pandemic in the Heartland」という写真・動画プロジェクトに従事し、全米の食料の4分の1を産出するカリフォルニア州セントラルバレーの非主流コミュニティがCOVID-19のパンデミックで壊滅的な打撃を受けた様子を記録しています。また、南カリフォルニア大学アネンバーグスクール、コミュニケーション・ジャーナリズム学部の非常勤教授も務めています。

Adobe Stockと彼のプロジェクトのタイトルは「Latinx Next-Gen」。ミレニアル世代とZ世代に属するラテン系のジェンダークイアな人々に注目して、ポートレートやライフスタイルを撮影します。 作品によって、ビジュアルメディアがその存在を無視し、過小評価してきたグループの存在感を高めることがPerez氏の狙いです。 「ジェンダークイアなLatinxの人々が個人の体験をネットでシェアしている様子を見て、制作のインスピレーションが湧きました。 古いジェンダー規範の硬直的な姿勢を非難する動きとしては、もっと大きな運動が何年も前からあります。 その多くはLatinxカルチャーとクイアをブレンドさせた運動であり、ファッションとカルチャーの境界線を押し広げる原動力になっています」とPerez氏は語っています。プロジェクトのビジョンは「ジェンダークイアなLatinxコミュニティ内の多様性を描き、ラテン系コミュニティが一枚岩であるかのような見方に対抗する」ことだそうです。

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Shawn Pridgen

クレジット:Shawn Pridgen

カリフォルニア州サンクレメンテで生まれ、ニューヨーク州のブルックリンを活動拠点とするShawn Pridgen氏は、2020年の人種差別的事件に対して抗議運動Black Lives Matterが巻き起こった時期にフォトグラファーとして働き始め、Harper’sやThe Washington Postなどのメディアで作品を発表してきました。 デポール大学を卒業し、人種の平等をテーマとするドキュメンタリー写真のビジネスを自ら創業。 Pridgen氏の業績は、ドキュメンタリー写真分野で活躍するブラックの個性的なクリエイターを表彰するGoogle Arts & Culture: Black Lenses Matterや、国際写真センター(ICP)のディレクターズフェローシップなど、様々な形で高い評価を獲得しています。なお、ICPは彼が学生として学んだ場所でもあります。

このプロジェクトでは、「Can I Kick It?!?」というタイトルのもとで、新しい映像表現の地位向上と、コミュニティへの直接的な貢献の両方を追求します。 「特に非白人に注目し、フィットネス、メンタルヘルス、ウェルネスを通して多様なコミュニティの評価と影響力を高めるために、ニューヨークのマイノリティが経営・運営するミックス婚のアート施設を取り上げたコンテンツを制作しています。 また、正当に評価されていないコミュニティに地位向上、教育、そして活躍の場をもたらすことを目指して、収入が低い若年層のジム顧客や潜在的な顧客層に対する貢献活動もおこなう考えです」とPridgen氏は語っています。

いかがでしたでしょうか?Adobe Stockでは、社会の多様性と寛容性実現を促せるような、個性的で現代的なビジュアルの創り手を応援します。 Adobe Stock 支援プログラムについて詳しくは、こちらをご覧ください(英語のみとなります)。皆さまらの応募を心待ちにしています。

この記事は2021年8月10日にIrene Malatestaにより作成&公開されたWelcome the second group of Adobe Stock Artist Development Fund recipientsの抄訳です。