成功するデザインチームをつくる Part 2: 新しい時代、新しい視点 | アドビ UX 道場 #UXDojo

出典:Bhavya Minocha

高パフォーマンスのデザインチームをつくるということは、才能のある人材を、デザイナーとして活躍しながら成長できるポジションやプロジェクトに配置することに尽きます。その実現のためにリーダーに求められることは、チームの状況への意図的な介入、そして成功のための環境の整備です。

デザインリーダーであれば、常に成功が約束されている万能な戦略や働き方が存在しないことは理解しているでしょう。チームはそれぞれ異なりますし、企業の複雑さやデザインに対する成熟度は様々です。とはいえ、チームや組織の成功のために利用できるアプローチや、注力すべき領域が存在しないわけではありません。

組織としてビジョンと成果を共有する

デザインそのもの、あるいはデザインに対する理解が成熟するにつれ、デザインチームが解決すべき課題はより複雑になりました。デザイナーは見た目の美しさだけでなく、より大きな問題の解決にも、大きな価値を提供できるスキルを持っていることが広く理解されるようになり、制作プロセスの早い段階からデザイナーが参加する機会が増えています。

これに伴い発生したのは、他の組織の人々との協業を育む責任です。すなわち、デザイナーとしては、異なる視点や担当範囲を持つ協業相手が理解できる方法で、デザインに関する判断を明確に説明するスキルが求められうわけです。実際に、関わる範囲が広がるにつれ、多くのデザイナーが組織間の壁を超えてビジョンと成果を共有するためのセッションを経験してきました。

その成果として得られるのは、デザインチームの支持者です。チームを効果的に拡大するには、支援者を増やして弾みをつけることが必要です。チームのビジョンや成果を共有された誰かがそれを広めて、より多くの活躍の機会を得られれば、需要に応じるためのチーム拡大が可能になります。

チームの価値観と原則を繰り返し見直す

Truist 社のデザインチームの価値観は、組織の目的である「より良い生活とコミュニティの触発と構築」、そして価値観である「信頼、思いやり、団結、成功、幸福」と結びついています。こうした目的と価値観に基づいてデザイン原則を作成するのは良い考えです。また、デザイン原則は時間の経過とともに進化するものです。チームとして、デザイン原則を再検討する機会を持ち、修正を繰り返すことは重要です。

採用面接の場面では、チームの価値観と原則を考慮しなければなりません。チームカルチャーの観点から、近い価値観を持つ人を探すのは良いことです。しかし、異なる視点や背景をもたらしてくれる人も探すべきです。そして、新しい人の加入はカルチャーに影響を与えます。つまり、常にチームを進化させる方法を模索することになります。

創造性の維持と、コラボレーションの改善

デザイナーがクリエイティブに働けるかどうかは、デザインの成熟度や組織内のカルチャーが大いに関係します。リーダーは、デザイナーが仕事に集中できるように、常に障害を取り除き、必要なサポートを提供しなければなりません。他のチームと取り決めをする際は、デザイナーのために、実際にデザインする時間と環境を確保することに配慮します。

短い納期だとしても、デザイナーには充電して集中力を高めるためのクリエイティブな空気が欠かせません。共同プロジェクトに取り組んだり、一緒に学んだり、あるいは単に集まって交流したりする時間の確保は、チームに少しばかりのクリエイティブな空気を供給するために重要です。これを実現するのは、リーダーの肩にかかっています。

デザイナーにとって、相談相手の存在は、クリエイティブな精神の維持に重要な役割を果たします。また、個人の成長にも役立ちます。というのは、アドバイスを求めたり、誰かの経験から学んだりするとても貴重な機会を、デザイナーが得られるからです。こうした助言のための対話は、育成プランとは切り分けるべきで、なぜなら、人は直属の上司ではない相手の方が、弱みを見せることに抵抗がない場合が多いからです。チームメンバーには、相談相手を探すように強く促しましょう。その際は、自身の成功に貢献できる相手を見つけたいメンバーを支援する手段の構築も忘れずに。

デザインへのフィードバックの方法も、コラボレーションやクリエイティビティに影響します。これに関しては、チームとして、自分たちに合ったやり方を見つけることが重要です。デザイナーは、フィードバックや批評がデザイン全体の質を向上させるために重要だということを理解しています。リーダーの役割は、デザインの品質を管理する枠組みの確立と、フィードバックが機能するガイドラインを提供することです。さらに重要なのは、人々が安心してフィードバックを与えたり受けたりできる環境の提供です。フィードバックや批評のプロセスについては事後レビューを行い、時間をかけて評価と改善を行うべきです。

デザイナーにはコラボレーションを楽しむ能力があります。また、共同でデザインされた成果は一般的に質の高いものになります。デザイナーが持つ最高の資質のひとつは共感力です。また、デザイナーは人間中心のアプローチで問題を解決するために共感を適用することにも長けています。共感は、デザインする対象である人々の視点や感情を理解し、それを組織内で共有し、デザインプロセスを通して人々の代理として訴え続けるための力になります。

また、一緒に働く人々への共感も、デザインチームが成功するためには必要です。他チームとの協業と、チーム内の共同デザインの両方に共感を適用すれば、誰もが自分がデザインに関わっていると感じられ、自分のアイデアや経験が大切にされていると理解できます。最終的に、共感はチーム内のより良い関係を作り、より良い結果へと導くものです。リーダーとしては、デザイナーと外部のパートナーが、アイデア出しから検証、さらに将来の反復に至るまで、制作プロセスを通じて共感を得る機会を持てるよう努めるべきです。

柔軟に対応し、チームが自ら決断できるようにする

リーダーであれば、チームに最適な働き方や、最高の結果を残すためのプロセスに対するビジョンを持っているでしょう。しかし、あるチームで成功したことが、他のチームでも通用するとは限りません。リーダーは、柔軟に変化を受け入れることが必要です。また、チームが異なるやり方を提案しやすい環境づくりも必要です。つまり、自分のエゴは捨てて、最も効果的な方法を探るための実験をチームに反復させるのです。

チームに自ら決断する権限を与え、チームが最高の結果を出すと信頼することこそ本当に重要です。そのための鍵となるのは、心理的な安全性です。リーダーに対して、そしてチームメンバー同士が安心だと感じていれば、誰に対しても正直でいられ、自分の意見を聞いてもらえると感じられ、チームの成功のための重要な一部であることに自信を持てます。リーダーは、チームが好奇心を持って、間違いを犯し、そこから学び、安心して意思決定できるようにしなければなりません。

多くのリーダー、特に新米リーダーにとって、すべての決断を自分で行わないこと、あるいは「奉仕するリーダー」という考え方は難しいかもしれません。しかし何よりも、チームが仕事を問題なくこなせて成長し続けられるように、彼らの障害になるものを排除し、必要なものを提供することに注力すべきなのです。

作業環境の変更、ツールの変更

デザイナーが活躍し、学び、成長し続けるためには、適切な環境が必要です。最新のツールや最先端の作業環境はチームの士気を高めますし、他の組織の人たちにも、デザイナーと働くことに対して多少の自信を与えます。歯医者に例えるなら、15 年前のままに見える治療室と、最新の道具や設備が揃ったモダンなオフィスのどちらで治療を受けたいと思うでしょうか?チームの成果やワークフローを改善すべきかを判断するため、最新の技術や手法への取り組みは積極的に推進すべきです。

それぞれのチームの違いや、部門を超えた協業での働き方まで含めて考えると、いくつかの方法を試して、最も効果的なものを見つけることには大きな意味があります。例えば、広いオープンなスペースで働くことが流行っていますが、これを効果的だとするケーススタディと非効率的だとするケーススタディの両方が発表されています。いまのところオープンなオフィス環境に対するリモートワークの影響についてはまだよくわかっていません。さらには、オープンスペースのアレンジを、いくつか試す必要もあるかもしれません。

常に変化するという点ではデザインツールも同様です。数年前に使っていたツールは今日使っているツールではないかもしれません。ですが、基本となる知識、問題解決の考え方など、多くの原則は変化していません。重要なのは、正しい問題を解決できる状態であることが、デザイントレンドや仕事場のレイアウトのトレンドよりも長持ちする点です。その上で、デザイナーが最高の仕事をするための環境とツールを提供することは、やはり彼らの成功に必要なものといえるでしょう。

リモートワークと分散型チーム体制

多くの企業に起きたもうひとつの変化は、リモートあるいは分散したチームの管理です。デザイナーを含めてデジタル製品に携わる人たちは、ここ数年の間にこうした働き方に徐々に移行しつつありました。しかし、多くの企業の多くの人にとって、これは間違いなく大きな変化です。

また、チームが分散して働くことと、パンデミックで突然リモートワークを強制されるのは別であるという指摘も重要です。後者について、これまでに対処したことがある人はほとんどいません。人は未知のものを恐れて神経質になり、多くのことを抱えて忙しくなります。今は、チームの様子を確認して、人間としての振る舞いを誠実に理解するべき時です。

在宅勤務に移行したばかりの頃、Truist 社イノベーション & デザイン部門を率いる Scott Zimmer は、「この新しい環境では、ビデオ会議中の障害も想定される」と、参加者の期待値を設定することから会議を開始しました。彼は、犬の鳴き声や子供が邪魔に入ることは歓迎されると強調し、そのようなことが起きても恥ずかしがる必要がないとチームを励ましました。このようなリーダーシップと、バーチャルのランチやパーティーの組み合わせは、離れているチームを安心させ、つながりを感じさせるのに有効です。仕事が以前のように戻っても、こうした心配りがチームに適用されるのを見たいところです。

幸運なことに、私たちのチームは以前から分散し、柔軟なスケジュールの元で仕事をしてきました。また、リモートのワークショップ、ブレーンストーミング、アイデア出しのセッションを円滑に行うためのツールも持っています。このため、デザイナーにとって、今起きている変化は、初めて参加する仲間に共感を示し、模範を示して指導する絶好の機会になっています。そして、デザインリーダーにとっては、チームのメンバーが周囲からどれほど評価されているかを伝えられる絶好の機会です。

この記事は How to Build a Successful Design Team — Part 2: New Decade, New Perspectives(著者: Andy Vitale)の抄訳です