把握しておきたいアップデートのアレコレ | ベテランほど知らずに損してるIllustratorの新常識 2022
第9回 把握しておきたいアップデートのアレコレ
例年どおり、秋にはCreative Cloudに加え、macOSのメジャーアップデートがやってきました。「macOSもCCも手に馴染んだ頃に強制的にアップデートせざると得ない…」のはモヤモヤしますが、もはや宿命というしかありません。
今回のテーマは把握しておきたいアップデートのアレコレです。
Illustratorのドキュメントバージョンと互換性
Illustratorでドキュメントを保存するとき、ドキュメントバージョンを指定します。
2019年リリースのIllustrator 2020以降、ドキュメントバージョンは「Illustrator 2020」です。
しかしながら、同じドキュメントバージョンであれば互換性があるというわけではないことに注意しましょう。
たとえば、次のように後から追加された機能は、当然ながら下位互換性がありません。
- 「クロスの重なり」を適用したアートワークは、下位バージョンで開くと非破壊編集を行えない
- 「箇条書き(記号、自動番号)」を適用したテキストを下位バージョンで開くと、強制的にアウトライン化される
アドビからは毎年「互換性ガイドブック」というPDF冊子がリリースされています。最新版では3ページ目に互換性の一覧がありますので、ぜひ確認してみてください。
Type 1フォントのサポート終了(2023年早々、フォントメニューから見えなくなります)
「Type1 フォントは、 2023年1月以降サポートされません。」というアラートを見かけますよね。
Illustratorのフォントリストにはフォントの種類の記号が表示されますが、“1階建ての”「a」のアイコンがType 1フォントです。
黄色い三角のラベルがついているフォントは、2023年1月のアップデート以降、フォントリストに表示されなくなります(Photoshopは2021年リリースのPhotoshop 23.0以降、すでに表示されなくなっています)。
「パッケージした入稿データを圧縮したら、フォントファイルはあるのに0バイトになっていた」という経験を持つ方は少なくないでしょう。
Type 1フォントは拡張子を持たないファイルです。かろうじて最新のmacOSでも認識しますが、「フォントファイルが0バイトになる」ほかのトラブルの原因とのことで数年前からお告知されてきましたが、いよいよIllustratorでのサポートが終了するんです。
同じフォントのOpenType版を用意して置換したとしても、まったく同じ結果にはならず、調整が必要です。正直、頭の痛い問題ですが、困ってから…でなく、少しでも準備を進めておいた方がよさそうです。
Pantoneカラーブックの数が減ります
Illustratorには「カラーブック」と呼ばれるスウォッチのセットが用意されています。
海外でよく使われるPantoneですが、Illustrator(および、Photoshop、InDesign)に表示されるカラーブックの数が減っています。
必要な方は、Pantoneが提供する有料の「Pantone コネクト」というサービスを使って!という流れのようです。
この件に関してのポリシーや予告内容がたびたび変更されていて、過去のドキュメントがどのように扱われるかについては不明です。Pantoneカラーブックを多用する現場では、少しずつ対応を検討していう必要があります。
モリサワの定番フォントのAP版がリリース
2022年10月にリリースされたモリサワ新書体では次の定番フォントのAP版の提供が行われています。
- 中ゴシックBBB
- リュウミン
- 太ミンA101
- 見出ミンMA1
- 見出ミンMA31
- ゴシックMB101
- 太ゴB101
- 見出ゴMB31
このほか、見出ゴMB1、トーキング、武蔵野、プリティー桃、すずむし、新正楷書CBSK1、欧体楷書、楷書MCBK1、教科書ICA、角新行書、隷書E1、隷書101、陸隷、勘亭流のAP版も提供されました。
モリサワフォントには従来「A-OTF」がついていましたが、AP版では「A P-OTF」がついています。
AP版書体では、次のような変更が行われています。
- ペアカーニング情報が搭載されている(従属欧文および和文にも)
- デザインの調整や変更を行ったグリフがある
- 令和合字に対応
モリサワからは「置き換えると文字組の体裁が崩れたり、一部グリフのデザインの変化が発生するため、置き換えは推奨しておりません」とアナウンスされています。
実際、大きく変わりますので、置き換えについては慎重に取り組みましょう。
フォント定額サービスの変化(リブランドと使用台数)
モリサワ、フォントワークスともに、定額のサブスクプションサービスの刷新が行われつつあります。大きな違いは2台まで使用できること。Creative Cloudでの使用の実状に合わせてきていると言えます。
改めて、契約が必要です。
まとめ
少なからず仕事に影響が出る変化が起きています。ぜひアンテナを立てて把握しておきましょう。
- 同じドキュメントバージョンでも下位互換性はありません。「互換性ガイドブック」を参照してポイントをおさえておきましょう。
- 2023年早々、フォントメニューからType 1フォントが見えなくなります。
- Pantoneカラーブックが減っています。Pantoneカラーを多用する現場では、今後の対応を検討しましょう。
- モリサワの定番フォントのAP版がリリースされています。公式情報として置き換えは推奨されていませんので注意しましょう。
- モリサワ、フォントワークスのフォント定額サービスが新ブランドになり、1ライセンスあたり2台まで使用できるように変化しています。
なお、macOS Ventura(13)ではPhotoshopのドロップレットが使えません。対応策についてまとめましたので、あわせてご覧ください。
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