第二回Adobe Analyticsユーザー会2022セッションレポート②: リクルートが実践するAdobe Analytics人材育成プログラムとナレッジマネジメント(株式会社リクルート様)

先日コロナ禍で活動休止していたAdobe Analyticsのユーザー会が2022年7月8日、3年ぶりに復活しました。10月26日には第二回ユーザー会を開催し、Analytics人材の育成をテーマに、ユーザー様による登壇セッション、パネルディスカッションなどを交え、ご参加いただいたユーザー様と議論しました。

今回のセッションでは「Analyticsユーザー育成のための最適なメソッドとは?ガバナンスの効いた社内教育プログラムとナレッジシェアについてご紹介〜」と題して、ディップ株式会社様、株式会社リクルート様にご登壇いただきました。本記事では、当日のセッションレポートの第二弾として、株式会社リクルート様(以下、リクルート社)による「リクルートが実践するAdobe Analytics人材育成プログラムとナレッジマネジメント」についてお届けいたします。

スピーカー:

株式会社リクルート プロダクト統括本部  プロダクト開発統括室 データ推進室 データプロダクトユニット データプロダクトマネジメント1部 利活用ソリューショングループ

原田 有佳里 様

リクルートグループについて

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リクルート社はビジョンである「Follow Your Heart」、ミッションである「まだ、ここにない、出会い。より速く、シンプルに、もっと近くに。」を実現するために、クライアント様とカスタマー様のマッチングプラットフォームを提供している会社です。

現在新たな形のエコシステムの構築を推進しており『SUUMO』や『じゃらん』、『ホットペッパーグルメ』や『ホットペッパービューティー』、『リクナビ』いった各事業領域に対してバーティカルに展開されるビジネスに加え、『Airペイ』などAirビジネスツールズと呼ばれるSaaSツールを通して業務効率を支援するサービスも提供しております。

Adobe Analyticsの利用に関しては、リクルート社内にたくさんの事業領域が存在していることから、Virtual Companyという事業単位に対し、レポートスイートを各サービス単位で構築しております。例えば『SUUMO』の場合、分譲マンション、賃貸領域、注文住宅といった単位でレポートスイートを分けています。

Adobe Analyticsの利用状況

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Adobe Analyticsは2008年頃から利用させていただいており、ユーザーアカウント数は約2,000人、レポートスイート数は本番環境が300ほど、開発・検証環境を含めると全体で約600存在しております。

またアドビのDatafeedの利用者数は約300人となっております。データはレコメンデーションに活用したり、Big Queryにデータを貯めてデータサイエンスに使うことが非常に多いため、Datafeedの利用者数 = 技術者の数となります。

特に一番トラフィックの多いレポートスイートだと、約200TBあるため、Big Queryを使う場合は利用者の皆様に注意を喚起しています。

利用者は主にUX、ウェブマーケ、CRM、データサイエンスなどで、それぞれの利用目的はモニタリング、広告ツールとの連携、自社で作っているシステムに組み込んでターゲティング施策や営業ツールへのデータ連携などに使っています。

組織体制

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Adobe Analyticsのメインユーザーは各領域内のUI/UXデザイナーが所属するプロダクトデザインチームと呼ばれる部署で最も使われています。次にマーケティングチームではブランド施策やディスプレイ広告、リスティング広告などの施策のために使っており、さらにデータ室ではデータサイエンティストが所属しております。

登壇者の原田様はメインユーザーのために活用を支援する全社横断組織であるデータテクノロジーユニットに所属しております。

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データテクノロジーユニットは「横断Adobe担当」として、Adobe Analyticsの管理・運用・集中購買、管理権限を持ってユーザーの権限付与なども担当しております。また各事業領域に兼務する制度があるので、事業ドメインの運用サポートをするケースもあります。

Adobe Analyticsの社内勉強会

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リクルート社の定常的な勉強会は8種類あり、データ利用とデータ取得という2つのカテゴリに大きく分かれております。開催頻度としてはデータ利用の勉強会が高く、全5回の勉強会を月2で開催するとだいたい3ヶ月で1周出来るので、これを年に4回開催する形でユーザーに任意参加していただく形を取っています。コロナ前は会議室で集まって実施しておりましたが、今はほぼオンラインLIVEという形を取っており、さらにWeb動画も設置していつでも見れる体制にしてあります。

データ取得の勉強会に関しては昨年から力を入れており、昨年は簡易実装勉強会-JS編を開催しました。Tags(旧Adobe Experience Platform Launch)の実装勉強会は来年前半開催に向けて企画を進めております。さらに初動インプット会という、初めて権限を取得するユーザーに対し、社内のどこに何がありどうやって調べればよいかをインプットする会を企画しております。

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これらの勉強会実施の背景として、社内外問わず人材の流動性が高いことが大きな理由です。またビジネスパートナーも多く、人の入れ替わりが定期的に発生します。リアルタイム勉強会参加理由の50%が入社直後 or 異動による使用頻度が増加していることも開催背景になっています。またほぼ事業領域で導入されているツールであるということも大きな理由となっております。

一方勉強会の目的としては新規着任者に早く立ち上がっていただきたいという狙いがあります。

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勉強会の振り返りは半期に一度、アンケートから満足度評価を取って実施しております。リアルタイム勉強会への参加は一回あたり約12人、通期で見ると年間100人近くが参加していることから、今後も継続的に開催予定です。

一方でAdobe Experience LeagueやYouTubeなどアドビ公式の動画コンテンツも増えてきているので、利用ユーザーの変動が年に5~6人程度であれば、社内でここまでリッチな施策を実施する必要はないかもしれません。

ナレッジマネジメント

テーブル 自動的に生成された説明

リクルート社では様々なユーザーがいることからユーザー接点も複数存在しております。メールは正式な問い合わせ対応などに使っています。アクセス解析ポータルは社内のイントラポータルの位置づけになり、FAQや広報、問い合わせ申請フォームなどを掲載しています。もう一つ別の社内システム(nuMa)では権限管理をシステム化しています。SlackやTeamsなどもありますが、基本はSlackを中心に運用しております。

ナレッジマネジメントの場所は、アクセス解析ポータルのFAQとConfluenceに格納しているAdobe Analyticsの基本情報や社内での利用に関するナレッジシェアが該当します。

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FAQは過去の問い合わせから、汎用的な知識になり得るものをFAQ化する形で運用しております。逆に事業個別の実装相談などは載せず、バグ関連やカスタムリンクのクリック数取得などのデータ利用に関する問い合わせなど、少なくとも2件問い合わせがあったものをFAQ化しています。

ポータルから問い合わせを受けた場合、メールでユーザー対応を行い、Backlogでチケット管理をし、そこで溜まった問い合わせ履歴からFAQ化する流れになります。

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Confluenceには実装マニュアルを掲載しております。アドビ担当者が展開している勉強会資料や社内勉強会は一般的な知識になってしまいがちで、どのように設計して施策を進めるべきか、実装する際にどの変数を取るべきか、といった現場で必要な情報は有識者に偏ってしまうことが多いです。そういった知識を言語化し、リクルート社内の使い方やベストプラクティスなどの事例集を作り、属人化と保守工数増大の防止を目指しています。このような体制を構築している背景は、有識者が卒業してしまうとナレッジがブラックボックス化してしまうという課題が大きな理由です。

この実装マニュアルは認知課題がありつつも、ユーザーからの反応は上々で、今後は初動インプット会の資料として使うことを検討しております。またFAQと実装マニュアルが分かれてしまっており、利用者としては探しにくい状況なので、Confluenceにまとめるといった改善をしていきたいと思っております。

また問い合わせ申請フォームについても、一つのサービスのイントラネットより、全員が使う社内のコミュニケーションツールを介する方がやり取りがしやすいので、SlackやTeamsに寄せていきたいと考えております。ただSlackは開発・データ系組織メンバーが使っている一方、Teamsは全社員で使っており、特にプロダクトデザイン・営業メンバーが中心に使っていることもあり、運用については別途検討を進めています。

今後検討していること

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現状の課題としてAdobe Analyticsの技術人材不足やガバナンス強化などがあげられます。この課題感を解決するためのアプローチとして、各事業領域に横断組織から兼務付きでサポートをする体制を一部の事業で行っておりますが、実現出来ている事業は一部に留まっております。今後は全事業のアンバサダーのような形でサポートする体制をつくり、それぞれの担当者が横断で各事業の事例を持ち寄って共通の課題やそれに対する解決策を型化していければと思っております。

≪Adobe Analyticsユーザーグループについて≫

Adobe Analyticsユーザーグループは、日本国内のAdobe Analytics、Adobe Target及びData Insightsに関連する製品のユーザーコミュニティです。 ユーザー同士のベストプラクティスの共有、問題解決、ネットワークの構築を行うことで、製品の知識や活用を高めましょう。各回では業界のリーダーであるユーザーの方々にお越しいただき、様々なトピックを取り上げ、専門知識を共有いただきます。

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